ラップランド大学 国際文化学科4年 平松栄一郎 <4号 2019年3~4月>

 Moi!5月に入りようやく雪も解け、春になったと思っていた矢先の5月初旬、大雪が降りました。
 留学生活も終盤にさしかかっているということが、いまだに信じられません。思えばあっという間だったような、それなりに長い時間を過ごしてきたような、不思議な感覚です。6月からは、ラップランド大学は夏休みに入ります。その前にもちろんテストとレポート三昧の日々を乗り越えなければなりません。
 今回は、どのようにして講義をとってきたかについて報告します。どんな講義がラップランド大学で履修できるのかはすでに前号で紹介しましたが、今回は色々と思い出深い講義の中身について、触れていきます。
 講義名は「Reflections on Intercultural Communication」です。私は観光学を中心に履修していましたが、この講義は純粋に興味があってとってみた授業です。講義数は10回、毎週火曜と木曜の朝に開講されています。授業開始は9:15ですが、だいたい5分遅れて始まります。フィンランドでは15分遅れで講義が始まるのが基本だそうです。フィンランド・タイムの謎です。内容は、多文化社会の中で、いかにうまく他文化とコミュニケーションをとれるかということを考えていく講義です。皆さんが思う海外の大学の講義では、学生が活発に意見を発言すること等をイメージするかと思いますが、この講義ではその通りで、自国の文化の番になるとお互い質問し合い、たくさんの意見が飛び交います。ヨーロッパ同士の隣の国でも、よく知らなかったことがたくさんあるようです。ことさらアジアのことについては、未知のものに触れるような、不思議そうな反応が多かったです。
 講義が終わると、3人1組でレポートを作成するのですが、これがとても大変な作業でした。各々の国の考え方等に加えて、個人的な意見やレポートの進め方の違いもあり、話が合わないことも多々ありました。日本の大学でもグループワークがうまくいかないことがたまにありますが、それの世界規模版と思ってもらえれば良いかと思います。この授業で学んだことを踏まえて、他文化者と協力してグループワークしましょう、というのがねらいだったのだと思いますが、実践するのはなかなか難しかったです。クラスメイトと仲良くするとか、友人になるとか以前の問題で、各々プライドを捨ててほしいと心の中で思いつつ、何とかレポートを終わらせました。座学と実学が必ずしも結びつかないという実例を目の当たりにしたことで、思い出深い講義になりました。

 留学先でも日本の大学でも、やっていることは「学び」なので、日常で何かすごいことや特別なことが起きるわけではありません。山口県立大学では開講していない講義や、興味がある分野を深く学びたいという方にはおすすめの大学です。自由時間もあるので、遊びに出掛けることもできます。ヨーロッパが近いので、周遊の旅行に行くもよし。図書室で黙々と勉強するもよし。部屋にこもってマフラーを編むのもよし。とにかく、「何を選択するか」を問われる留学期間でした。「何をすべきか?」ではなく、「自分は何を求めているのか?」を見定める必要があるのだと思います。留学に来て、勉強していてもハイキングしていても、同じ時間は進みます。今後フィンランドへ留学する方には、ぜひ、「自分は何を求めにフィンランドへ行くのか?」の答えを考える時間を過ごしてほしいなと思います。こういう話をフィンランド人にしたところ、「それには"SISU"という考え方が必要だ」と答えてくれました。"SISU"はうまく日本語に訳せないのですが、一般には「フィンランド魂」「フィンランド人の粘り強さとあきらめない心」等と訳されることがあります。フィンランド人の国民性・ガッツ・根性論のようなものです。
 留学生活が終わろうとしている今、色々と思うことはありますが、フィンランドはお勧めの国です。Moikka! Suomi!


寮から歩いて5分の湖で見た美しい夕焼け

展望台から見た焚き火小屋