はじめに
これからの1年間がどんな留学生活になるのだろうとワクワクしながら飛行機に乗り込んだ3月5日からあっという間に2か月が経ちました。3月から曲阜師範大学での留学生活が始まり、とても楽しく充実した毎日を過ごしています。このような充実した留学生活が実現できているのは、留学をさせてくれた両親、そして私を支え、応援してくれた沢山の方々のおかげで、感謝の気持ちでいっぱいです。
中国語の勉強を始めてまだ1年も経っていない状態でここに来て、中国語がほとんど分からず、喋れない私がどのような1年を過ごすのかをできるだけリアルにこの報告書に記していきます。

留学のきっかけと報告書の目的 ~なぜ今なのか、なぜ中国を選択したのか~
私の同期の多くはこの3月に大学を卒業して社会人になります。その同じ3月に私は卒業せずに中国へ1年留学に行くと決めました。「なんで今からなの?」「なんで中国なの?」留学に行くと決めてからいろいろな人に言われた言葉です。昨年の今頃は念願だったオーストラリア語学研修に参加をし、英語がもっと話せるようになりたいと意気込んでいました。しかし今私は中国にいます。私が1番驚いています。なぜ卒業せずに留学しようと決めたのかというと、大学3年次のあるインターンシップをきっかけに中国語が話せるようになりたいという気持ちが芽生えたからです。大学1年次での第2外国語選択では韓国語を選んだため、大学3年生までは韓国語の授業を履修していたのですが、このインターンシップを機に大学4年生から中国語の勉強を始めました。
曲阜師範大学に留学に行きたいと思ったのは、昨年の6月、曲阜師範大学から来た留学生のホームステイ受け入れをし、夏には海外語学・文化研修に参加して中国で約1か月過ごしたことがきっかけです。中国では英語が全く通じない、何を言っているのか分からない、話せない自分に悔しい思いをし、曲阜師範大学で出会った友達、先生と中国語で話せるようになりたいと感じました。それに加えてこんなにも日本に近くて関係が深い国なのに、知らないことが多すぎて毎日が驚きの連続でした。ニュースや教科書には載っていないリアルな中国をもっと知りたい、現地で学びたいと思い留学を決めました。また、テレビの中で見ていた中国とは全く異なることを知り、中国の文化や中国の魅力を私から発信をして沢山の人に伝えたいと思っています。ニュースだけで見る国のイメージだけではなく、この報告書で少しでも中国に興味を持ってもらったり、身近に感じてもらったり、これから留学を考えている方の励みになるような報告書になれば嬉しいです。
曲阜師範大学について
曲阜師範大学は、孔子の故郷である山東省の曲阜市にある曲阜キャンパスと日本語学科があり海辺の町にある日照キャンパスの2つのキャンパスで構成されています。12月に提出した入学申請表にキャンパス選択があり、日本語がある環境から少し離れて中国語をしっかり勉強したいと思い、曲阜キャンパスを志望し、曲阜市で生活をしています。よく田舎と言われる曲阜市ですが人は温かく、静かで勉強しやすいこの町の雰囲気が気に入っています。
初期費用
- VISA申請代(3,000円)
- 学校指定の海外保険(約130,000円)
- 飛行機・ホテル代(43,000円)
- 外国人体格検査(390元、約8,500円)
- 教科書代(800元、約16,000円)
- 在留届(400元、約8,800円)
- SIMカード(100元、約12,000円)
出国まで
中国、曲阜師範大学の交換留学派遣生募集は1次と2次があり、それぞれ6月と11月にあります。私は第2次の募集に応募して留学が決まりました。
ビザの申請
昨年留学されていた方に、申請手続きをするために現地の先生とWeChatで繋げてもらい、1月末にビザ申請に必要な「入学通知書」と「JW202 表(外国留学人員来華査証申請表)」をPDFで受け取りました。この通知書に中国に到着する日にちが記されており、今年は2月20日から25日の間に到着するようにと書かれていました。オンライン申請表に証明写真の貼り付けがありますが規定が厳しく、背景が白、前髪で額が隠れた写真は不可、白い服不可などと少しでも規定から外れると申請が通らないので注意が必要です。ビザの発行は中国領事館で行うことができ、住民票の場所によって行く領事館の地域が変わります。山口県は福岡の領事館で申請ができます。夏の語学研修の際は予約が必要でしたが現在はコロナによる水際対策もなくなり、予約制がなくなりました。この変更に加え、中国の春節により領事館が1週間ほど休館していることをビザの申請をしに行く直前に知りました。予約制がなくなったことで領事館に人が殺到しており、朝早くに行って行列に並びビザを取得しました。ビザの取得が計画通りにいかず、予定より1週間遅れての渡航になってしまいました。費用は3,000円で、夏の渡航で指紋採取が免除されました。
(必要な書類)
- オンライン申請書を全10ページ印刷したもの
- パスポートとそのコピー
- 過去の古いパスポート
- 入学通知書を印刷したもの
- JW202 表を印刷したもの
携帯について・アプリ(Alipay・WeChat)の登録
中国ではキャッシュレス化が進んでおり、現金で支払っている人を見かけません。買い物に行くのもご飯を食べに行くのも交通機関を使うのも携帯ひとつで完結します。そのぐらい携帯が重要なため、SIMフリーにした携帯と日本の電話番号のSIMのまま海外で使える楽天モバイルの携帯をサブに持ってきています。
アプリで主に使うのは「Alipay(支付宝)」と「WeChat pay(微信支付)」です。「Alipay」は中国の銀行口座がなくても日本のクレジットカードに紐づけて使用することができます。しかしこのクレジットカードの紐づけに夏の渡航の際に問題がありました。夏の語学研修では私が使用していた今までのクレジットカードでは支払う時に毎回エラーとなり「Alipay」が利用できず、大変困りました。一緒に行った他の学生が三井住友銀行のクレジットカードでの紐づけで「Alipay」の支払いに成功していたため、三井住友銀行のクレジットカードを新たに作り、紐づけてから来ました。「WeChat pay」は銀行口座を開設してからでないと使用できないため、開設するまで「Alipay」を使用しました。しっかり事前登録をし、アプリ内の身分証明まで日本で済ませておくことをお勧めします。
クレジットカード・デビットカードの発行・現金の換金
到着してから沢山の支払いがあると先輩方の報告書に書かれていたため、私は外資宅配サービスで30万円ほど換金をしました。中国では電子決済が主流でクレジットカードを使用している人をあまり見かけません。クレジットカードを使おうとしても信用のないカードとはじかれて使えませんでした。私は「Alipay」のクレジットカード紐づけのために三井住友銀行のクレジットカードを新たに作り、今のところそれしか使えていません。
過去の先輩方の報告書で、デビットカードを作っておくと大学内にある銀行で日本の通帳から直接中国の人民元で引き出すことができて便利ということだったので、三井住友銀行のデビットカードを作ろうとしました。しかし、なぜか三井住友銀行のデビットカードの発行が停止していたため、ゆうちょ銀行でデビットカードを作りました。実際に大学内の銀行で人民元を引き出すことができましたが、手数料が思った以上に高かったので本当に困ったときに使うお守り代わりとしてデビットカードを持っています。現在はクレジットカードに繋げて使っている「Alipay」と換金したお金を銀行口座に入れて使っている「WeChat pay」で支払いをしています。
証明写真
中国に到着して外国人体格検査に2枚、大学に2枚、運動会に出場するための学生カードを作成するために1枚提出しました。私は証明写真を持ってきていたのでその写真を使用しました。大学の近くに印刷できるお店があるので携帯にデータを入れておくと安心です。
VPNの登録
中国のインターネットは規制が厳しく、日本で普段使っているLINEやX、InstagramなどのSNSのアプリ、Google、YouTubeなどが使用できません。私は、「かべネコVPN」というところで契約をし、携帯とパソコンに日本で契約をして渡航しました。今のところ問題なく使えています。
航空券の予約
大学の先生から済南空港に迎えに来てくださると連絡がありました。福岡国際空港から直行便がなく、ちょうどよい時間もなかったため、3月5日に福岡国際空港から上海浦東空港へ行き、上海で一泊して翌日6日に済南空港へ行きました。「Trip.com」というアプリで手数料が掛かりますが、日本のクレジットカードで購入ができるため、ここから航空券とホテルの予約をしました。受諾荷物の重さが23キロ以内のものが2つまで無料だったため中国東方航空という航空会社を利用しました。
到着後
SIMカードの購入
到着翌日に大学の先生に引率してもらい、大学近くの「中国移動」というお店で購入しました。iPhoneを貸してと言われたので渡すとすぐにSIM ピンを使って中国のSIMカードを入れてもらえました。パスポートが必要で、顔認証などをしながら100元を払いました。お店の人はとても優しく、自由に仕事をしながらご飯を食べている人もいてコントを見ているようでした。
また、中国でしかダウンロードできないアプリがあり、そのアプリをいくつか使いたかったのでApple Storeで日本から中国の地域変更を行いました。その際にサブスクリプションの契約解除をしないと変更ができませんでした。少し面倒ですが中国に来たからには使ってみたいアプリがいくつかあったため地域変更をして使っています。
外国人体格検査・在留届
中国に半年以上留学する場合に必要な検査です。採血などがある検査で、日本でこの検査を受けていこうと曲阜師範大学の先生にWeChatで連絡をしたのですが、日本で受ける必要はないと言われたので日本では受けていきませんでした。到着して1週間ほど経ってから隣の済寧市にある病院に連れて行ってもらい受診しました。受診した感想は朝から沢山の人と一緒に受付をして検査をしましたが、みんなせかせかしており、30分ほどの驚きの速さで終わりました。費用は390元(8500円)で証明写真が2枚必要でした。
そして、外国人体格検査の後にそのまま在留届の手続きに連れて行ってもらいました。
VISAが発行されても1年そのまま使えるわけではなく、1年利用できるように再度手続きをしなければなりません。その場で証明写真を撮り、パスポートを数日間提出しました。ここで400元ほど払いました。
銀行口座の開設
到着してから1週間ほど「Alipay」を使って支払いをしていましたが、クレジットカードで紐づけている「Alipay」では支払いができない店がいくつかあり、困ったため留学生についてきてもらい大学内にある中国建設銀行で銀行口座の開設をしました。日本と違い通帳はもらえずキャッシュカードだけ渡されました。
(開設するために必要だったもの)
- マイナンバーカードの番号(カード自体は必要なし)
- パスポート
- 入学通知書を印刷したもの
- 中国の電話番号
国際教育学院~授業・寮について~

授業
授業は宿舎内にある教室で留学生のみで行われます。ロシアやタイからきた学生と一緒に授業を受けています。基本的に月曜日から金曜日の午前8時から12時まであり、1日2科目の授業で1時間ごとに10分の休憩があります。今学期のクラスは初級と上級のみが開講されており、初級の授業を履修しています。授業は「综合(総合)」、「口语(スピーキング)」、「听力(リスニング)」、「阅读(読解)」、「HSK初級」、「中国文化体験」の6つです。学生の数もそこまで多くないため、先生と学生の距離が近く、分からないときはすぐに質問ができます。教科書の内容が濃く、実際の生活に使う単語や文法が身についているように感じます。
授業で分からないときは英語を使って質問や説明をするので、英語が好きになって中国に来て良かったと思うことがよくあります。宿題はそこまで多くないため、持ってきた中国語の教科書や自分で「淘宝」という中国のネットショッピングで購入したHSKの教科書でも学習しています。
留学生寮
寮は留学生専用の宿舎で毎年山口県立大学の学生が使用している部屋を同じ県立大学から来た学生と2人で1部屋を使用しています。ドライヤーや料理器具などをはじめ、残してくださったものが多くあり、生活にとても役立っています。中国では全員寮生活で大学内に寮があり5、6人で1部屋を使うので、中国人の友達に2人で1部屋使っていると話すととても羨ましがられます。留学生の寮では廊下に出ると大きな音で音楽が聞こえてきたり、ギターの演奏が聞こえてきたりととても愉快な人が多く、楽しく生活しています。それぞれがここで中国語を学ぶ理由や目的は様々で、毎日が異文化交流、異文化理解の連続で、刺激的な毎日です。


日常生活について
授業以外に中国語を話す機会を作るために人とのつながりを作ろうとしてみたり、大学で開催された運動会に出場してみたりと様々な新しいことに挑戦してみました。例えば、夏に日照キャンパスでバドミントンをした時にお世話になった先生に連絡をして、曲阜キャンパスのバドミントンをする中国人の学生を紹介してもらい、バドミントンを一緒にしたり夜ご飯に連れて行ってもらったりしました。この友達の繋がりで日本に就職をされたお兄さんが青島にいるということで青島に遊びに行き、そのお兄さんに案内をしてもらいした。次は日本で会って私が山口県を案内すると約束をしました。他にも留学生の中でご飯や遊びに誘われたらできるだけ行くようにしています。まだ言いたいことが出てこないことが多くて悔しいことの連続ですが、町や食堂であなたの中国語上手だねと気軽に話しかけられる場面も少しずつ増えてきました。


放課後いつも一緒に走っています
とても優しい中国人の方に出会えていますが、その反面に「WeChat」で私の名前を胸が苦しくなるような名前にされているのを目にしたり、「日本の中国侵略戦争を学校で学んだのか」と沢山そのことについて質問されたりと少し心が苦しいなと思う経験もしました。中国と日本の歴史についてもっと詳しく知っておく必要があると改めて感じました。とても難しい問題ですが様々な価値観、考えを持っている人がいるので、我慢しすぎないで私が楽しいと思うことを選択するように心がけています。
運動会
運動会は授業もなくなり2日間にわたって行われる予想以上に大きな運動会でした。国際教育学院から同じ800m走に出場する留学生に毎朝6時から走ろうと誘われ、この日から運動会に向けて朝練が始まりました。その数日後から運動会に出場する選手は放課後にトレーニングをすると連絡があり、運動会の2週間前から毎日運動場でのトレーニングも始まりました。曲阜師範大学の体育学科で将来先生を目指している学生が毎日トレーニングの先生をしてくれ、もちろん中国語での指導なので、何周走れ!ぐらいしか聞き取れず困ることが多かったですが、中国語でのトレーニング指導がとても新鮮でした。このトレーニングには留学生のみで行われ、私たちが住んでいる寮にはいないタイやベトナム、モンゴルなどからきた留学生との繋がりもでき、みんなで励まし合いながらの毎日の練習はとても楽しかったです。決勝にはタイムで残ることができませんでしたが、1レース目で不安と緊張の中、1位で走りきることができたので良かったです。日本で言う「位置について」が「各就各位」だったり、運動会の練習中に声をかけられて中国人の友達ができたりと新鮮な体験ばかりで、朝練をはじめ毎日の練習も最後までやり切ることができた達成感のある2週間になりました。運動会に出場したことで中国人とも他の国からきている留学生とも沢山の人との繋がりができました。運動会は終わりましたが、この繋がりから陸上部に参加させてもらい、よく放課後に走っています。



休日の過ごし方
休日は中国でまだ見たことがない景色や行ったことがない町を見てみたいと思い、よく出かけることが多いです。来てまだ2か月ですが、行ってみたかった場所である西安と青島に行き、済南ではずっと会いたかった中国のパンダに会えました。「キングダム」の聖地である西安では、中国に来たからには絶対に行きたかった兵馬俑に行きました。また、ずっと着てみたかった汉服を着て西安の大唐不夜城で撮影をしてもらいました。青島は他に行ったことのある中国の町とガラッと違う雰囲気で驚きました。少し歩くだけ、少し移動するだけでまるっきり景色が変わってくる為、中国の経済発展で色々な問題があったからこそこのような景色が生まれたのかなと歴史そのものを感じました。この目で実際に見てみたい場所、中国でやってみたいことがまだまだ沢山あるので次は何をしようかとワクワクしています。




くしゃみと鼻水が止まらない毎日
春の花が散り、木々が緑に変化したと同時に4月頃から外では沢山の綿毛が飛ぶようになりました。私は花粉症を持っていますが、中国には日本でよくあるスギやヒノキがほぼないので花粉症から解放されると喜んでいましたが、この綿毛に悪戦苦闘しています。花粉とは違って目に見える大きさの綿毛が外で舞っているのです。このプラタナスという綿毛ですが目に入るとかなり痛いので、外に出るときは帽子とサングラスとマスクをつけて外出しています。日本から持ってきていた2種類の鼻炎アレルギーの薬を毎日飲んでいたのですが効果がなく、それに加えてたまたま運動会の時期にこの綿毛が飛んでおりマスクを外してしまうので、この綿毛には大変悩まされました。日本の花粉症から解放されても綿毛に苦しめられるとは...。どこの国にも当地なりのアレルギーがあるようです。
今後の抱負
毎日「中国語をもっと話すことができたらなあ」と歯がゆい思いをしています。しかしその分、持ち前の明るさと行動力を活かしてこの2か月たくさんの人に声をかけてみたり、いろいろなことをやってみたいと思いきって行動してみたりしたお陰で、多くの出会いと新しい経験に日々感化されながら生活できています。特に体を動かすことが大好きなので、様々なスポーツを通して繋がったご縁に嬉しく思います。この人達との繋がりを大切にして言語の学習はもちろんのこと、留学中に中国でやりたいことがまだまだ沢山あるので色々なことに挑戦していきます。いつも支えてくれる多くの人に感謝をして、次回もよい報告ができるように毎日の生活を楽しんでいこうと思います。