ナバラ州立大学 国際文化学科3年 山田まほら <1号 2019年9~10月>

 ナバラ州立大学は、スペイン北部に位置するパンプローナという町の大学です。気候、食、交通ルールなど全てが日本と異なるこの地での生活にもようやく慣れてきました。この2か月で多くの経験をしましたが、今回の報告では、その中でも留学ならではの学びがあったものについて書きます。

留学準備

 長期の留学をするにあたって、ビザ申請や海外旅行保険への加入など、するべきことはたくさんありますが、それらの準備の中で、出国までに間に合わなかったことが1つありました。それは歯の治療です。海外旅行保険に加入すると、滞在先の国で病院を利用する際にかかる治療費の一部は保険によって賄われ、全額を支払う必要はありません。しかし、歯科だけは例外で保険が効かず、高額な治療費が請求されるので、出国までに歯の状態を万全にしなければなりません。そのことを私は数か月前から分かっていたにも関わらず、先延ばしにしてしまいました。出国の3週間ほど前に治療に行った私は親知らずなど、治療に時間を要するものがあったことや、医院のお盆休みが重なったこともあり、最低限の治療のみを受け、出国することになりました。たかが歯、されど歯。いつ歯が痛むか分からない日々を過ごすのは口に時限爆弾を抱えているようなもので、もっと早く治療に行っていればと後悔しています。これは私の詰めの甘さによる失敗ですが、これから留学に行く方に歯の準備を怠ってはいけないということをお伝えしたいです。

出国からパンプローナまで

 私は東京→台湾→香港→マドリードという乗り換えでスペインに向かいました。マドリードに着いてから、まず、日本で使用していた携帯電話をこちらでも使用するため、携帯電話のお店に向かいました。日本の携帯を海外でも使うためには、日本で携帯のSIMロックを解除し、現地で新たなSIMカードを使用する必要があります。私は日本の空港で出国直前に自分でSIMロック解除をしていたのですが、スペインに着いてから、手違いで解除されていないことに気づきました。結局、日本から持ってきた携帯は、Wi-Fiがある場所でしか使用できず、こちらで7,000円ほどの新たな携帯を買うことにしました。この携帯を買うまでは、外出中は携帯を使用することができず、本当に不便でした。

ピソ探し

 パンプローナに到着してからは、オリエンテーションや学期直前のスペイン語集中講座などがあり、とても忙しいです。また、私はこの期間にこれから住むシェアアパート(こちらではピソと呼ばれます)を見つける必要がありました。最初の一週間は大学の寮に日払いで住むことが出来ます。もちろん、続けて寮に住むか、他の住居に移るかは自由です。私は海外の人との共同生活への興味と家賃の安さから、ピソに住む予定でした。先輩方の経験によると、この"ピソ探し"が留学生活で1番大変だと聞いていたので、ピソが決まるまでは本当に不安でした。退寮日の4、5日ほど前から5つのピソのオーナーや会社にメールを送っていたにも関わらず、退寮前日までに返信がきたのはたった1つでした。実質選択肢1つの状態でピソの見学に行きました。そのピソはオーナーも一緒に住むタイプで、既にフランス人の留学生が住んでおり、空きがあと1部屋という状況でした。オーナーはウクライナ人の女性で、スペイン語は話せますが英語を話すことは出来ません。私はスペイン語のスピーキング能力があいさつ程度のレベルだったので、家のルールなどの説明はほぼ分かりませんでした。そこで、昨年山口県立大に留学していたスペイン人の学生に電話を通じて通訳してもらい、どうにか最低限のことは理解できました。少し迷いましたが、早くピソを決定したかったこともあり、その日にそこへ住むことに決めました。
 オーナーが海外からの移住者ということもあり、私の拙いスペイン語も理解してくれ、新しい単語や文化を教えてくれます。また、フランス人の学生も英語は話せないので、ピソではスペイン語のみで生活しています。最初は会話が出来ず大変でしたが、これ以上身近な実践の場はないので、この環境で良かったと思います。
 また、オーナーの娘さんと一緒に日帰り旅行に行ったり、外食をしたりと、たくさんの経験をさせてもらっています。
 他の国の留学生は、こちらに来る前にピソを決めていた人もいるので、到着してから慌ただしく決めるより、そちらの方が良いかもしれません。


オーナーたちとのフランス旅行。

授業

 私は今学期、スペイン語、英語、社会学、テニスの授業を履修しています。社会学の授業は英語で開講されるので、スペイン人の学生に加え、留学生の受講者も数人います。この授業を通じて私が学んだことは、受け身では何も得られないということです。グループワークの際に、留学生は必ず各グループに一人入るという決まりがあります。そうすると、スペイン人学生がスペイン語でどんどん話を進めていくことがしばしばあり、スペイン語のままならない私は、たまに聞かれた質問に答えることしかできませんでした。このままでは受講する意味がないと思い、それ以降は話が振られるのを待つのではなく、自分から問いかけ、提案するようにしました。また、授業の英語レベルにまだ追いつけない私は、教授に「発言したいが内容がほとんど理解できず、発言することが出来ない」と伝えると、教授は「この授業の受講者はほとんどがネイティブスピーカーではない。だから、理解できないことに焦ったり、恥じることはないし、留学生のあなたが発言することが、スペイン人学生にとっても価値のあることだ。」と言われ、授業に参加する姿勢が変わりました。これらの経験から、主体的に参加することは自分にも周囲にも良い影響を与えることを学びました。

スペインにある日本

 先月、隣町で開催された"Japanese Weekend"というイベントに行ってきました。これは日本のアニメ、漫画、食べ物などの文化を堪能できるもので、会場は日本文化に親しみのあるスペイン人で大盛況でした。海外から見た日本文化を知ることができました。


"Japanese Weekend"にてアニメ「NARUTO」のキャラクターのコスプレをしていた方と写真を撮りました。

 また、パンプローナには山口公園や山口図書館があります。スペインにいながらも、日本文化を感じられるパンプローナは、とても住みやすい町です。ここで留学できている幸せを忘れず、出会った人や環境に感謝し、残りの期間も多くのことを学んでいきたいです。


山口図書館の様子。日本の書籍、映画だけでなく、週刊少年ジャンプもありました。