令和7年度 山口県立大学・山口市サテライトカレッジ1回目を開催しました。

令和7年9月18日(木) 山口市徳地文化ホールにて、令和7年度 山口県立大学・山口市サテライトカレッジ1回目を開催しました。

今回の講座テーマは、「認知症になりにくいまちは存在する?」と題し、山口県立大学 看護栄養学部 看護学科 横田 恵 准教授が、受講者30名に対し講義を行いました。

認知症は、様々な病気により脳の神経細胞が徐々に変化し、認知機能(記憶、判断力など)が低下して、日常生活を送ることに支障が出ている状態のことです。講座では、認知症について考え、予防や自分の暮らす地域の環境について見直しました。

山口市サテライトカレッジの様子1
山口市サテライトカレッジの様子2

はじめに、認知症に対してどんなイメージを持っているか受講者同士で話し合う時間がありました。各自が考える認知症のイメージや、家族や周りにいる人が認知症になった体験談など、さまざまな生の声をお聞かせいただきました。

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65歳以上の高齢者を対象にした令和4年度(2022年度)調査の推計では、認知症の人の割合は約12%、認知症の前段階と考えられている軽度認知症害(MCI)の人は約16%とされ、両方を合わせると、3人に1人が認知機能にかかわる症状があることになります。

山口市サテライトカレッジの様子5

軽度認知症害(MCI)とは、認知症と完全に診断される一歩手前の状態です。認知機能低下の自覚はあるものの日常生活は問題なく過ごすことができます。MCIでは、1年で約5~15%の人が認知症に移行する一方、1年で約16~41%の人は健常な状態に戻ることがわかっています。そのため、早期に適切な予防策を講じることで、健常な状態への回復や認知症への移行を遅らせることが期待できます。

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イギリスで創刊された世界的に権威ある医学雑誌『Lancet(ランセット)』の2020年論文によると、認知症リスクとして、教育期間の短さ、高血圧、肥満、難聴、喫煙、うつ病、運動不足、社会的孤立、糖尿病、過度の飲酒、頭部外傷、大気汚染の12項目の危険因子があり、これらを修正できれば認知症の40%は予防や進行を遅らせることができると報告されており、生活習慣病予防をすることが認知症対策にもなるとの解説がありました。

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受講者の日頃の生活習慣を振り返えるため、自宅からよく行く施設までの経路を地図に描きました。そこに行くまでの交通手段や、歩いている道も記入し、実際にどのくらい歩いているか、運動時間はどのくらいなのかを把握しました。

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また、スポーツの会に週1回以上参加している人の割合が多い町ほど、認知症リスクが低いことや、ボランティアグループなどの地域組織への参加割合が高い地域ほど、認知症リスクを有する後期高齢者の割合が少ないといった調査結果の紹介もあり、運動習慣や社会参加が重要なことを学びました。

受講者アンケートでは、

「運動不足や社会的孤立に気を付けたいと思った。」

「地域の実情に応じた話の内容もあり納得できた。」

「積極的に運動をしたいです。」

「聞くだけでなく考えたり書いたりする体験があり、分かりやすかった。」

「具体的な目標を決めて歩いてみようと思った。」

などの声が寄せられました。

認知症の予防には、日々の生活習慣、身体活動、知的活動、そして社会との交流など総合的な取り組みが不可欠です。年齢を重ねることを恐れず、今できることに意識的に取り組むことで、健やかで豊かな人生を送りましょう。