ナバラ州立大学 国際文化学科4年 山田まほら <最終号>

 Hola! ¿Qué tal?日本語で、やあ!元気?という意味の言葉です。日本では元気?と友人に尋ねることは稀ですが、スペインでは毎日、それも同じ相手に会うたびに何度もこの言葉をかけます。留学当初はこの文化が不思議でなりませんでしたが、この挨拶に彼らの温かさや陽気さといった性格があらわれているようで、素敵な言葉だなと思います。
 3月中旬、スペイン国内のコロナウイルス感染拡大の影響で予定よりも約3か月早く、日本へ帰国しました。スペインでも感染者数が増加していたものの、まさか本当に緊急帰国することになるとは思っておらず、県立大学の帰国要請から出発まではお別れの挨拶まわりにパッキングなど、怒涛の1日となりました。最終号では、私の留学の始まりから終わりまでを書いていきます。

留学のきっかけ

 大学2年になった頃、留学から帰国した先輩方や学内外での国際交流の機会が増え、それまで考えたこともなかった留学への挑戦を意識するようになりました。大学卒業後は在留外国人の生活支援や地域の国際化に貢献したいという思いもあり、留学を通じて自分が異国で外国人として生活することは必ず意味のあることだと思い、大学の交換留学に応募しました。初めは英語圏であるカナダへの留学に応募しましたが、選考には不合格。その後スペインへの留学から帰国していた先輩のお話から、スペイン語に加え、現地では留学生とのコミュニケーションや授業で英語を学べる機会が多いことやシェアハウスでの生活などナバラ州立大学にしかない良さがあることを知り、二次募集ではスペインに応募し残りの1枠でどうにか留学への権利を得ることができました。
 留学挑戦に至るまで、本当に多くの方の話を聞き、背中を押してもらいました。


パンプローナの市役所。ここで牛追い祭りサンフェルミンは始まります。

葛藤とキーパーソン

 待ちに待った留学生活がスタートし、最初はピソ(部屋)探しや履修登録と、何かと忙しい日々でした。留学生なら必ずやってくると言われるカルチャーショックやホームシックは想像より感じることもなく、風邪をひくこともありませんでした。しかし、心の奥で何か物足りなさのような、現状に対する焦りのような思いを感じていました。今振り返ると、それはきっと自分の思い描いていた留学生活と今の自分との違いからきていたのだと思います。後に留学とは十人十色で、固定概念や周囲との比較は全く意味の無いことだと気づきました。大切なのは、目の前のチャンスと新たな出会いを大切にすることでした。当初の私は先々のことに目がいってしまい、焦り、今のことをおろそかにしていました。
 私が考え方を変え、自分なりの留学にしていこうと考えるようになれたのは支えてくれた友人の存在のおかげです。今回はその中でも2人の友人について書きます。
 1人目はNachoというスペイン人の大学院生です。彼は以前スペインに留学していた先輩からの紹介で知り合いました。日本語を5年以上前から勉強していて、流ちょうに日本語を話します。そのため、スペイン語の先生として、教えてもらうこともありました。日本語を勉強する外国人だからこその日本人に対する疑問として、日本人のたてまえの文化を奇妙に感じているようでした。Nachoがある日本人の友人と会った時に、また会おうと友人に言われ、後日Nachoがその友人に連絡したところ、返信がなかったり、直前に断られることがあったそう。本来、たてまえとは相手への気遣いや思いやりによるものであるはずなのに、反って傷つけてしまうことがある矛盾を感じました。特にたてまえ文化の無い外国ではますます奇妙に見られてしまうと思います。日本人と積極的に関わる彼だからこそ私の知らない日本を知っていて、いつも興味深い話をしてくれました。
 2人目はAnnaです。彼女は私のピソのオーナーで、生活をともにするパートナーでもありました。社会人の娘もいる彼女は私の知らない世界でたくさんの経験をし、いろいろな話をしてくれました。私が疑問に思ったことを聞くと、お互いが納得できるまで徹底的に教えてくれます。気が沈んでいるときでも彼女と話をすると不思議と励まされたような感覚になり、いつも自分の気持ちを切り替えるときは彼女のおかげだったように思います。Annaはまさしく私のスペインの母であり、スペインを離れる最後の最後まで、支え続けてくれました。
 この2人の支えがあって、私は私の留学生活を送ればいいんだと充実したものにできました。彼ら以外の友人も含めて、スペインで出会った人々は、私がこれまで出会ったことのない変わった人や面白い人ばかりでした。彼らとの出会いに感謝すると同時に、このつながりを今後も大切にしていきたいです。


オーナーのAnnaと

さいごに

 7か月間の留学を通じて学んだことは数えきれませんが、1つ私が確信したことはやってみて後悔することは絶対にないということです。留学に行くか行かないか、授業で発言するかしないか、自分から話しかけてみるかみないか、大なり小なり、これまで何度も選択に迫られることがありました。そして「する」選択をした後は必ずしてよかったと感じました。それは結果の良し悪しではなく、やってみて自分に何らかの収穫があったかどうかということです。全てのタイミングで「する」ことを選ぶのは難しいかもしれませんが、挑戦したいと思ったらそれはするべきだということを学びました。
 最後に、国際交流部門の皆様と留学に向けて支えて下さった方々、本当にありがとうございました。留学での経験と学びは一生の宝物となりました、今後の自分に最大限生かし、挑む心を胸に頑張っていきます。


大学の図書館

スペイン料理のTortilla。3日に一度食べていました。