ラップランド大学 国際文化学科4年 平松栄一郎 <最終号>

 2018年8月中旬に、ロヴァニエミに到着してから始まった留学生活が終わり、2019年5月15日にフィンランドを出発し、ヨーロッパを回って日本に帰ってきました。最後までフィンランドは、楽しい国でした。この最終報告書では、出国日までの過ごし方、フィンランド独特の教育方針について、留学後の気付き等をまとめます。

 まず、出国日の5月15日までの日々の過ごし方について紹介します。
 講義は5月上旬にはほとんど終了していたので、今まで行ったことが無い道を散歩したり、山にハイキングに行ったり、僕よりも早くフィンランドを出る留学生に、別れの挨拶をしたり、実にゆっくりとした時間を過ごしました。
 日本から友人が遊びに来てくれたので、フィンランド南部にある「ヘルシンキ」「タリン」へ一緒に旅行しました。日本でも北海道と沖縄だと、気温や生活スタイルが全然違う様に、フィンランドでも北部と南部ではまったく様子が違います。南部は北部に比べると寒さが和らぎ、過ごしやすい気候なのと、海沿いなので暮らし方、特に家の形状等に違いが見られます。
 北に行けば行くほど、段々町が小さくなっていき、何も無くなります。人口も少なくなるためか、地元の1人と知り合えば次々と友人を紹介されるところは宮野と似ているなと思いました。


ヘルシンキ大聖堂

 5月14日の夜は、僕にとってフィンランドで過ごす最後の夜だったため、ルームメイトが気を遣ってくれて、一緒にビールを飲もうと誘ってくれたので、寮で思い出話に花を咲かせながら過ごしました。もう明日でここを出るのかと思うと、少し寂しくなりました。
 そしてついにフィンランドを出て、ノルウェー、スペイン、ポーランド、ドイツ、オーストリア等、7か国を1か月かけてゆっくりと観光してきました。観光地を巡るというよりは、各国に先に帰った留学生たちに挨拶しに行き、そのついでに、有名な観光地を少し見た感じです。ルームメイトとも彼の生まれた町、ドイツ・ハノーファーにて再会しました。フィンランドで出会った友人達と、彼らの生まれた国・町で会うととても不思議な感覚になりました。フィンランドにいた時は意識しなかったのに、「そういえば、この人はオーストリア人だった」と改めて実感しました。相変わらずの友人、半年の間に大きな転機があった友人、フィンランドが恋しくてたまらない友人、人それぞれ色々な日々を過ごしたことを、語り合いました。


ノルウェーのフィヨルド

 観光の面でいうと、ノルウェーのフィヨルドが印象に残っています。とても好きな風景でした。山口にずっと住んでいた者からすると、山に囲まれているので親近感があって良かったのかもしれません。山口の自然や空気が好きな方は、僕と同様に気に入るのではないでしょうか。フィンランドはノルウェーより強くそれを感じることができます。寮の裏手は山、正面は川と自然に囲まれています。勉学につまずいたりして、少し1人になりたい時はとても静かな環境で、過ごすことが出来ます。

 留学を終えて今一番思うのは、ルームメイト、友人等周りの人からの優しさに助けられたということです。フィンランドの過酷な自然環境や、慣れない土地でストレスを感じていた日々を乗り越えられたのも、周りの皆さんのおかげだと、心の底から思っています。泥酔した時に寮まで連れて帰ってくれた友人、鍵を寮の中に置いたままドアを閉めてしまい、部屋に入れなくなった時に助けてくれたルームメイト、「他の人が何と言おうと、僕は君の英語良いと思うよ」と言ってくれた友人など、数え切れない程の方々にとても感謝しています。

 日本に帰国してから、「次はどこの国に行ってみたい?」と、友人数名に聞かれましたが、「フィンランド」と即答しました。フィンランドは最高の国です!フィンランドで過ごしたのはたった1年だけでしたが、思い出がたくさん詰まった国なので、ぜひまた行きたいです。お世話になった方もたくさんいます。「元気にしています」と、直接あいさつに行きたいです。時代は便利になって、メールやテレビ電話など、直接会わなくても連絡を取ることはできますが、それが全てではないなと感じます。また一緒にコーヒーを飲みたいです。同じ時間を過ごした友人はすでにそれぞれの国に帰国したため、寮や大学にはもうほとんどいませんが、図書室の角の机、学食のピアノ、川沿いのバレーコート、裏山など、思い出が詰まった場所はたくさんあります。

 留学生活の醍醐味ですが、日本人以外の友人と同じ時間を共有できるのは大きな経験だと思います。国籍に関わらず、皆同じ人間なのだとつくづく実感しました。ドイツ人にもビールが嫌いな人はいるし、ウォッカが飲めないロシア人も、サウナが苦手なフィンランド人もいる。「○○人」ではなく、「1人の人間」として理解することが、留学生活で大切ではないでしょうか。これは日本人同士にも言えることだと思います。

 フィンランドは、ゆっくりとした時間の中で学びたい、過ごしたいという人、自然の荒波に揉まれたい人、学部生の内に大学院の講義を体験したい人等に、おすすめの留学先です!
 ラップランド大学は、日本の大学に比べて休みが多いです。さらに、講義の時間の中に自習時間が含まれることが多いため、自由に使える時間が多かったです。図書館の自習スペースは、連日満員でした。学生が比較的自由に個人の学習計画を立てられるようになっているのが、フィンランドの教育方針のようです。自習をしなくても、それなりに授業は理解できますが、置いて行かれていると感じることも少なくないです。良い成績を残そうとすると、それに相応するだけの勉強量は必要になってきます。個人的意見ですが、教授たちからの温情単位的なものは一切ないと感じました。そのため、適当なレポートと、じっくり練って書いたレポートでは、やはりそれだけ成績の差は出てきます。
 勉学以外にも、ベランダからオーロラが見えたり、水筒の中身が凍ったり、日本では体験できない面白いことばかりです。しかし、気を付けなければいけないのが、冬の寒さです。日本とは比べものになりません。冬の初めにビーチバレーをしたのですが、足はとても冷たいのに、体はどんどん汗をかいていき、僕は見事に風邪をひきました。

 留学生活は、失敗を恐れずに色々とチャレンジした約1年間だったと思います。
 ある程度の英語のレベルは、要求されますが、多少間違っても良いと思います。挑戦することに意味があるので、まずは怖がらずに話してみましょう。英語だけでなく、フィンランド語、スペイン語など、使える言語が増えると、自分の領域も広がっていくように感じます。留学中だけでなく、留学が終わった後にも、その言語スキルが活かせることはたくさんあります。留学に行こうか悩んでいる人もいると思いますが、行かなければ何も始まりません。ラップランド大学の講義で「挑戦しないことは、チャンスを自ら捨てていることだ」と先生に言われて、思わずその場で「その通りだ」と言ってしまいました。
 さぁ、フィンランドが君を待っている!!


動物園のホッキョクグマ