ナバラ州立大学 国際文化学科3年 山田まほら <3号 2020年1月~2月>

 先日、帰国便の航空券を購入し、スペインでの生活も終わりに近づいていることをひしひしと感じています。長かった冬休みが終わり、ついに後期がスタートして1か月が経ちました。今回の報告では、後期の授業と、この2か月で経験したことについて書きます。

授業

 後期の授業について書く前に少し、前期に履修していた社会学の授業について書きます。実は、授業内容の理解不足から二度も期末試験に落ちていました。そこで教授が3度目のチャンスとしてレポート課題を与えて下さり、どうにか単位を取ることができました。この授業は最初から難しいと感じてはいたものの、本当にギリギリの結果でした。しかし、仮に100%は理解できずに単位を落としていたとしても、社会学の視点からヨーロッパの文化や、社会の仕組みについて学べるこの授業を履修する価値は大いにあったと感じています。
 後期は大学で開講されるスペイン語(レベルB1-B2)、スペインの文化、英語(レベルB1)に加え、語学センターでは引き続きスペイン語(レベルA2)と英語(レベルB1)の計5つの授業を履修しています。語学以外の授業も検討しましたが、興味のあるものに自分の語学力が追いつかず、今期は語学に集中することにしました。留学前にある程度の語学力を身に付けていれば、選択肢が広がっていたと思います。
 大学のスペイン語のクラスは、前期に比べ遥かに高度な内容で、進むスピードも速く毎回授業終わりには頭が熱くなるほどエネルギーを必要とします。新たな文法を使って、社会や文化などのあるテーマについて話し合うといった形で、スピーキング能力が鍛えられます。今月末には中間試験を控えているので、入念に準備をしていきたいです。
 語学センターのクラスは基本的に大学よりも少人数で先生との距離が近いように感じます。特に、スペイン語の先生とは月に1度、個別指導の時間が設けられていて疑問に思ったことを気軽に聞くことができます。また、語学センターのもう一つ大きな利点は、スペイン人や博士課程の学生と出会えることです。大学ではほとんどが留学生に向けた授業を取っているため、スペイン人学生との接点が少ないので、語学センターのおかげで友人の輪が広がったと言っても過言ではないくらい、私にとっては重要な場所です。

文化的なイベント

 この2か月は、文化について知ることができる多くの機会がありました。その中でも印象深かった3つの体験について書きます。  1つ目はパンプローナで開催された日本のイベントです。5日間にわたり、食やアニメをはじめとする日本文化が紹介されていました。このイベントの中で、剣道を習っている友人がエキシビションをすると聞き、私も会場へ見に行きました。剣道の作法や形式をスペイン人がスペイン人に説明し、日本人の私も知らないことを教えてもらいました。海外で日本文化について学ぶことができる貴重な経験でした。


この日15人ほどの剣道家たちが集結しました。

 2つ目は、誕生日パーティーです。1月、2月だけで友人5人の誕生日があり、そのうち2人のパーティーに参加したのですが、ここでも忘れられない経験をしました。まずは、ペルー出身の友人のお祝いです。ペルーでは誕生日を祝う際に、家族だけでなく叔父叔母、従兄弟、友人など呼べる限り全ての親族で盛大に祝うそうです。そのため、その日は30人を超す会で、私の経験した誕生日パーティー史上最も大きな規模でした。パーティーの主役である友人は、それぞれの参加者と写真を撮っていました。この月にはさらに2人の従兄弟の誕生日もありますが、1回にまとめることはせず、その都度お祝いをするそうです。みんなで楽しくという南米の人々の温かさに感動しました。次に、コロンビア人の友人の誕生日をサプライズで、別の友人の家でお祝いしたときです。その会は友人のみの参加で、他にイラン人、レバノン人、アメリカ人と私の5人でした。ここで驚いたのは、私が持ってきていたトランプで遊ぼうとゲームのルールを確認していたときに、全員が「このルールはこうで...」「いや、違うこれは...」「待って、話を聞いてくれ」とまるで討論会のように激しく説明し合っていました。たかがゲームといえど、意見を伝え切ろうとする友人に驚きました。他の場面でもそうですが、彼女たちの自分に正直な姿勢を尊敬します。また、留学先で友人とトランプで遊ぶのが私のひそかな夢だったので、幸せな一日になりました。


友人と誕生日ケーキの前で

 3つ目は、2週間に1回行われている講演会です。ここでは毎回異なるゲストスピーカーが社会問題や法律などについて、話をしてくれます。スペイン人の友人のお母さんがこの講演会の役員をやっていて、たまたま参加することができました。これまでのトピックは①州政府が提供する生活保護 ②未成年犯罪の責任 ③DVの3つでした。どれも友人の通訳なしには理解できないほど難しいですが、学ぶことが多い場所です。

 現在、スペインを含むヨーロッパ各国でも新型コロナウイルス感染者が急激に増加しています。この件で、文化の違いを身を持って感じています。ヨーロッパではマスクを使用する文化がなく、この状況下においても大学でマスクを着用している学生はアジアからの留学生を除いて1人もいません。ここでは、マスクを着用するのは感染者のみだという考え方のようです。また、スペイン人の知り合いが「アジアの報道は深刻に伝えすぎている。」と言っていました。正直、今の私には理解しがたいと感じることがありますが、これらの文化や意見に是非は無いので、差異を拒絶するのではなく、理解し合えるように努力していきたいです。また、友人の留学生の中にも帰国を余儀なくされている学生が少なくありません。残された留学生活は3か月とは思わず、たとえ1週間後に留学が終了することになったとしても、やり切ったと言えるくらいに日々をより濃いものにしていきたいです。


ピソのオーナー手作りの誕生日ケーキです。