ラップランド大学 国際文化学科4年 安藤駿佑 <最終号>

 スペイン南部に住んでいるスペイン人の友人の家に2週間ほど滞在し、人生初のアフリカ大陸に少し足を踏み入れてから無事に帰国しました。10ヶ月ぶりの日本は知らない内に環境が色々と変化していて、帰国後はタイムトラベルしたような気分になっています。
 最終号ではこの留学経験から次の留学生に伝えたいことを記述します。まず留学をする心持ちで最も重要なことは「郷に入れば郷に従え」です。誰もが知っていることわざですが、留学中に実践することは意外と難しいということに直面するはずです。私の場合、今回はセンター大学への留学をした後の2回目の留学でした。卒業を伸ばしてまでこの留学を決意した理由は、センター大学留学で「郷に入れば郷に従え」ということがあまり実践できず、彼らの文化面に深く触れることが出来なかったためです。文化は氷山に例えられる(カルチャーアイスバーグ)ように、水面に出ている部分はほんの一部に過ぎません。水中に隠れた文化の深層を知るにはより深い関係まで潜る必要があります。以前、山口県立大学に来ていた交換留学生と積極的に接していましたが、いざアメリカに留学してみると、やはり大きなカルチャーショックや言語の壁に直面することになりました。日本に来る留学生は基本的に日本に興味がある外国人であり、実際に留学を経験してみると同じ外国人でも大きな違いがあることは確かです。

 今回の留学では自分の中にある先入観や英語を話すことへの恐怖を極力小さくし、思い切って目の前にある文化と言語の海に飛び込んでみました。その少しの勇気でこの日本人なかなか面白いなと思わせることが出来たので、周りの人の接し方も変わり、自信になりました。またラップランド大学には、英語にあまり自信がないヨーロッパ人留学生が多くいます。最初はそういったヨーロッパ留学生と同じ英語レベルで話し始めることで仲良くなり、それが最初の大きな一歩になります。そこから英語に自信がつき始め次第に自分の付き合う友人の和が広がっていきます(仲良くなる秘訣の1つは飲みニケーションであることも世界共通)。少し疲れているから、めんどうくさいからという言い訳をせず、1年を通して、留学生が参加するイベントに積極的に参加することは大変重要です。友人を作ることで授業でのグループワークや課題がより楽しいものになり、休暇の過ごし方も圧倒的に充実してきます。私の場合、山口県立大学からラップランド大学に派遣される学生では珍しい国際文化学科の学生だったため、多種多様な国籍の留学生と深く関わることは大変貴重な異文化体験になりました。異文化の中で生活する人は、他文化の新発見だけではなく、自文化の再発見にも繋がります。そういった日常生活での人間観察や、文化の分析に飽きることはありませんでした。この留学は私にとって人生の中で最も自分の価値観を広げることに成功し、それが新たな自分の成長に繋がった大変満足のいく経験でした。
 少し後悔があるとすれば「郷に入れば郷に従え」と言いながら自分の属した郷が主にヨーロッパ連合であり、フィンランド人のみと関わる機会があまり多くなかったということです。以前の報告書でも記述した通り、フィンランド人と共に受ける授業は少なく、寮も留学生寮として分けられています。フィンランド人ともっと関わり、フィンランドをもっと知りたいと思う人は少ない機会を逃さず、自分からその機会を増やしていくことが大切であると追記しておきます。

 文化創造学科の学生の中には、ラップランド大学のアート専攻に興味がある人が多くいると思います。しかし、英語に自信がなかったり、国際文化学科ではないからと躊躇する人もいるかもしれません。しかし間違いなくラップランド大学はアートを学ぶ上で最高の大学と言えます。私が見る限り、ラップランド大学に来るアート専攻の学生が最もロヴァニエミ及び北極圏の自然現象を楽しみ、そこからインスピレーションを受けアート制作に没頭していました。北極圏での生活はインスピレーションの宝庫です。またラップランド大学でのアート学生への制度は大変充実しています。学内ではアート学生の作品の展示が頻繁に行われており、キャンパス中がアートギャラリーになっています。間違いなくアート学生にとって大きなモチベーションになっているでしょう。少しでも留学に興味があるのであれば学部、学年、性別に関係なく思い切って新たな世界に飛び込んでみてください。
 これが最終報告書になりますが、これまでの報告書で少しでもラップランド大学への留学に興味をもっていただけたのであれば、少しの勇気と最大の好奇心を持って、新たな自分を探す冒険の旅に出てみてください。

ロフォーテン諸島