ラップランド大学 国際文化学研究科国際文化学専攻2年 山本成美 <3号 2022年1~2月>

 「一月往ぬる二月逃げる三月去る」を体感する日々です。12月には日照時間が2時間ほどの日もありましたが、3月を迎えて10時間ほどにまでなり、陽の光が雪に反射してとても眩しいです。少しずつ春の気配を感じています。
 ここ2ヶ月間は留学期間中で最も忙しい日々を送っていたと思います。念願の学内での個人展示を開催しました!本当にほとんどの時間を展示準備のために費やしていたので、今回の報告は展示会の紹介のようになってしまいそうです。
 展示会の開催は留学前に立てた目標のうちのひとつでした。せっかくフィンランドで生活をしながら、デザインを学べるのだから何か、フィンランドと日本を絡めた作品を作りたいな、と考えていました。そこで「JAPAN MEETS FINLAND」と題して、日本の衣服文化をフィンランドの生活文化に応用することにしました。衣服文化として私がフォーカスしたのは着物にみられる直線断ちの技術です。直線断ちの衣服はほどいた後も再利用しやすく、制作の際にも余り布がほとんど出ない、とてもサステイナブルな技法であると感じました。特にモンペのようなパンツスタイルであっても、マチの部分を三角形や菱形の布を利用してその機能を持たせている点がとても新鮮で是非活用したいと思いました!

展示会のフライヤー

大学時代の友人がデザインしたフライヤー

 フィンランドの生活文化は、フィンランド人を対象にしたアンケートの結果から、ベリー狩り(森へ行くとき)の服装と、コテージでくつろぐ際の服装を考えることにしました。回答してくださったフィンランドの方の8割がサマーシーズンに森に5回以上は行き、さらに3割の方は11回以上も足を運んでいるという結果でした。文字通り、自然との距離が近いことがフィンランドの生活の特徴であると再認識しました。

写真1 展示全体

写真1 展示全体

 モンペを1点はじめに示し、ベリー狩りのための服を2点、バッグを2点、コテージウェアを2点、またその型紙やデザインした柄などを展示しました。コテージウェアにはプロジェクターを使用して柄を映しました。実は初めは布にプリントをしようと思っていたのですが、使用したい生地とプリント方法、インクとの兼ね合いで中々求めていたクオリティのものができあがりませんでした。そこで、代替案として服にプロジェクションする方法を思いつきました。しかし私には動画制作の経験がなく困っていたのですが、友人がさらに友達を巻き込んで、服の形にぴったり沿った動画データを作成してくれました。この方法をとったことで、いろいろな柄を提案することができ、自分ひとりでは絶対に出来上がらなかった展示となり、友人たちには心から感謝をしています。同時に、いろいろな才能を持った人たちと助け合って進めていくプロジェクトの楽しさを体験することもできました。展示会のはじまる日にオープニングを行ったのですが、たくさんの人が足を運んでくださり嬉しいコメントを残してくれました。反対に、うまく解釈してもらえていない部分など気づきもあったので、今後の展示の参考にしたいと思いました。

写真2 オープニングの日の様子

写真 2 オープニングの日の様子

写真3 ルームメイトが見にきてくれました

写真3 ルームメイトが見にきてくれました

 とはいえ、無事に展示会を迎えることができ、一安心しているところです。

 もちろん新しい授業も始まっており、どれも楽しく取り組んでいます。特に「Fashion Workshop」という授業は、ミラノ工科大学の学生とオンラインで交流をしながら3月末にあるロヴァニエミデザインウィークへの出展作品を制作するもので、他大学でファッションを学んでいる学生の仕事を見ることがとてもいい刺激になっています。3月21日から1週間、ロヴァニエミではデザインウィークが開催され、ファッションショーは最終日の夜にあるファイナルイベントです!たくさんの方に作品を見てもらえる機会なので、緊張と楽しみな気持ちを抱えて現在制作に励んでいます。
 すでに終了した授業の中では、フィンランド語の授業がとても楽しく学習することができました。私は秋学期にもフィンランド語を受講していたのですが、指導者が変わると内容ももちろん変わり、より理解が深まる部分や、新たな知識を蓄えることができました。将来、フィンランドと関わる仕事ができた際に、少しでもコミュニケーションの助けになるといいな...と密かに思いながら勉強しています。
 先月・先々月の貴重なリフレッシュタイムの写真がありました!フィンランド人の友人宅でのアットホームな雰囲気なパーティにお邪魔しました。なんと行ってみるとそこに以前授業でお世話になった先生がいらっしゃり、改めて先生と生徒との距離の近さを感じました。また、この写真はなんと湖の上で、彼が持ち上げている蓋の下には友人が開けたという穴があります。アバンダという、サウナの前後に入る天然の水風呂です。もちろん外の気温はマイナスの世界で、フィンランド人は何てクレイジーなのかと思いましたが、皆が入るわけではないようで、少し安心しました。この日は制作で疲れもあったので無茶はせず、穴を小さな斧で整える作業を手伝って、トライする友人を見送りました。もう少し気温が高くなれば挑戦するパワーが湧いてくるかもしれません...。

写真4天然の水風アバンダ

写真4 天然の水風呂"アバンダ"

 展示会が終わると次はファッションショー、しかし帰国も意識する時期に突入したため友人たちともたくさん時間を過ごしたい、フィンランドをエンジョイしたい、やるべきこととやりたいことが尽きません。世の中の情勢に不安を覚えることもありますが、限りある貴重な時間と経験に感謝しながら、残りの留学生活を過ごそうと思います。