センター大学(2018年度交換留学生)国際文化学科4年 稲葉皐 <最終号>

はじめに

 長いようで短かったセンター大学での留学生活が終わり、これが私にとって最後の報告書になります。今回は期末試験、帰国までの出来事、留学生活のまとめについて報告します。

期末試験

 私にとって春休み後は毎週がHell Weekであり、期末試験週間中もテスト勉強に加えて、いつもと同様にペーパーやプレゼンテーション作りに追われていました。

POL260 Intro to International Relations
 4月の終わりごろから授業で取り扱ったトピックについてリアリズム(現実主義)・リベラリズム(自由主義)・構成主義・マルクシズム(科学的社会主義)・フェミニズム(女性解放思想)・「文明の衝突」の観点からディベイト(論議)を行いました。パネリスト(討論者)以外の学生は毎回2、3問の質問を考えて、ディベイト後に提出をします。私のディベイトは5月の初めに行われ、核兵器について「文明の衝突」の観点から意見を発表しました。教授からの質問に即興で答える時間があり、現地の学生でさえも教授からの質問に上手く答えられず、クラスの雰囲気が重たくなってしまうことも多々あったので、すごく緊張していました。しかし、オフィスアワー(学生からの質問や相談に応じるために、教授が必ず研究室にいる時間帯)に何回も行き、教授に分からないところを質問して、私の立てた論点についてたくさんのアドバイスを頂き、また、友人に原稿を確認してもらい、一緒に質問を予想して答える練習をしたので、自信を持って発表することができました。
 期末試験は教授から出された問題2問にワードで各3ページずつ回答し、オンライン上で提出しました。今までに読んだリーディングの要点をまとめて答えるものでした。課題が発表されてから締め切りまで1週間ほどあったので、少しずつ進めていきました。幸いにも、私がディベイトで選んだ「文明の衝突」について問題が出題されたので、悩まずにすみました。
 この授業は、私にとって今学期で一番難しい授業でした。国際関係について様々な理論を用いて説明をするのですが、日常生活ではほとんど使わないようなアカデミック(学術的)な単語が数多く登場し、毎回予習・復習にはたくさんの時間を使いました。しかし、ヘゲモニー(覇権)国家の1つであるアメリカの視点から国際関係を勉強するのはとても興味深かったです。

ENG170 Better College Writing
 試験前に最終ペーパーを提出し、その後の期末試験は今までに習った文法からまんべんなく出題されました。試験前の授業で文法はたっぷりと復習していたので、試験は特に難しいと思うところもなく1時間ほどで終えることができました。
 この授業では、授業中の情報量がかなり多く、気を抜くと教授が何を話しているのかわからなくなる時がありました。そのため、積極的にオフィスアワーに行き、ペーパーについてたくさんフィードバックを頂き、また習った文法について質問をしました。この授業で本当にライティングの力が伸びたと思います。文法はもちろんのこと、どのようにしたら説得力のあるペーパーが書けるか、ネイティブスピーカーはどのような文章を書くのか等、様々なことを学びました。

ARS210 Introduction to Oil Painting
 試験ではなく、最終課題を仕上げてクラスメイトとともに鑑賞会が行われました。最終課題を仕上げる時間はたっぷりとあったので、余裕を持って絵を描くことができました。鑑賞会では、教授に差し入れしていただいたドーナツを食べながら、クラスメイトの絵について感想をお互いに言い合い、作品を具体的に褒める力がつきました。
 この授業は課題が多く、他の授業の課題とペインティングの課題を両立させるのが大変でした。しかし、自分の好きな音楽を聴きながら、ひたすら無心でペインティングをする時間はリラックスできる貴重なひと時であり、私のお気に入りの授業でした。


最終課題は好きなものを描いても良いとの事だったので、魚のスリッパを描きました。クラスメイトは色々なものを描いており、鑑賞会は楽しかったです。

EDU226 Technology and Education
 この授業では、最終試験の代わりに1人10分間のプレゼンテーションがありました。プレゼンテーションの内容は授業で学んだトピックからいくつか選び、「どのようなことを学んだか」、「将来、教育現場でどのようにテクノロジーを使うか」などということについて発表しました。クリエイティブなプレゼンをすることが課題の一つであったため、CanvaというウェブサイトでSNSの広告のようなプレゼンテーションを作り、それを実際に自分のSNSに投稿した画面をプロジェクターで映して発表しました。
 秋学期に近くの小学校で授業を見学した時に、小学校のICT化を目の当たりにして、実際にアメリカのテクノロジー教育について学びたいと思い、この授業を履修しました。アメリカのデジタルシティズンシップ(情報技術の利用に関する適切で責任ある行為模範)教育や、教育的なウェブサイト・アプリなど、実際にアメリカのテクノロジー教育について知ることができました。また、小学生を相手に1時間の授業を行ったCBLプロジェクトや、ほぼ毎週のようにプレゼンテーションがあったため、人前で発表するスキルがとても鍛えられました。学期初めの頃は、原稿を読みながら発表をしていましたが、たくさんプレゼンテーションを行ったおかげで、現地の学生と同様、原稿無しで堂々と発表できるようになりました。

帰国まで

 5月15日に期末試験が終わり、次の日から27日までルームメイトのアナさんの家に滞在させてもらい、都市のルイビルや、イリノイ州シカゴでたくさん遊びました。
 そして、センター大学の卒業式に行きました。


卒業式では4年生だけでなく、留学中に仲良くなったたくさんの友人にお別れを言うことができました。


シェーカー教徒の博物館に行きました。ここではシェーカー教徒たちが実際に生活していた建物の見学や、一緒に歌を歌う体験をすることができます。


念願だったケンタッキーでの乗馬です。景色を楽しみながら丘をたくさん走りました。とても気持ちよかったです。


アメリカでの最後の週末は、シカゴに旅行に行きました。シカゴピザとして有名なディープディッシュピザ発祥の店でピザを食べたり、美術館やネイビーピアに行ったり、コメディーショーを見たりしました。

留学を振り返って

 留学前、私は幾らか自分の英語力に自信を持っていましたが、センター大学に来てその自信は打ち砕かれました。センター大学に来たばかりの頃は、自分のことを何も話すことができない赤ちゃんのようだと思うくらい、現地の学生・教授が何を言っているのか理解できませんでした。現地の人は私が「わかったふり」をしていることに気づいています。私は、わからないのにわかったようなふりをするのは、話してくれている相手に失礼だということに気づき、友人との会話をいったん止めて質問したり、オフィスアワーや授業後に教授に教えてもらったりしていました。素直に質問をすることで、現地の人は嫌がるよりもむしろ喜んで説明をしてくれます。そうして深い話をたくさんすることができました。
 この留学で英語を学んだのはもちろん、様々な経験を通して本当にたくさんのことを学びました。町中に色々な国の料理のレストランがあり、食堂では当たり前にベジタリアン専用のコーナーがあり、パーティーではベジタリアンかどうかや、宗教の確認をしてから食事を作る等、アメリカは食への配慮がすごいと感じました。また、自分をアピールすることの大切さを学びました。現地の学生は自分の意見をきちんと持っており、いつでもそれを他の人に話すことができます。授業内容をはじめ、政治や文化など自分の考えを相手に伝え、納得いくまで議論をします。現地の人は皆、違う文化を持っている私の話を面白そうに聞いてくれます。積極的に自分の意見を話すことで、様々な深い話をすることができました。お互いの考えや文化を主張し、優劣をつけるのではなく、違う考えや文化を認め、それから自分の考えを述べるという姿勢が大切なのだと学びました。
 また、この留学でたくさんの人と出会い、様々な刺激をもらいながら本当に充実した毎日を送ることができました。もちろん楽しいことばかりではなく、同じくらい辛いこともありました。時には英語が理解できない悔しさから自分に腹が立ち、涙ぐんでしまうこともありました。そんな時にルームメイトや親友をはじめ、たくさんの友人が話を聞いてくれ、支えてくれたおかげで乗り越えることができました。すべての出来事、経験が良い思い出です。


毎日図書館の閉館時間までみんなで課題をしていたのは、楽しい思い出です。


大親友であるルームメイトのアナさんと、アイルランドからの交換留学生のノルマさんです。この二人には留学中たくさんお世話になりました。私達は三人とも国籍、持っている文化や歴史が違います。だからこそ色々な深い話をし、なんでも話すことができる仲になりました。レキシントン空港で、三人で泣きながらドーナツを食べ、また必ず再会することを約束しました。

これからセンター大学に行く学生へ

 留学中は優先順位をつけるというよりも、センター大学にいる時間は限られているのだから、私のやりたいことを全てやるということを目標にしていました。自ら進んでどんなことにも挑戦することで、必然的に英語を話す機会も増え、たくさん友人ができ、貴重な体験をすることができました。限られた時間の中でいかに主体的に動けるかが大切になってくると思います。自分から現地の学生に話しかけるのは、すごく勇気が必要です。私は「食堂に一緒に行こう」と話しかけるのも、断られたらどうしよう、英語がわからなかったらどうしよう、と色々考えてしまい最初の頃は本当に怖かったです。初めはぎこちないかもしれませんが、仲良くなってしまえばそのような雰囲気はなくなり、良い友人になれるでしょう。センター大学は小規模の大学なので、すぐに色々な人と知り合いになることができました。ほとんどの人はフレンドリーで、日本から来た学生に興味を持ってくれています。英語を話すことを恐れずに、まずは「Let's go to Cowan together!(食堂に一緒に行こう!)」と笑顔で話しかけてみてください!現地の学生は喜んでくれると思います。
 留学を成功させることができるかどうかは全て自分次第です。誰かが話しかけてくれるだろうと受け身の姿勢で待つのではなく、自分から行動を起こしてみてください。

終わりに

 いつも応援してくれた家族、友人、そしてお世話になった山口県立大学の先生方、高等教育センターの皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。この留学で学んだこと、経験を活かし、これからも頑張ります。