曲阜師範大学(2018年度交換留学生)国際文化学専攻2年 中村光里 <最終号>


関連ワードで検索する

ごあいさつ

 長いようで早かった、約10か月間の留学生活を終え、今は久しぶりに日本での生活を楽しんでいます。帰国し、空港に到着して見慣れた日本の景色を見たとき、「今までの留学生活は夢だったのかな。」と思ってしまうくらいに中国での暮らしが遠いものとなってしまったような気がして、帰国できた安心感がある反面、とても寂しい気持ちになりました。

帰国前にやっていたこと

 南京旅行の後、期末試験・HSK(中国語能力試験)5級の受験・帰国のための荷物整理と部屋の掃除が迫っていてとても忙しかったです。特にHSKは期末試験の翌日に高鉄に乗って済南大学まで受験しに行かなければならず、朝出発して夜帰って来るというハードなものでした。加えて友人たちから最後のお食事ということで一緒に昼食や夕食に行っていると、荷物整理もなかなか進まず、睡眠不足になっていました。持って帰る荷物と次に来る日本人交換留学生のために残しておく荷物と分け、簡単に部屋の掃除をしました。初めて留学に来たときにかつての先輩留学生がとても実用的な生活用品を置いて行ってくれていたことに感動したので、今回は私が荷物を残していく側になることができ、少し嬉しいです。帰国前に友人たちからたくさんの手紙や贈り物ももらいました。どれも大切な宝物です。

濃霧の朝

 帰国日、宿舎を出発したのは霧の濃い、午前6時の朝でした。外に出ると見渡す限り霧で、本当に2~3メートル先は全く見えない状態でした。これは自然現象ではなく、工場から出た汚染物質が空気の乾燥によって空気中に漂ってできる現象で、冬によく見られる光景です。中国の天気予報には空気汚染度の項目もあり、出発日は「重度汚染」という最も良くない空気だったようです。元々バスに乗って駅まで行き、8時台の高鉄に乗ろうと考えていたのですが、荷物があまりにも重すぎて大学を出ただけで疲れ切ってしまったので、タクシーを呼び、駅へ向かいました。スマートフォンのアプリケーション「摘出行」というシステムを利用すると、すぐにタクシーを呼べて、予約も可能です。駅まで送ってくれたタクシー運転手の男性は私が日本人だと分かると、「僕の家族・親戚・友人みんなが日本関係の仕事をしてたり、留学したりしてるんだ!僕自身も日本が大好きなんだよ。まさかこんなところで日本人に会えるなんて嬉しいよ!」と声をかけてくれました。その後も自分の子供たちが日本へ仕事に行っていることや、20年以上前に日本へ奥さんと一緒に旅行したことなどをとても楽しそうに話してくれたため、霧でゆっくり運転しなければならない状況下でも、とても楽しい移動になりました。しかも、料金を少し安くしてくださり、荷物も途中まで運んでくれました。中国のタクシー運転手は気に入ったお客さんには自分の名刺を渡して、次のタクシーを使うときにまた同じ人を呼べるようにしてくれます。空港へ出発する日に初めてこういった名刺をもらうことができ、とても感動しました。

第2回 空港での大失敗

 帰国の飛行機は上海浦東国際空港の便を利用しました。ホテルの利用が面倒だったことと、午前中の出発なので朝時間に余裕を持ってチェックインしたかったことが理由で、出発の前日に空港に着き、再び空港で夜を過ごすことを計画しました。上海での航空便はほぼ24時間運航しており、室内も24時間開放されていて、夜椅子に座って休憩しながら朝を待つことができるので、以前のように空港の外で待機することはありません。
 事前にインターネットで上海の高鉄駅から空港までの交通機関と空港の営業時間を調べ、以上の計画を立てることができたことと、今回利用する便は直行便で荷物を一度預けるということもないため、前回のような失敗は避けられるだろうと安心していましたが、またたくさん失敗をしてしまいました。
 まず、駅から空港まで地下鉄を利用して移動したときのことです。地下鉄の切符料金は8元(約146円)ととても安いのですが、空港方面に乗り換えをする辺りから、人がとても増え、電車内が満員になり、荷物を入れていた大きなかばんがボロボロになり、付けていたキーホルダーがいつの間にか取れ、1か所小さな穴が開いてしまっていました。重い荷物を持っての移動ということもあって、とても疲れました。地下鉄を利用したことに後悔はありませんが、もしもっと快適に移動したいならば、30元(約510円)の空港直行バスを利用することをおすすめします。荷物は専用の場所に積んでくれますし、座席も必ず確保できます。
 次に空港に着いて夜を明かし、チェックインの時間帯になったとき、荷物が制限の重さを越えてしまい、300元(約5,100円)を払って預けなければなりませんでした。現金での支払いは可能だったかどうか覚えていないのですが、私は中国の銀行の支付宝という電子マネーを管理するアプリケーションを利用しましたが、残高が足りていて本当に良かったです。もしも荷物の重さが心配だった場合、事前に国際郵便で荷物を送っておくか、少し多めにお金を携帯する必要があります。
 早くに着いていたため、トラブルが多少あっても時間に余裕を持って搭乗手続きができ、無事に帰国することができました。

帰国後の心配事

 私は留学中から、帰国後について少し心配していることがありました。それは、帰国後に留学で培ってきた中国語をあまり使う機会が無くなり、どんどん忘れていってしまうのではないかということです。授業担当の先生にそのことを何気なく相談すると、親身になってアドバイスをしてくれ、それを参考に対策を考えました。それは、①中国語のラジオを聴くこと(リスニング)、②電話やチャットで中国の友人とこまめに連絡をとること(スピーキングとライティング)、③HSK6級や中国語検定2級以上の資格取得を目標に勉強すること、の3つです。特にラジオはとても便利で、何かをしているときに流しているだけでも効果があるのでよくかけています。「ヒマラヤ」というアプリケーションをダウンロードして使用していますが、これは公式のラジオ番組だけでなく、一般の方の趣味のラジオ放送やすでに放送されているものをまとめて聴くことができるのでたくさんのジャンルから幅広く選択できます。

新しい目標

 留学を通して新しい目標もできました。それは、資格習得を目指すことと、就職活動についてです。私は現在受験したHSK5級の試験結果を待っていますが、最終的には6級まで合格したいと思っています。また、中国語検定も4級しか持っていないので、2級以上に挑戦しようと考えています。就職については、曖昧だった就職活動の方向性が少し定まったように思います。元々研究者を目指して大学院に入学しましたが、金銭不足や研究不足を心配に思い、卒業後、一度仕事に就きながら研究活動をして、学費を支払えるようになったら博士課程を受験しようと考えていました。しかし、いざどこへ就職しようと考えると、なかなか方向性が見出せず、悩んでいました。しかし、中国でたくさんの人に助けられたことで、私も日本でもし困っている中国の方がいたら助けたいと思うようになり、彼らをサポートできかつ中国語を生かすことのできる就職先として、警察行政職員(通訳者)を目指すことを第一志望に定めることができました。現在、試験対策と論文執筆を両立して頑張っています。彼らをサポートすることで、日本と中国の関係をさらに友好的にしていく小さな手助けになれたらと思っています。

おわりに

 誰しも、新しい土地で、日本語が通じない場所で長期間過ごすことにとても不安を覚えると思いますし、そこでどれだけのことが得られるのかと焦るとも思います。私はどちらの心配も重く感じていました。しかし、実際過ごしてみて、中国語が話せない、人見知りの激しい私でも、たくさんの出会いと新しい目標を発見できるのだと、とても幸せに感じています。これも、私に留学への背中を押してくれた家族・先生方・友人たち、現地でサポートしてくれた先生方、中国の友人たち、同じ留学生のクラスメイトたちのおかげです。助けてくれた方々のためにも、留学で得たスキルと忍耐強さを持って、これからの人生に生かしたいと思います。