センター大学 国際文化学科4年 中山樹 <最終号 2022年5~6月>

始めに

 今回が最後の報告書ということで、帰国までの流れや交換留学を通して感じたことなどをお話したいと思います。

帰国まで

 授業が終了して最終テストが終わると、いよいよ帰国へ向けて準備を進めます。私は日本から冬服と夏服の両方を持って来ていたので、スーツケースが予想よりパンパンになってしまいました。大学の郵便局で国際郵便を使用することが出来るので、もしスーツケースに余裕が無いのであれば、教科書やノート、その他の衣類などを事前に日本に送っておくことをお勧めします。特に、交換留学終了後にアメリカ国内を旅行することを計画している方は必要最小限のものを残して、ほとんどのものを日本に送っておいた方が良いと思います。ほとんどのフライトでは重量制限がありますし、防犯の観点からも、旅行する際には必要最小限の荷物で旅行することをお勧めします。私は、余計なお金がかかることを嫌って利用しませんでしたが後々に損をすることになったので、国際郵便は積極的に利用したほうがいいかもしれません。
 また、アメリカで追加の服を購入し、帰国する際にそれを捨てるという選択肢もあります。多くの荷物を持って行くのが嫌な方は現地で衣類を購入しても良いでしょう。Amazonなどを利用すればそこまで費用はかからないと思います。大学で友人が出来た方は、その友人の家に数週間程度ホームステイさせてもらうのも良いかもしれません。より、アメリカの文化や生活スタイルを学ぶことが出来るのでお勧めです。
 空港までのシャトルバスの申し込みフォームは思ったよりも早くcloseするのでお早目に予約するようにして下さい。後々飛行機の変更をしたとしても、その旨を伝えれば別日のシャトルバスを利用できるので、まずは簡単に調べたフライトの日程を入力すれば問題ないと思います。
 私が交換留学をした時期はまだ日本に入国する際にCOVID-19の陰性証明書の提出が求められていました。近くの薬局であれば比較的どこでも検査を受けることが出来るとのことでした。私は最初近くにあったWalgreensという薬局を当たりましたが、そこではCOVID-19のテストは取扱っておらず、次にCVS Pharmacyを訪れました。どちらもアメリカ国内のチェーン店ですが、CVSの方はいくつかのお店で実際にテストを扱っているようでした。しかし、こちらではCVSのサイトからお店での検査を予約する必要があることが分かりました。また、当時は「ファストトラック」という健康居所確認アプリ(MySOS)を使った空港での素早い検疫が推奨されていました。私はこれ以前にも政府が推奨していたアプリで多くの不具合があったことが記憶に新しかったことに加え、政府の情報管理の体制に不信感を抱いていたため、あまりこのアプリを使う気にはなれませんでした。厚生労働省のホームページを見てみると、必ずしもこのアプリを検疫時に使う必要は無いと書いてあったので、私は最初陰性証明書の書類を紙で提出する予定でした。ちなみに、その他には地域によっては誓約書の提出とファストトラックを利用しない人向けの質問票を入力する必要がありました。アメリカからの帰国者は、帰国後の隔離は求められていなかったので、陰性証明書と質問票の入力だけでした。
 CVS Pharmacyで尋ねたところそういった証明書の発行はしていないと言われ、代わりにUrgent medical centerを何軒か紹介してもらいました。それらのmedical centerに電話で問い合わせをしたところ、その中の一つにPCR検査を約30分程度で実施してもらえるところを見つけました。陰性証明書は出国前72時間以内にテストを受けて発行してもらう必要があり、結果が出るまで早い方が良いと思ったのでそこでテストを受けることを決めました。
 医療保険に入っていて、insurance cardを持って入れば無料で受けることが出来たのですが、あいにくそういった保険には加入していなかったので約3000円でテストを受けました。私はその時にセンター大学のJessicaから日本政府が推奨しているスタイルの書式の書類を実際にもらっていたのですが、そこにmedical centerの受付の人に記入してもらいました。CVS Pharmacyを訪れた時はこの書類を持っていることをすっかり忘れていたので、もし、この書類の記入してもらう形にすれば、CVS Pharmacyで受けても良かったかもしれません。なので、検査結果などの記入が必要な書類はあらかじめ印刷して所持しておくようにしてください。検査は前述の通り約30分で終わり、陰性だったので次の日のフライトを予約しました。日本に着くと臨時の検疫カウンターのようなところで陰性証明書と質問票の確認をされました。
 調べた情報ではアプリを必ずしも使用しなくてもよいという話でしたが、質問票を記入するときに結局アプリを使うことになりました。その場は結構混雑していたので、人の流れを止めるのは迷惑なのではと考えてとりあえずアプリを使って回答しました。その場にいた係員の方の話ではもし、同じ飛行機の中で陽性者が発生した場合に濃厚接触者の人たちに連絡を取るためにもこのアプリを使用するというお話もあり、アプリは帰国前にダウンロードしておくことで受けられる恩恵はいろいろあることが分かりました。
 個人情報に関して懸念がある場合は、あらかじめ厚生労働省の担当部署に確認を取るか、もしくは、帰国してからしばらくしたらアプリを削除するなどの対策を講じる必要があると感じました。今後COVID-19の状況がどうなっていくのか予測は出来ませんが、帰国前に何が必要でそのためにはどのくらいの準備日数が必要なのか、必要な書類等はどこで入手できるのかなどといった情報を出国前にできるだけ集めておく必要があるように感じました。
 また、留学後も日本の水際対策の情報はこまめにチェックしておくようにしてください。私は大学から離れた旅行先からの帰国だったので、必要書類の準備を全て自力で行わなければなりませんでした。もし、友人と一緒に行動していたり、大学から直接帰国したりするのであれば、一緒にダブルチェックをしてもらいながら準備することをお勧めします。
 以上、私が日本に帰国するまでの一連の流れでした。初めてのことで戸惑うことが多かったですが、帰国に際して用意する書類も特段多かったわけでは無かったので、比較的スムーズに準備が出来たと思います。ただ、しっかりと事前に情報を収集して、予定する帰国日から逆算して早めに準備を始めることは大切だということに気付かされました。不測の事態も想定して早めに動くことは社会人の基本ですが、これらの一連の出来事でその大切さを改めて学ばされたような気がします。
 最後に、私が今回の留学経験を通して学んだこと、感じたことをお話します。まず、最初に、私がアメリカを旅行するなかで感じたことをお話します。私は、上記の通り、交換留学プログラム終了後にアメリカを3週間ほど旅行しました。元々一人旅が好きだったので、一人で移動していました。新しい町を探索することは新鮮で面白いことだったので、もしお金に余裕があって、就職活動などのしがらみがないのであれば、ぜひ、アメリカを旅行してみて下さい。きっと、多くの新しい発見が待っているはずです。もちろん、夜は出歩かない、危険な地域には近づかない、常に周囲を警戒するなどの自衛をしっかりした上で旅を楽しむことが重要です。事前にその町の移動手段や治安情報をしっかりと調べてからtravelすることをお勧めします。
 アメリカを旅行する中で、私は「人」という存在の表と裏の顔を観察することが出来たと思います。アメリカには皆さんがご存じの通り、様々な国から様々な価値観を持った人々がやってきて、互いに干渉しあいながら、また互いに融和しながら暮らしています。諸外国と同じようにアメリカも格差社会であり、富める人は富を重ね、貧しきものはその貧しさから抜け出すことは困難です。
 私は主に観光地を旅行していましたが、アメリカは日本と比べて物価が高いので、観光地を旅行するには多くのお金が必要です。私は旅費を少しでもの節約しようと出来るだけ安いホステルを探して宿泊するようにしていました。観光地では、いかにも旅行者といった感じの佇まいの人や幸せそうに観光を楽しむ家族やカップルなど様々な人々が居ました。私はそんな彼らを見て、人間社会の表面を観察している気になっていました。観光地にいる彼らはいわば勝ち組です。社会に出て、職を手に入れて、家族やパートナーとの暮らしを維持できるだけの収入を手に入れることが出来た人々です。観光地を訪れるだけの金銭的な余裕がある人達なのです。
 一方で、観光地には所々ホームレスと思われる方々が居て、そこを訪れた人々に金銭や食事を要求しているといった光景を目にすることもありました。彼らが本当にホームレスでその日の食事にさえ困っているのかどうかは直接インタビューするのははばかられたため、はた目から見た印象から判断するしかありませんが、私は少なくともそう感じていました。観光地ではしばしばこういった人間社会の上下関係をまざまざと見せつけられる時があります。私はこの光景を見て、人間もやはり「動物」なのだと実感しました。
 野生動物の世界は弱肉強食です。人間は古来よりその理性と知恵で自分達が野生動物よりも優れた社会を形成してきたと思っているかもしれません。しかし、いくら綺麗ごとを並べたところで人間は所詮地球上の一種の生き物でしかありません。人間はそのことを忘れかけているのかもしれません。私達は格差社会を是正しようと様々な取り組みを掲げてきました。しかし、いまだに格差は様々な国に根付いています。私達は本当に社会の中に巣くう格差を是正しようとしているのでしょうか。社会全体としてのスローガンとして格差是正を掲げているだけで、本当は一人一人が日々の忙しさにかまけて、こういった人間社会の理想と現実との乖離から目を背けているだけなのではないでしょうか。もちろん私自身盲目的に観光地を楽しんだ人間ですし、ホームレスの方々がどのような経緯で、どのような人生を経て、今の状態のなったのかを詳しく知ることは出来ません。
 しかし、人間社会の格差の構造に巻き込まれる可能性は誰に対しても平等に存在しています。私たち自身が、格差を是正する是非、格差をどのように是正していくのか、誰にその工程を任せるのか、といったことに対して真剣に向き合う必要性があるように感じました。私はアメリカを旅行してみて、日本にいる時には当たり前に感じていることも、それが当たり前ではないということに気付かされた経験が何度かありました。交換留学を通じて私は、日々の暮らしの中で感じる「当たり前」のことを疑って、再検討することの大切さに気付かされました。結果的に、私の視野を広げることが出来たと感じています。
 次に私が交換留学生活を通じて感じたことをお話します。私が交換留学で一番重要だと感じたことは、自分から行動すると言う事です。これは、皆さんにとっては当たり前に思えることかもしれません。確かに、日本にいてもこれは重要なことですし必要なことです。 しかし、私にとってこれはとても大きなことでした。私は今まで自分で決断すると言う事から逃げてきたように思います。高校や大学に入学する時にも、周りの意見を多分に考慮して行先を決めましたし、交換留学も漠然と海外に興味があるからという理由だけで応募しました。私は日々の生活の中で、自分の行動に自分で責任を取るという当たり前のことから逃げてきていました。
 しかし、アメリカでは私の行動に対して責任を取ってくれる人は他にいません。私の行動の結果を誰のせいにすることも出来ません。日々の行動を自分で決めて、その決断にきちんと責任を持つことが求められるのです。もちろん交換留学生担当の学生たちは、私たち交換留学生に対してとても親切ですし、事あるごとに気遣ってくれました。
 しかし、他の大半のセンター大学の学生たちはそうではありません。当たり前ですが、センター大学での日々の暮らしは、自分で作り上げなければなりません。自分で友達を作り、自分で仲間を作り、自分で助けを求めなければなりません。黙っていては救いの手は差し伸べられないし、行動しなければ何も変わりません。日本にいる時はお互い日本的な距離感が分かっているので、ある程度雰囲気でその場を乗り切ることは出来たかもしれません。
 しかし、言語という大きな壁があるセンタ―大学ではそれは不可能です。自分の意見をきちんと持ち、その意見をきちんと表に出してようやくコミュニティーの中に受け入れてもらえるのです。私は元々自分の意見を確固たるものとして表明することが苦手でした。特にグループワークの際には、いつも周りの意見を尊重して自分の意見を表明することはほとんどありませんでした。
 しかし、一人の社会人として将来働く上で、自分自身の意見をきちんと主張することが出来なければ、社会の中で自分自身の存在意義を認めさせることは出来ません。自分自身の考えを個性として社会に向けて発信することで、社会は初めて自分を一人の「個」として認識してくれると思います。交換留学では、こうした自分自身を表現することの大切さを学びました。これは私にとってとても大きな挑戦でした。私は普段から人の陰に隠れて、自分を表現することをしてこなかったからです。また、私は、普段面倒くさがって、新しいことにチャレンジすることを避けていました。今回の交換留学では、普段とは違う新しい世界に自分を置くことで、これらの課題を改善することが出来たと感じています。センタ―大学では、交換留学生に対する支援が充実していて、周りの人達も親切なので、交換留学生として学習するにはとても良い環境だと思います。しかし、それらの支援や助けは自分から積極的に行動することで初めて受けることが出来ます。私は今回の交換留学を通じて、自分から行動し、人と積極的に関わることで新しい世界が開けるとともに、より多くのことを学べることに改めて気づくことが出来ました。今後は、今回の留学で身に付けた積極性と自主性をさらに向上させて、社会で活躍できる人材に成長していきたいと思います。

ドリンクの写真

ケンタッキーからのフライトで提供されたクッキーとジュースです。隣の人と同じドリンクをと言ったら、隣の人に「いい選択をしたね。」と言われ、面白かったです。

地下鉄の写真1
地下鉄の写真2

ニューヨークの地下鉄の様子です。日本のようなホームドアが無いので、結構危険です。

露店の写真1
露店の写真2

ニューヨークの露店の写真です。フルーツや野菜がお安く売られていたので思わず写真を取りました。