曲阜師範大学 国際文化学科3年 千葉明里 <1号 2019年3~4月>

初めに

 曲阜師範大学は、孔子の故郷として有名な中国山東省済寧市曲阜市にある曲阜キャンパスと、日照市にある日照キャンパスの2キャンパスで構成されています。私たちが留学している曲阜キャンパスの周りには三孔と呼ばれる孔府、孔廟、孔林という孔子にゆかりのある世界遺産に登録された建造物もあります。第1号の報告では2月末に派遣されてから約2か月間の生活について紹介します。

留学前の準備

 交換留学派遣生募集は第一次が6月、第二次が11月にあります。中国・韓国の交換留学は欧米圏の大学と派遣期間が異なり半年ほど早く留学が始まるため、第三次募集では応募することができません。
 今回私は第二次募集に応募して曲阜師範大学へ留学することになりました。第一次募集の段階で一名留学生が決まっていましたが、曲阜師範大学から留学に関する書類が届くのは同じ時期で、1月末に届きました。そのため留学の書類が届いてから留学準備を始めると、出国までの時間が非常に短く、急いで準備しなくてはいけません。そこで、私が留学前に行った準備の中で留学が決まってから書類が届くまでにできる準備と、書類が届いた後にできる準備について紹介します。

外国人体格検査の受診
 外国人体格検査とは、中国に半年以上(181日以上)留学する際中国の大学に提出しなくてはいけない健康診断です。私立病院や赤十字病院などで行う健康診断とは違い、国立病院や日中友好病院などで診断したものでなくては無効になってしまいます。山口県では防府市にある「山口県立総合医療センター」で行っています。診断を受けてから結果が出るまで1週間から10日ほどかかります。診断書の有効期間は6か月なので2月から留学するのであれば9月以降に受診すれば大丈夫です。費用は22,000円~25,000円程度です。
 診断を受けるためには1~2週間前に電話で予約をします。火曜・水曜・金曜日の中から都合の良い日を選び、その後予約が確定したら病院から電話がかかってきます。朝の8時30分からの診断で、お昼過ぎに診断が終わります。インターネットにある診断書を印刷し写真や名前などを英語で書いて病院に持っていきます。診断書を英語で書いてもらうことを忘れないでください。
 検診を受けてから約1週間後に病院から診断書が出来上がった旨電話があり、もう一度病院へ行って診断書を受け取ります。その時にレントゲン写真などももらいます。留学する大学によっては提出が必要なようですが、曲阜師範大学は必要ありませんでした。

クレジットカード発行
 中国ではVISAカードなどがあまり主流ではありません。主に使われるのは銀聯カード(Union Pay)です。さらに海外キャッシング対応のクレジットカードを作っておくと日本からお金を入金してもらい中国で引き出すことができます。中国で銀行口座を作るまでの間、現金を持っておくのが怖い人はクレジットカードの発行を済ませておくことをお勧めします。
 さらに、日本円を持ってきても中国で換金することは非常に難しいです。学内や大学周辺にある銀行、郵便局では規模が小さいため日本円を取り扱っていません。少し大きい銀行へ行ってもその銀行の銀行口座がないと外国人は換金することができません。そのため日本であらかじめ人民元を用意しておくか、空港で換金しておく必要があります。
 そして、中国で作った銀行口座に日本からお金を入れてもらうこともできますが、同じく学内の銀行内ではお金を受け取ることができず、大学から少し離れた場所にある別の支店へ行かなくてはいけないため、日本に一時帰国するまでの生活費などを用意しておくと便利です。

証明写真
 中国にも証明写真を撮る場所があります。しかし、日本で撮っておくと安心です。曲阜での学生証の発行に証明写真が必要でしたが、サイズの規定や背景の指定などはされませんでした。ビザ発行用に撮った写真が余っていたのでその写真を利用しましたが、白背景の写真を用意しておくとよいと思います。

 書類が届いた後は、ビザの発行、航空券の手配、携帯電話の準備などをします。

ビザの発行
 1年間の留学をするのであれば、X1ビザが必要です。大学から送られてくる「JW202」と「入学許可書(录取通知书)」という書類が必要です。
 ビザの発行は中国大使館で行うことができ、ビザ代行会社もあります。山口県から一番近いと福岡の中国領事館でビザが発行できます。しかし、電話で確認した際、福岡の中国領事館で発行するためには住民票を山口県に移しておかなくてはいけないと言われました。そのため私はCITS JAPANというビザ代行会社にビザの発行を依頼しました。この会社は東京・名古屋・大阪に会社があり、山口県の場合は大阪の会社に電話で依頼することができます。場所によって発行までにかかる日数が違います。私は郵送先を実家の岐阜県にしてもらいたかったので名古屋支社に依頼しました。
 代行会社に発行を依頼するためには、会社のホームページから申請書をダウンロードし記入をして、パスポートと申請書・必要書類を会社に郵送します。その際、気を付けなくてはいけないのはパスポートに入国スタンプが押してあるかどうかです。最近、空港では顔認証で入国することができ、出国スタンプや入国スタンプを押してもらうためには別の場所へ行かなくてはいけません。このスタンプが押していない場合は、空港へ行き申請してスタンプを押してもらうか、ビザ申請に立ち会う必要があります。空港で申請をする場合最寄りの空港は関西空港で、福岡空港ではやっていませんでした。しかし、この入国スタンプに関してはビザ発行の担当者によって必要であったり必要なかったりします。そのため、スタンプを押しておくと安心ですが、電話で入国スタンプが必要かどうかを確認することをお勧めします。
 このビザの発行も1週間ほどかかります。こちらはパスポートなどと一緒に郵送してもらい、郵送される振込用紙で入金をします。私の場合ビザ申請に立ち会ったためその場で支払いました。費用はビザ申請代行代12,500円と送料700円の、合計13,200円でした。発行までは、春節という中国の祝日を挟んだため2週間ほどかかりました。

航空券の手配
 今年は曲阜師範大学から2月27日、28日に済南空港に到着するよう言われました。済南空港までの直行便は関西空港からしか出ておらず、ちょうどよい時間のものもなかったため、私は27日に福岡国際空港から上海浦東空港へ行き、上海で一泊して翌日28日に済南空港へ行きました。
 私が利用したのは中国東方航空という航空会社で、国際線の受託荷物の重さは23キロ以内のものが2つまで無料でしたが、その後上海から済南へ行く便が国内線であったため、受託荷物や機内持ち込み荷物の基準が異なっていました。乗り換えをする際は中国国外で乗り換えるものを選ぶか、高速鉄道という新幹線のようなものを利用すると多くの荷物を持っていくことができます。

留学生活

寮について
 曲阜師範大学に留学している留学生は国際文化交流学院の留学生寮で生活しています。二人一部屋で多くの場合同じ国籍の人同士で同室になりますが、私たちより2週間ほど遅れてきた他大学の日本人留学生はロシア人の留学生と同室になっています。同室の相手は選べません。
 部屋には、エアコン、テレビ、トイレ・シャワー、ベッド、学習机・椅子、クローゼットがあります。私たちの部屋にはクローゼットが二つ付いていますが、部屋によっては一つしかない部屋もあります。各階には自炊ができる共同キッチンがあり、冷蔵庫もあります。洗濯機は一階にあり一回2元で使うことができ、屋上には洗濯物を干す場所もあります。


過去の先輩方が使っていたものなどもあり、生活に必要なものはそろっています

授業について
 授業は留学生のみで行われています。クラスはA班からC班の3つに分かれており、学期の初めに行われる筆記と面接によるテストでクラス分けがされますが、途中でクラスを変えることもできます。
 授業は月曜日から金曜日の午前中8時から12時まであります。1日2科目の授業で一時間ごとに10分ほどの休憩があります。
 現在私が履修している科目は漢語総合、漢語閲読、漢語口語、漢語聴力、漢語写作、HSK補導の6科目です。クラスによって使う教科書や難易度担当する先生が違い、私が授業を受けているA班では中級中国語の教科書を使いHSK5級(中国語検定3級~2級程度)の取得を目指しています。


時間割はクラスごとに決められていて履修できる科目も決められています

食事・買い物について
食事はいつも食堂を利用しています。曲阜師範大学内には学生食堂や教員食堂など多くの食堂があり、どこも4元~8元(1元約18円)程度で安く利用することができます。大学の周辺にもご飯を食べるところは多くあり、学外の飲食店でも20元以下で食事をとることができます。
 学内にはスーパーマーケットもあり、コンビニのような小さい店も多くあるため、買い物に困ることはありません。大学の東門を出ると大きなスーパーマーケットがあり、大学周辺で生活用品をそろえることができます。


私がよく利用する東門です。交通量が多いですが、スーパーや飲食店も多く便利です

携帯電話と銀行について
 中国で銀行口座を作るためには中国国内で使用可能な携帯電話番号が必要です。そのため、銀行口座を作る前に携帯会社でSIMカードの契約をする必要があります。
 中国の携帯会社は日本と異なっていて、携帯電話本体を購入する場所とSIMカードを契約する場所は違います。学内にはSIMカードを取り扱っている店がいくつかあり、大学周辺にも本体を取り扱う店も数多くあります。
 日本で使っている携帯電話をそのまま中国で使用する場合はSIMカードの契約のみを行います。iPhoneは中国のSIMカードに対応していますがたいていの場合SIMロックというものがかかっているため、日本で事前に携帯ショップなどでSIMロックの解除をしてもらう必要があります。Android端末の場合一部の機種は中国の周波数に対応していないので携帯電話本体を購入する必要があります。携帯電話本体は1300元程度で購入できます。
 銀行も学内にありますが、日本人が銀行口座を開設する際にパスポートのみでは作れないことがあり、マイナンバーを要求されることがあります。東門にある中国建設銀行では、パスポートのみで開設することができました。中国は日本と違い銀行開設後通帳などがもらえるわけではなくキャッシュカードだけ渡されます。

微信支付(Wechat pay)・支付宝(Alipay)について
 中国ではキャッシュレスが進んでいて、買い物の支払いだけではなく公共料金や携帯電話の支払いなどもできます。
 主に使われているのは微信支付(Wechat pay)と支付宝(Alipay)の二つです。使い方に大きな違いはありませんが、支付宝は中国の銀行口座がなければ登録できないのに対し、微信支付は日本のクレジットカードでも登録することができます。しかし日本のクレジットカードで登録した微信支付を使うためには、中国の銀行口座を持っている人から送金をしてもらわないと使用できません。さらに、最近では不具合も多く支払いができないことや送金がうまくできないことがあります。

最後に

 ニュースや新聞などのメディアによる報道などにより、日本での中国の印象はあまりよくないかもしれません。しかし、中国に来て2か月が経ち、実際に中国人と交流をすると、とても親切な人が多く外国人である私にとても優しく接してくれます。学内の学生や先生だけではなく、食堂の職員や学外の飲食店の店員さん、スーパーマーケットや市場の人など、皆親切です。さらに、日本に興味を持っている学生も多く日本人留学生だとわかると積極的に話しかけてくれたりもします。日本にいるだけでは知ることができず体験することがなかった中国人との交流ができ、交換留学に応募してよかったと感じています。