ナバラ州立大学 国際文化学科4年 磯部優佳 <5号 2019年5~6月>

 交換留学に行っていた他の学生は皆帰国していますが、私は2つの理由からまだスペインに残っています。1つ目は語学力の強化です。たった2か月、されど2か月。個人的にスペイン語のレッスンをお願いし、7月12日開催予定のDELE(スペイン語の公式テスト)まで毎日勉強を続けていました。そしてもう1つの理由は、7月7日から14日まで私の留学先のパンプローナ市で開催される「サンフェルミン祭り(牛追い祭り)」を見るためでした。

DELE B1レベルに挑戦

 "DELEスペイン語検定はスペイン教育・職業訓練省の下に、スペイン国外ではインスティトゥト・セルバンテスが実施する、高い信頼性をもったスペイン語の検定試験です。1988年にスペイン語を母国語としない人々のスペイン語能力を測るテストとしてはじまり、現在DELEは世界100カ国以上で実施されています。スペイン語圏への留学、就職などの際に語学のレベルを保証するものとして国際的に認められています。"(DELE公式ホームページより引用)
 このように、将来、スペイン語を活かした職業を目指すなら必須の資格になります。私は今回B1レベルの試験を受験するためにZaragoza(Aragón県の首都)へ行きました。本来ならばナバラ州の首都であるパンプローナでも行われるのですが、お祭りの最中で隣の州まで受けに行くことになってしまいました。試験内容は70分のリーディングテスト、40分のリスニングテスト、60分のライティングテスト、面接となっています。朝9時から始まりましたが、休憩を含め全てが終了したのは13時半頃でした。リーディングではまとまった長文読解や文法理解の問題などがあります。B1レベルになるとある程度は専門用語などが出てくるため、しっかりと対策をしておかないと厳しいです。リスニングは、会話文の内容はそこまで難しくはないのですが、私はスペインのスペイン語に慣れているのでメキシコ訛り、アルゼンチン訛りが出てくると苦戦しました。ライティングは60分の試験時間で、問1で100~200単語、問2で130~150単語のエッセイを書かなければならなかったので、時間がかなりギリギリでした。面接では面接官と決まったテーマで会話をするのですが、楽しんで会話できたと思います。リーディングとリスニングは練習通りで手応えがありましたが、全てのパートで合格点を超えていなければならないので、正直結果がどうなるかはわかりません。合否は9月に届くのでまだ先ですが、B2レベル合格を目指して帰国後も勉強を続けていこうと思います。

サンフェルミン祭り(牛追い祭り)

 パンプローナ市は25㎢、人口20万人に満たない小さな街ですが、サンフェルミン祭りが始まると景色が一転します。100万人以上が訪れ文字通りお祭り騒ぎです。牛追い、闘牛と有名なものはたくさんありますが、街中全員白い服に赤いスカーフと腰巻きを巻いているのがとても素敵でした。

Chupinazo(お祭りの始まり)
 7月6日正午、ついにお祭りの始まりです。パンプローナ市民は親族や友人たちと9時から朝食をとります。その内容が、お肉中心のナバラ州の特産品のChistorra(チストラ)というソーセージや目玉焼きなどで、一週間あるお祭りの体力をつけるために食べるそうです。朝ご飯を食べ終わったら皆旧市街に集まり開会宣言を待ちます。開会宣言まではスカーフを腕に巻いておき、開会の瞬間は全員がスカーフを頭上に掲げます。

Encierro(牛追い)
 やはり一番有名なイベントと言えば牛追いです。お祭りの期間中(7日~14日まで)毎日朝八時に開催されます。私はほとんどの日は家のテレビで生中継またはYouTubeで後から見ていましたが、10日に牛追いの終着点の闘牛場へ見に行きました。牛追いは元々は牛が過ごした場所から闘牛場まで牛を移動させるための手段でした。去勢されたおとなしい牛たちが先頭を切って、その後ろを闘牛に使われるかなり凶暴な牡牛たちが走ります。その群れの誘導のために、人間がいくつかのパートに分かれて牛の前を走ります。
 実際に見てみましたが、牛は体重500~600㎏とかなり大きく、約800mを2分半ほどで走るので、毎年多くのけが人や死者が出て大変危険です。18歳以上なら誰でも参加できますが酔っ払いが紛れ込まないようにチェックされます。闘牛場は7時ごろからコンサートで盛り上がり、8時に牛追い開始の花火を聞いてスクリーンの生中継を見ます。それから牛が入場すると拍手で称えます。パンプローナ市民は皆毎日の牛追いをチェックしており、住民から愛されているイベントだと感じました。

Vaquillas(子牛との一般人闘牛)
 毎日牛追いの後に闘牛場で開催されます。角にはボールを付けて刺さらないようにしてあり、成牛より体は小さいですが、正直見ていて一番怖かったのはこのイベントでした。牛追いと同じように誰でも入場できるのですが、子牛と言えども突進されて失神している人もいました。

Las corridas de toros(闘牛)
 私はホストファザーと8日に闘牛を見に行ったのですが、大雨により20年ぶりの中止で闘牛は実際に見ることができませんでした。闘牛は牛を挑発して怒らせて、槍を刺して、最後に剣でとどめをさして殺すというかなり残酷なものです。スペインや闘牛を行っている他のラテンアメリカでも反対の声が上がり、ディベートの議題にもなっています。ぜひこの目で見てみたかったので、残念でした。

Pobre de mí(直訳で「かわいそうな私」、閉会宣言)
 お祭りの最後日、日付が変わる時に皆が市庁舎の前に集まって、閉会宣言を見届けます。開会宣言の時と同様にスカーフを頭上に掲げ、宣言が終わると全員でキャンドルで照らされながら「Pobre de mi」を歌います。「お祭りが終わってしまう、かわいそうな私たち」と皆がお祭りとの別れを惜しみます。お祭りの中で一番美しい瞬間でした。

 他にも数えきれない程のイベントがあり、とても楽しむことができました。留学生活は後ほんの少しですが、悔いのないように楽しみたいと思います。


皆同じ服装です


チストラ

閉会宣言待ち。この綺麗な建物が市庁舎です。