曲阜師範大学(2018年度交換留学生)国際文化学専攻2年 中村光里<1号 2018年3~4月>


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ごあいさつ

 3月より曲阜師範大学での交換留学生活が始まり、早くも2か月が経ちました。新しい部屋、新しい大学、新しい授業、新しい友人...新しいものばかりに囲まれ、それにようやく慣れてきたと思うようになってきた頃です。
 このような留学生生活を実現できているのは、沢山の方々からの支援・協力のおかげです。留学をするということは、周囲に自分がどれだけ支えられているのかを再認識させられる貴重な機会になるのだと考えるようになりました。本当にありがとうございます。

自己紹介と報告のねらい

 大学院へ進学した後、中国文化に触れたい、中国語を現地で学びたい、中国の人たちと交流したいといった気持ちが更に強まり、交換留学を希望しました。交換留学は学部生が主で、大学院生はあまり例がないため、私が派遣される学生の中で一番年上でした。
 今回は、①大学院生としての視点を交えること ②曲阜師範大学への留学に興味がある方や留学準備を控えている方の助けになれるような情報を掲載することを主なテーマにしようと考えています。留学前の私は「留学のために何をしていいか分からない。」「留学をしたいけど漠然としていて不安になる。」といった悩みを抱えていたため、ある意味これは過去の私へのアドバイスとして書いているのかもしれません。

事前準備~留学すると決めたら 早く準備してしまおう! 今すぐに!~

 まずは留学をするために済ませなければならない準備について紹介します。いつも行動がギリギリかつ、準備のための情報収集を怠っていた私はこの段階で苦労の連続でした。自業自得なのですが。

基本的な手続き編

パスポートの確認
 パスポートを持っていることは必須ですが、パスポートの有効期限が帰国するまで一定以上残っているのか確認しなければなりません。期限に余裕がなければ真っ先に役所へ行って申請してください。

ビザの発行
 ビザ申請のために必要な「入学許可証」と「ビザ申請願い」という2枚の書類が曲阜師範大学から届いたのは1月の初め頃でした(渡航まであと2か月もない頃)。すぐに申請をしたかったのですが、最初どこで申請していいのか分からず、途方に暮れていました。しかし、ありがたいことに先生からのアドバイスをもらい、その結果、福岡のビザ代理業者に電話したところ、県大生がよく利用しているため、円滑に対応してくれました。必要書類の記入や配達を含め、遅くとも2週間もあればビザが届きます。記入の際に分からないことは代理業者に電話すれば丁寧に教えてくれます。また、2枚の書類に加え、指定サイズの証明写真が必要なため、写真店に撮影の条件を伝え、撮ってもらうと確実に正確なものが手に入ります。2月半ばになると春節で領事館が休みになり、ビザが届くのが遅くなるため、身体検査の書類が欲しい人は申請書をもらったらすぐに電話することを強くオススメします。費用は約8,000円です。

外国人体格検査
 ビザ発行後、日本の国立・公立病院や日中友好病院または中国の病院で行わなければならない検査です。血液検査や検尿、体格測定や心電図などを行い、書類を作ってもらい、それを留学先の先生に渡します。ビザを速やかに発行でき、時間に余裕があれば国内の病院で済ませてしまいましょう。
 曲阜に着いてからも早い段階で先生と一緒に行き、診断を受けることができます。しかし大体の留学生が渡航前に済ませていますし、まだ生活に慣れない時だと少し大変になってしまうかもしれないので、ビザを早く取ってしまって日本の病院で診断してもらうことをオススメします。また、身体検査は平日に行くため、その日の授業に参加できなくなってしまいます。私は曲阜で書類を作ったため、授業に参加できず、少し焦りを感じてしまいました。

在留届
 ビザが発行されても、1年ずっとそのまま使えるわけではなく、3か月以内に1年利用できるように再手続きをしなければなりません。私はこれも曲阜に来てから先生と一緒に行いました。国内でできるかどうかは詳しくは分からないのですが、もしできれば終わらせておきましょう。在留届についての相談についても、代理業者が回答してくれます。

NEOカードの作成や現金の換金
 曲阜師範大学へ着くと、すぐにお金が必要になります。Wi-Fiの利用料金(100元だが、ルームメイトがいる場合は折半して50元)、半年分の宿舎費用(約3,000元)、教科書代(200~300元くらい)は必ず払わなければなりません。これに加え、足りない生活用品や食事に使うお金を考慮して多めに持って行く方がいいでしょう。
 現金についてですが、すでに留学費用すべてを用意できる人は一気に日本で1年分のお金を換金して持っていくと楽です。それができなさそう、大金を持って行くのが怖い、用意できているけど現金だけじゃ不安だという方はNEOカードを発行することをオススメします。NEOカードとは、VISAカード対応のATMに日本円を入れることができ、それを中国のVISAカード対応ATMで使うと元に換金されて出てきます。大学付近には少なくとも2か所ほどあるので利用してもいいかもしれません。また、このカードは申請すれば家族も利用でき、日本から日本の銀行を通して入金してもらうこともできます。何か緊急でお金が足りなくなった時、家族に頼んで入金してもらうのも手です。ちなみに私は約半年分の元とNEOカードを持って行きました。NEOカードは近くのショッピングモールなどにあるお店で発行してもらうことができます。インターネットで利用できる場所を調べて近くの場所に行くといいでしょう。場所によっては即日発行もできます。家族も入金可能にするためにはカード発行後、簡単な書類を記入し、郵便で送らなければなりません。約1週間で利用できるようになります。本人はカードが発行された当日から利用可能です。
 ただ、NEOカードを中国で使ったところ、機械が壊れてカードも壊れたという経験をした留学生が過去2人ほどいたため、現金に重点を置いておいた方が少しいいかもしれません。

できればやっておいてもいいかもしれないこと
 中国では日本の携帯をそのまま利用できません。電話は国際電話扱いになるため、高額な料金がかかります。インターネットはWi-Fiの中ならできますが、規制されているGoogleやYahooは利用できません。また、SNSのLINEやTwitterもできません。LINEのような連絡手段を利用する場合はwechat(微信)というアプリをインストールしてください。家族や日本の友人と連絡がとれるだけでなく、中国人や留学生の友人ができたら基本的にwechatで連絡を取り合うようになります。中国で色んな人と交流するためにはかなり大切なアイテムです。
 日本にいる間に携帯電話会社に行って海外仕様にしてもらうといいかもしれません。また、中国へ着いた後、大学内に携帯の店があるので、そこで新しい電話番号を発行してもらい、Wi-Fiがなくても中国で携帯を利用できるようにしたり、新しく中国の携帯を買って2台持ちしたりするなどすると生活がとても楽になります。
 また、どうしても規制されているアプリケーションを利用したい場合はVPNという機能を使うと利用できます。携帯やパソコン内にVPNという機能が必ず入っていて、そこに指定のパスワードを入力すると接続でき、規制されているものも利用可能になります。パソコンから有料で登録してできるものもあれば、アプリケーションをインストールして無料でできるものまで様々です。私もこれを用いて普段はYouTubeやGoogleを利用できています。

準備しておきたい荷物編

・パソコン(大学との連絡手段として必須です)
・携帯(家族・友人・先生との連絡手段として必須です)
・電子辞書(紙辞書もいいけど荷物になるためやめました)
・デジカメと32GBのSDカード2枚(沢山写真を撮り、利用したいため準備)
・日本の問題集(特にHSK、基礎的な問題集は日本語の解説があるため携帯しました)
・薬(頭痛・生理痛対策)
・蚊とり製品(私が持って行き忘れ、後悔しているものです。曲阜は暖かくなると蚊がよく出てくるため、持っておきたいところでした。)
・だしの素(日本料理が恋しくなり、自炊したくなった時に重宝します。ちなみにマヨネーズもあまり売られていません。)
・マスキングテープ(壁に紙を貼る時に便利です)
・はき慣れた運動靴とスニーカー(私はクロックス1足で中国に来ていたため、周囲から笑われてしまいました。中国の道路はあまり綺麗ではないので、スニーカーが必要そうです。わざわざこちらで買ってお金を浪費するよりも、少し頑張ってはき慣れたものを持っていく方がいいように感じています。また、大学内にはスポーツをするための沢山の場所があり、気軽に運動ができます。交流にもつながるため、運動靴も用意しておくと尚いいかもしれません。)

 私の場合、最低限、以上のものが揃っていれば、そこまでの苦労はないように感じました。大学周辺には沢山のスーパーがあり、学生のための生活用品が揃っていますし、「淘宝」というネットショッピングを利用して周辺で売られていないものを入手することもできます。更に、以前留学をしていた県大生の方が生活用品を残してくれたため、沢山の買い物をしなくて済みました。本当に感謝してもし尽くせません。次の学生のために帰国の際に、宿舎に残していく生活用品のリストを作成するつもりなので、参考になれば幸いです。

私より先に留学していた県大生が残してくれた生活用品。とても助かっています!

留学生活の紹介

授業について
 授業は宿舎内にある教室で行われます。午前8時~正午12時まで50分×4コマ(1日2科目×2コマ)を月~金に行います。クラスは上級(A班)・中級(B班)・初級(C班)の3つに分かれており、使う教材のシリーズは同じですが、難易度が異なります。現在私は中級クラスで中級(Ⅰ)という教材を使って勉強しています。このクラス分けは最初に行われる実力テストの点数によって決まります。去年まではあくまでこのテストは目安であり、個人の意思でクラスを決めることができましたが、今年は日照キャンパスに留学するはずだった学生たちも加わり、人数が増えたため、よりテストの結果が参考にされているようです。

中級クラスの教室

授業で使っている教科書

教科書の内容/写真内の教科書は総合


 中級クラスの授業内容は、「综合(総合/高敏先生)」、「口语(スピーキング/张金圈先生)」、「听力(リスニング/王晓先生)」、「阅读(読解/王晓先生)」「写作(作文/高敏先生)」「文化体验(文化体験/辛彤彤先生)」の6つです。うち文化体験は大学院生が授業をしています。授業のレベルは、私が国際文化学科1年生の時に受講した中国語Ⅰ・Ⅱの次のステップにあたるレベルの内容であり、少し難しく感じています。授業のペースは私たちのペースに先生たちが合わせ、比較的ゆっくりと進めてくれます。最初の頃は全く先生の話している内容が聞き取れず、授業についていくのに必死でしたが、最近ようやく少しずつ聞き取れるようになってきました。宿題はそこまで多くはなく、自主学習をする余裕があるため、私の場合は宿題を終わらせた後、翌日の授業の予習をしたり、教科書以外の教材を使って勉強したりしています。学部の頃に使っていた教科書に比べ、現地の教材は内容が濃く、沢山の文法や単語を身につけることができます。

基礎力がまだ足りていないと思い、中級Ⅰの1段階下の初級Ⅱを購入し、授業とは別に勉強しています

宿舎について
 宿舎は屋上付き4階建てで、私たちの部屋だけでなく、トレーニングルーム、卓球室、4つの教室、各階に台所が1室ずつなどあり、留学生は自由に各部屋を利用しています。また、1階には私たちのお世話をしてくれる先生の事務室があり、何か困ったことがあった時はその先生に相談すると、親身に対応してくれます。

私が生活している3階の廊下

キッチンには冷蔵庫もあります


 1階には共用の洗濯機があり、1元硬貨2枚を使って衣服を洗うことができますが、服を入れすぎると脱水に失敗し、もう2元使って脱水をやり直すことになるため、入れる量を調節しなければなりません。また、乾燥機が無いため、各自屋上にある物干しを使って干したり、部屋干ししたりします。
 留学生の各部屋には水洗トイレ、シャワー、エアコン、テレビ、暖房器具が完備され、快適に過ごすことができます。しかし、時折ハエがよくどこからか湧いてくるので、そのたびに駆除しています。ルームメイトは、先生たちの意向により、基本的に同じ国の人同士かつ同じ期間を過ごす人同士の2人部屋です。しかし私の場合は、今年日本人が私1人しか来なかったため、同じ時期にやって来たロシア人の女の子と一緒に生活することになりました。ここでのロシア人学生は留学してから中国語を学び始めるため、まだあまり中国語を話すことができません。そのため最初の頃は、英語でコミュニケーションをとっていました。最近は少しずつお互いに中国語を使うようにし、分からない部分は英語でカバーするような形になってきました。ルームメイトの彼女は美人で優しく、とても元気な子なので、一緒に生活していてもあまりストレスを感じません。

私たちの部屋。中間試験直後で、すごく散らかっています。


留学生たちについて
 現在、大学内には、日本人は私と曲阜師範大学の大学院生として在籍している先輩の2人しかいません。ここには様々な国から勉強しにきている留学生たちが暮らしています。韓国・ロシア・タジキスタン・カナダ・メキシコ・イタリア・ケニアなど様々です。みんな友好的な人ばかりで、内気で恥ずかしがり屋な私にさえも優しく接してくれます。そのため、今は気軽に誰とでも話したり、ご飯を食べに行ったり、ふざけ合って遊んだりできるようになってきました。また、お互いに中国語を教えあったり、故郷の写真を見せあったり、美味しいごはんのあるお店を紹介したりなど生活や勉強の情報交換をして協力しあっています。
 そして最近になって政治の話もするようになってきました。歴史に対する考え方や、日本の政治がどう見られているのかを直に知ることができる貴重な時間を過ごしています。

3月8日の妇女节/国際婦人デーに宿舎の男性たちが開いてくれたパーティーの様子です。


私の日常
 「私の1日」というテーマをここでは設けようと思いましたが、これまでの毎日があまりに不規則であったため、普段どのように生活をしているのかについて簡単に紹介します。まず、平日は大体朝7時くらいに起き、授業の準備をします。8時から12時までの授業に出席し、授業が終わるとすぐに昼食へ向かいます。基本的にはいつも外食しています。1人で行く時もあれば、日本人の先輩と2人で出かけたり、中国人や他の留学生たちとご飯を食べたりと様々です。13時半くらいに宿舎へ戻り、宿題を済ませると、昼寝をしたり授業の予習や教科書以外の教材を使った中国語の勉強をしたりします。そして18時半くらいに夕食に出かけ、19時半くらいに再び宿舎に戻り、勉強や部屋の掃除、シャワーなどを済ませて23時半くらいに就寝します。
 最近では日本人の先輩の紹介で、中国人の大学院生たちとよく遊んだり一緒に勉強したりするようになってきました。中には日本語を学びたいという方もいたため、お互いに語学を教えあっています。平日は大学院生の宿舎へ遊びに行き、勉強をし、週末は少し遠いところへショッピングに行ったり、カラオケに行ったりと一緒に遊びに行くことが増えてきました。
 大学院生たちだけでなく、学科生や先生たち、そしてお店の店員さんとの交流も増えてきました。特になぜか私の周りには少数民族の友人が多いです。苗族、満族、モンゴル族、回教(イスラーム教)の方等々...。理由は謎です。しかし、彼らは言葉がまだほとんど通じていない私に優しく言葉をかけ、大学内の紹介をしてくれたり、自身の民族の文化を紹介してくれたり、同じ民族の人が経営している飲食店に連れて行ってくれたりととても親切です。

大学院生たち・韓国人留学生たちとカラオケで

苗族の学科生と

満族の学科生と


大学付近にあるモンゴル族のお店にてミルクティーと揚げパン

旅行(曲阜市の孔廟と孔府・安徽省)

 4月は曲阜周辺を散策したり、省をまたいで旅行したりと外出が多い月でした。しかし、それによって現地の人や留学生たちと会話をする時間が多かったため、リスニングとスピーキングが少し成長したような気がします。また、大学院生としての研究活動のためのヒントが沢山見つかった月でもありました。

孔廟と孔府
 中国では清明节という、子孫がご先祖様に挨拶をしに行くという行事があり、4月5・6・7日が3連休になっています。私はこの3連休を利用して、大学から徒歩で30分ほどの場所にある孔廟(孔子の魂が祀られている場所)とそれに隣接している孔府(孔子の一族が生活していた住居のある場所)へ足を運びました。現在、私は孔子が今どのように中国でピックアップされているのかについて研究をしているため、孔廟は必ず行っておきたい場所でもありました。何回も見学する予定のため、まずは敷地内の構図を把握しておきたいと考え、連休を利用して沢山の観光客が来ている中、私は途中までそこに混ざり、ツアーガイドさんたちの解説を転々と聞きながら廟内を見学し、後半は自由に見て回りました。中国・日本人の習慣として共通していることは、神様(に値する何か)に「~になりますように」とお願いをすることだと考えるようになりました。まず廟の前で手を合わせ、頭を地につけて孔子を拝み、線香をお供えし、更に廟内にある孔子像付近にあるお賽銭入れにお金を入れ、将来の泰安を祈願します。廟の脇には日本の絵馬のように板に願い事を書いて吊るす場所がありました。
 また、敷地内には孔子の一族を記録した石碑とその解説板が設置されていて、そこで参拝者たちが自分たちの姓があるかどうかを確認していました。彼らはただの観光ではなく、孔子の子孫として、先祖である孔子へ挨拶に来ていたのか、それを聞くことを次の課題にします。

孔廟

絵馬と少女

孔子一族の家系図が書かれた石碑


安徽省
 4月半ばに、先生方が引率し、留学生たちで5日間安徽省へ行く機会がありました。先生方が一緒なので安全かつ比較的安く旅行できました(宿泊・食事・交通・現地での娯楽費用全て込みで1,700元ほど)。
 ここには中国の民間信仰である道教、芸術文化など中国文化に強く影響を残した場所が数多くあります。また、この地域独特の動植物が生息し、保護されています。その中の一部である黄山へ登ったり、世界遺産登録されている宏村を観光したりしました。観光地を現地に住む人たちが盛り上げ、観光と生活を両立させていた素敵な場所でした。

宏村にて

黄山「猿、雲海を見る」の景色

黄山の日の出

おわりに

 紹介したい内容が多く、かなりの文量になってしまいました。まだまだ紹介し足りないですが、それは次号に持ち越すこととします。曲阜師範大学での生活はとても快適で、好きなことを好きなだけ勉強でき、文化交流ができる場所だと改めて感じています。これからも引き続き留学生活を充実させていこうと思います。