曲阜師範大学(2018年度交換留学生)国際文化学専攻2年 中村光里<2号 2018年5~6月>


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ごあいさつ

 梅雨も台風もない曲阜は5月も6月も、雨が降る日を除いてずっと乾燥した気候が続いています。しかし、たまにスコールが来て木の枝や葉や羽毛が飛んでくるので、全身ずぶ濡れになることもあります。その一方で今年7月初旬、日本は全国的に大雨洪水の被害があり、そのことをニュースや家族との連絡を通してようやく知り、改めて現在日本から遠く離れているのだということを感じました。

生活の変化

 3・4月に比べ、5・6月は更に現在の生活に慣れ、気持ちに余裕を持って過ごせるようになってきました。予習をしておかなければ、ちんぷんかんぷんだった授業が今では予習せずとも先生の解説を聞いて大体理解できるようになったり、会話中ずっと緊張してほとんど発言できなかった以前と比べ、今では流暢でなくとも構わないと楽観的に考え、積極的に中国語を話せるようになったりと、少しずつ心境や語学力に変化が出てきているように感じます。そして、留学生や中国人とご飯を食べたり旅行したりする機会が増え、日常会話の時間を多く得られました。
 3・4月は机に向かって朝から晩までひたすら勉強という日が多かったのですが、この5・6月は留学生や中国人の友人と一緒にいる時間が多く、その分ずっと机で勉強するといった日は少ない月となりました。授業を受けた後、友人たちとご飯を食べに行くもしくは一緒にご飯を作ったり、食後宿題を終えると友人の部屋で一緒に映画を観たり、外でスポーツを楽しんだり、買い物に一緒に出掛けたりと、誰かと過ごす時間がとても多かったです。そのため、「今私はこういう気持ちだけれど、中国語でどう表すのだろう?」という疑問を持つことが増え、現地の人たちの会話をよく観察したり、百度(中国の検索エンジン)を使って中国語で書かれた説明を読んで会話のフレーズを調べたりするようになりました。

大学内での出来事

 ここでは、曲阜師範大学内で見つけた小さな発見や出来事を紹介します。

晴れ時々綿毛
 5・6月、桜が散り、木々が緑色に変化した頃と同時に、大学中に沢山の綿毛が飛んでくるようになりました。綿毛を口に吸いこまないようマスクをする学生たちや、キャンパス内の建物の隅に沢山の綿毛が吹き溜まりになっている様子は、日本では見たことのない光景でした。調べてみると、綿毛の正体は柳の木の枝に実っている種子に付着した綿毛であり、大学中にその木が植えられていることが分かりました。ごく稀にこの綿毛を吸い込んでしまい、せき込むことがありますが、晴れの日の景色はとても幻想的です。また、マスクをつけている人たちの大部分が黒色のマスクであり、白いマスクが主流な日本との違いを感じました。

蚊との戦い
 気温が上がるのに比例して、蚊の数も増えてきました。中国の蚊はとてもしつこく、寝ている間も1匹の蚊が一夜に何度も刺してきて、その痒さで起きてしまうこともしばしばありました。
 授業の先生にそのことをお話すると、授業中に先生が私たち留学生に中国ではどのように蚊への対策をとっているのかを教えてくれました。日本にあるような渦巻き型又は電動の蚊取り線香が中国にもあったり、電動のハエたたきという中国独自のものがあったりと、便利なものが多い印象を受けました。特に魅力を感じたアイテムは、1人分のベッドに設置できるサイズの蚊帳です。中国では一般的であり、留学生の中にも持っている人が数名いました。この中で寝ることができれば、蚊は決して蚊帳へ侵入できないため、安心して眠ることができます。ネット通販では約700円で購入できますが、7月初めに帰国を予定していた宿舎にいる日本人の先輩から蚊帳をもらうことができたため、現在それを使っています。また、電動式蚊取り線香(1年分の薬量で約510円)を併用することで蚊の心配はかなり減りました。

電動式の蚊取り線香


蚊帳

中間試験
 5月初旬に2日間に分けて中間試験が行われました。教科書からの出題だけでなく、HSK(中国語能力試験)の過去問題や簡単なスピーチなど科目によって出題形式は大きく異なっていましたが、どの科目もHSK対策に直結していました。リスニングが科目の中で一番低い点数だったため、中国語を聞く時間を増やす練習にシフトしていかなければと考えるようになりました。そのため、最近では中国の映画やドラマをみたり、留学生や中国人との雑談の機会を意図的に設けたりするようにするようになりました。
 特に中国のドラマや映画は娯楽として楽しめますし、流行や日常会話を知ることができるので「生きた中国語」を身につけるのに最適です。

卒業式典に参加
 6月24日、曲阜師範大学の曲阜キャンパス・日照キャンパスの卒業式典が開催されました。晴天の空の下、外に全ての卒業生たちが集まり、大規模なものとなっていました。私たち留学生も支給された大学のユニフォームを着て参加しました。日本の大学卒業式典はスーツや和装が学科生にとって主な服装であり、大学院生は黒いユニフォームに黒の博士帽を身につけるのが主ですが、ここの大学では全ての大学生が大学院生のような黒いコスチュームを着用していました。2つのキャンパスはオンラインを通じてお互いの式典がリアルタイムで見られるようになっており、近代的な式典を醸し出していました。
 式典が終わった後は、卒業生の友人たちと記念撮影をしたり、食事に出かけたりしました。7月には彼女たちは大学を出て故郷へ帰ったり、仕事に就いたりし、なかなか会うことができなくなるため、卒業への祝福の気持ちと別れの寂しさが入り交じり、複雑な気持ちでした。

卒業式の様子

蘇州旅行

 中国は5月初めが労働節という連休になっており、今年は4月29日から5月1日が連休でした。私はその期間を含む5日間を利用して、中国人の友人と日本人・韓国人留学生たちと上海の北側に位置する江蘇省へ旅行しました。
 江蘇省は歴史遺産が多く残る大都市なので、景観がとても美しく、清潔感がある印象を受けました。世界文化遺産の虎丘や同里という文化遺産と歓楽街が一緒になった街やそこの湖、太平天国のあった拙政園などへ行きました。食文化も人柄も風景も山東省は異なり、中国という1つの国の中には様々な風俗習慣があるように感じました。

拙政園、虎丘、同里


同里湖、昆曲演奏の様子

他大学の日本語授業に参加

 新しい日本人との出会いもありました。曲阜市内にある斉魯理工学院で日本語を教えている2人の日本語教師の方々が曲阜師範大学を訪れ、留学生に交じって一緒に中国語を学びたい旨を伝えに来ていました。最初の週は一緒に参加できたのですが、大学側の都合でそれ以降できなくなってしまいました。しかし、それ以降私と2人の先生との間には交流が生まれ、連絡を取り合うようになりました。
 6月6日、私は先生方の学校に行きました。その日は先生方の企画で阿波踊りを学生たちと一緒に踊ることになっていたので、私も学生たちに混ざって躍らせてもらいました。今回参加していた学生は1年生で日本語を学び始めて日が浅かったため、簡単な挨拶以外は基本的に中国語を話して交流しました。
 私も阿波踊りは初めてだったため、学生たちと一緒に先生の指導を受けながら練習しました。音楽をかけながらみんなと一緒に踊ることで、一体感が生まれ、楽しい時間になりました。先生方は私に紙と筆だけでなく、違う文化の遊びや踊りなどの活動に触れることもまた勉強につながることを教えてくれました。

着付けの様子(日本語TAの米村先生)、練習風景(奥では日本語TAの山本先生が見守る)

おわりに

 4か月留学生活を過ごしてきた中で、誰かと交流する際に気を付けなければならないことがあることを強く実感させられました。それは、「常に日本と海外の国々のことを考えて行動するようになった」ことと、「相手へのリスペクトを必ず心がける」ことです。文字だけを見ると、意外性のない、当たり前なことかもしれませんが、いざ異文化を生きる人たちと交流すると、たとえ無意識だったにしても、相手に対して失礼なことをしてしまう可能性は低くありません。常に「私の言動はこの人たちにとってタブーではないか」、「私が正しいと考えている言動は日本独自のものではないか」ということを意識する必要があるように考えています。次号では、それを考えさせられるようになった出来事についてもお話します。