ナバラ州立大学 国際文化学科4年 原田結衣 <最終号>

 不運にも私たちの留学生活はコロナウイルスの影響によって終わりを迎えてしまいました。今回はこのコロナウイルスを通してわかった文化の違いのことに触れ留学の総括をしていきたいと思います。

スペインでのマスク着用について

 前号を綴った際に既にスペインではコロナウイルス感染者が徐々に増えてきていましたが、三月に入ってからは感染者数が日に日に著しく増加していき、いつの間にかほんの数週間前まで感染者数が一桁だったスペインの感染者数は日本を越していました。スペインの人口は日本の半分以下にも関わらず日本を上回るスピードで日々感染者が増えていくのが怖くて私たちは一刻も早く少しでもリスクを回避するためにマスクを着用したいと考えていましたが、なかなかマスクを着けるという行動に移ることができませんでした。なぜならば、スペインで一般人がマスクをするという行為はかなり異質で、なかなか理解されないものだったからです。スペインでは病気の予防のためにマスクを着用するという概念がもともとありません。そのため、薬局にも売っておらず手に入れるためにはわざわざ取り寄せてもらうほかありませんでした。スペインではマスクを着ける=感染症患者という感覚のため、マスクをして外出すればほとんどの人が驚いたように視線を向けるし小声でなにやらヒソヒソ言われたりするのが当たり前でした。スペイン以外の欧米圏からの学生たちも同じような認識でした。そのため、私は日本から送ってもらったマスクを持っていたのですが勇気が出ずになかなかつけることができませんでした。
 しかし、ほかのアジア圏の学生たちは日本同様マスクを予防のためにつけるという習慣もあり私たちと同じようにコロナウイルスについて恐怖を感じていたため、徐々に教室だけでもマスクを着用する学生たちが増えていきました。この流れのおかげで私もやっと勇気を出して教室内だけマスクを着用するようになりました。先生の中にはマスクをする私たちを見てかなり驚き、なぜマスクをしているのか?と聞いてきた人もいました。予防のためと説明してもあまり納得していないよう様子だったのでその瞬間は本当に文化の違いを強く感じました。
 これらの経験から、中国の隣国にも関わらず日本人の感染者数の増加が他国に比べて緩やかだった理由の一つとしてマスクをする習慣があげられるのではないかと強く感じました。マスクに対する私たちにとって当たり前だった考え方がどんなに説明してもいまいち理解されなかったのは本当に不思議でしたが、これもスペインの文化だということを学ぶ機会になりました。この経験を踏まえて、海外でマスクは手に入りにくいのでいざという時のためにも日本からマスクを持ってきておくと安心だと思います。ちなみに帰国する際経由したマドリードのアトーチャ駅(1番大きな主要駅)や空港ではマスクをしている人を多く見かけました。

留学を総括して

 私たちの留学は新型コロナウイルスの影響によって留学は途中で終わってしまいましたが帰国する前日にスペインで過ごした日々が毎日充実していたことを実感しました。私たちは帰国要請がでた次の日の朝にはパンプローナを発つことにしたため、留学最後の1日はかなりばたばたしていましたが、その限りあるわずかな時間にできる限り多くの友人や先生に別れを告げに行きました。そして一人一人と話すたびに涙があふれて止まりませんでした。みんないきなりのことだったのでかなり驚いていましたが、別れを惜しみながらも最後は明るく送り出してくれました。翌朝はかなり早く家を出なくてはいけなかったのでパッキングを早急にする必要があったのですが、みんなと別れるのが名残惜しく話し込んでしまって結局家に帰りついたのは夜9時過ぎでした。家に帰ってホストシスターと顔を合わせた瞬間彼女が泣きそうになっていたのを見て私は再び泣いて、ホストマザーはそんな私たちを優しく抱きしめてくれました。そこで私が泣きながらいろいろな友人と会っていたから帰りが遅くなったこと、きょう1日ずっと泣いていたことを彼女に話すと、彼女は、そんなに涙が出て、お別れに時間がかかる位にここでの生活が充実していたということだから本当に良かったと私に言いました。それを聞いて私も本当にその通りだと感じました。
 語学力を伸ばせたことはもちろんですが、何よりもいろいろな国の友人たちとの出会いが私の考え方や価値観を変えさせてくれたし、毎日を充実したものにさせてくれました。さらに、ホームステイを通してスペインの生活習慣、文化を経験できたこと、家族の一員として多くの貴重な経験をさせてもらったことに関して本当に感謝の気持ちでいっぱいです。いつかまたスペインの家族に会いにパンプローナに遊びに行きます。帰国してからもスペイン語の学習は続けていきたいし世界中の友人たちとも交流を続けていきたいと思います。


大学近くのよく通っていたカフェはトルティーヤがとてもおいしくて大好きでした。

パンプローナで一番お気に入りだったTOKIO(東京)という名の日本食レストラン。他国からの留学生にも評判でした。

言語センターのスペイン語の先生と最初で最後の写真です。 優しくて元気な先生でした。