センター大学 国際文化学科4年 中山樹 <2号 2021年11~12月>

はじめに

 センター大学に来て、早くも4カ月が経とうとしています。日本では、11月はもう冬で、寒々とした青空が広がっていることと思いますが、こちらでは、11月とは思えないぐらい暖かい日が続くこともあります。体調管理にはしっかり気を付けた方が良いでしょう。他の学生もよくせきをしています。今回の報告書では、前回紹介した授業の後半の様子と私が感じたこと等をお話します。

秋も深まってきました。道端の落ち葉がとてもきれいです。

秋学期後半の授業の様子

 後半に入り、少しずつ教授が話す英語のスピードにも慣れてきて、日々の課題との折り合いの付け方も身についたように感じています。他の方々はどうか分かりませんが、私個人としては、日々の課題を完璧にすべてこなすことは不可能だと思っています。私達は、英語のネイティブではありませんし、アメリカの大学の授業を受けたこともありません。全てをやろうとするとかえって中途半端になってしまいます。私が受けている授業は、あまりディスカッションや発表といった作業が無いのでなおさらなのかもしれませんが、私個人としては「要領よく」課題をこなすことをお勧めします。これは、全てを均等にやるのではなく、今は何が必要なのか、どの締め切りが迫っているのかといった優先順位をつけるということです。授業内で発言が求められるのであれば、テキストの範囲のどこでもいいので適当なところをピックアップし、そこだけを熟読、それについての回答を用意するだけでもいいと思っています。全てをこなそうとすると、恐らく先に精神と体が壊れます。どこかで割りきるしかありません。どうしても無理であれば周りを頼ってください。堂々と、自分の弱さを主張して下さい。教授やルームメイト、ISOLのメンバー等々、誰でもいいので頼ってください。あなたは決して一人ではありません。

・CRW-140-b
 この授業は、テストの代わりにport folioという詩集を中間テストと最終テストの両方で提出します。教授にもよると思いますが、私の場合は、この詩集は、全て新しい詩を書いてくるのではなく、日々の課題で模倣をした詩や、work shop(条件に合わせて詩を書いてきて、クラスで発表し合う)で提出した詩を改善したものも含めることが出来るので、そこまで大変ではありませんでした。ただ、個人的には既に書いたものを修正する作業が苦手だったため、4つほど新しい詩を作成し、後は日々の課題等で提出した詩を少し修正して、それらを組み合わせて提出しました。Midterm port folioは、大体5~7個程度、final port folioは、7~13個程度の詩を提出しなければなりませんでした。ただ、前半と同じように基本的には、日々の詩の模倣と教授が指定した課題をこなし、作成した詩を授業で発表し合うという内容でした。詩を作ることは、時間がかかる上に、思うように自分の伝えたいことを表現できないもどかしい作業です。あっという間に時間が経ってしまうので注意が必要です。私が受けたこの授業はテストが無かったので、その分思う存分に、詩を作成することが出来ました。ただ、授業内であまり、詩の技術的な部分には触れないので、題材選びはどうするのか、効果的な改行の仕方はどういったものなのか、syllableやrhymeなど、どの要素に気を付ければよいのかといった、基本的そして技術的な部分は教授のoffice hourに、相談しに行くことをお勧めします。

・HIS-240-a
 前回の号で紹介した通り、南北戦争後のアメリカの歴史を辿っています。今学期では、南北戦争後から、ベトナム戦争、オイルショック、ウオーターゲート事件までのアメリカの歴史を駆け足で学びました。もともと、アメリカの歴史や文化、出来事に興味を持っていたのであまり苦手意識を持たずに、最後まで受講できたと思います。この授業では、final examがあり、提示された用語の定義を簡潔に述べたり、指定されたテーマについて短いエッセイを書くものでした。範囲が膨大で、登場する語は多岐にわたり、その上に、用語を定義するために時代背景や流れを一からおさらいしなければならず、大変でした。また、日々の授業の内容も参考にすることが出来ましたが、この授業を担当された教授の話すスピードがとても速く、ほとんどノートを取ることが出来ていませんでした。また、後で聞き返すためにその日の授業を録音していたのですが、次の日の課題や別の授業の準備で忙しく、結局復習できないままテストを迎えることになりました。日常的にきちんとその日の授業を復習すべきだったと後悔しています。歴史は、とにかく、範囲や量が膨大なので、もし、歴史の授業を受けるのであれば、きちんとその日の授業内容や資料にきちんと目を通し、少しでもいいので復習し、簡単なメモをノートに残しておくことを心掛けてください。そうすれば、テストの時やその勉強の時に今まで学んだ内容を簡単におさらいできるはずです。ただ、教授があらかじめ、テスト内容の概要を提示してくれたり、積極的に生徒の質問にも答えてくれたので、気楽にテストを受けられた気がします。歴史は、ただ用語を覚えるだけのつまらない科目という印象が強いですが、私はこの授業を受けて改めて歴史の面白さに気が付くことが出来ました。それは、解釈の多様性です。歴史的に起こったことはただ一つの普遍の事実です。しかし、それを学ぶ我々が持つその事実に対する真実は人それぞれです。この授業で使うテキストはオンライン上の資料が主ですが、その他にも当時の著名人の発言や討論の資料などの複数の側面からのアプローチも提示されていました。多角的な視点を学べることもこの授業の利点の一つです。歴史に興味がない人も楽しめると思います。

・THR-117-b
 この授業は、中間テストのみで最終テストはありませんでした。中間テストは、授業内で扱った演者の動きやステージ上の位置関係、独自の用語や記号などの定義を暗記し、それを答える問題と提示されたある劇の一場面を見て、キャラクターの心情や役者がその場面で必要とする動きや考えなどが問われる問題がありました。単語の定義に関しては、事前に授業内でプリントや資料が渡されていますし、分からないところがあれば気軽に教授に質問できたので、どのようなことを答えればよいかということは、比較的簡単に用意することが出来ました。その後の覚える作業は、量が単純に多かったので苦労しました。場面について答える問題は、事前にどのような問題が問われるか教えられていなかったので、準備のしようがなかったのですが、間違ってもいいから何か書こうと思って、無我夢中で自分の考えを書き連ねていました。最終テストの代わりに、二人一組になって与えられたシーンを演じるという課題が課されました。これは、後述の日々の授業内で行う課題とは違い、分量も多く、動きや表情、セリフの間などの総合的な演技の技術が求められます。与えられた台本は、ある一つの演劇の台本の切り抜き部分ですが、同時にその台本全体も渡されて、全体の流れや演じるキャラクターの内面性を理解した上で演じなければいけませんでした。また、この演劇に関して、キャラクターの年齢や性別、相手のキャラクターとの関係性やその時の情緒、そしてその場面の情景や状況といった、台本から読み取れる情報を基にキャラクターの性格や行動を分析し、自分が演じるキャラクターがどのような結果を望んでいて、その目標を達成するために彼/彼女には何が必要で、それを妨げるものは何か、といったような事柄をエッセイにまとめるという課題も同時にやらなければなりませんでした。私は、物語の中のキャラクターを分析するのが好きだったので、書く内容自体はすぐに決まったのですが、分量がダブルスペースで4~6ページぐらいと比較的多めだったので、少し大変でした。また、私は元々自分のあがり症を少しでも改善しようとこの授業を受けたということもあり、最終課題の演劇は、とてもハードでした。まず、セリフを覚えるのに多くの時間がかかりますし、そこから相手と演技プランをすり合わせるのにも、多くの時間が必要でした。教授のご厚意で、後半の授業時間のほぼすべてをこの最終課題の準備時間に当ててくださったおかげで、この時間に具体的な動きや間をパートナーと詰めていきました。これも教授の配慮だったのですが、私は違う時間帯で同じクラスを受講している、県大の交換留学生とパートナーを組むことが出来たので、お互いの考えを容易にすり合わせることが出来ました。もし同じ授業を受けている交換留学生がいたら、その人とパートナーを組んでもらうよう、教授に聞いてみるのもいいかもしれません。また、この授業では他者との連携性が重要となります。英語が下手でも、恥ずかしがらずに、とにかく周りの学生とのコミュニュケーションを積極的に行ってください。きっと彼らもあなたのことを受け入れてくれるでしょう。この授業を円滑に受講するためには、クラスメイトととの親密さが重要です。

・DLM-110-d (Identity)
 この授業の後半は、引き続き、授業前に文献を読み、授業でその内容について深く理解するという流れでした。後半の内容としては、人種と性についての内容でした。文章量も相変わらず多く、後半になっても楽になった気がしませんでした。ただ、教授はいつも、私がoffice hourに質問しに行くと、つたない英語に根気強く付き合ってくれて、私の疑問点を解消しようとしてくれました。それにより、自分の理解度が深まっている事への達成感を感じられ、勉強に対してのモチベーションを高く保つことが出来たと感じています。後半の期間には、2回目のエッセイの提出と、最終プレゼンテーションがありました。2回目のエッセイは、二つの書簡に関して、それらの主張やそれらに対する自分の考えを1100~1200文字でまとめるというものでした。分量自体もさほど多くなく、題材となった書簡についても簡潔で、分かりやすい内容だったので1回目のエッセイよりかは、比較的簡単にかけたと思います。最終プレゼンテーションは、グループごとに分かれて、それぞれが割り振られた筆者の主張について、それらをまとめた上で、その主張に対する自分たちの考えについてスライドを使って、他の学生と教授に発表するというものでした。この授業は、この時まで、他にグループワークが無かったのでこれがこの授業での最初で最後のグループワークでした。自分はもともとグループワークが得意で無かったうえに、英語もつたないままだったので、これには苦労しました。グループでの話し合いに参加することも難しかったですし、割り振られた自分の仕事をよく理解していなかったために、グループの主張とは違う方向性のスライドを作ってしまい、時間を無駄にしてしまうこともありました。また、グループメンバーが集まって、スライドの内容を議論することも発表当日までに2回程度しかなく、グループ全体の方向性を確かめるのにも苦労しました。グループワークではウザがられることを恐れずに、何度も自分の役割と他のメンバーの考えをしっかりと確認し、逐次メンバーに自分が作成したスライドの内容や発表内容を確認するようにしてください。やはり、この交換留学の生活において一番重要なことはコミュニケーションをしっかり取ることだと、このグループワークを通して実感しました。教授や同級生に対して臆することなく堂々と自分の思いを伝えることが、交換留学を成功させる一番の近道だと思いました。また、このほかにも最終試験があり、筆記形式で、これまで扱ったすべての教材が出題範囲でした。2~3つのそれぞれの著作に関する質問が出題され、筆者の考えやそれに対する自分の考えを1000文字程度でまとめるというものでした。出題範囲は事前に明確に明かされているわけでは無いので、テスト前に簡単でいいので、今まで扱ってきた教材のそれぞれの筆者の主張をおさらいしておくと安心です。当日は、紙も教材を持ち込めますが、時間が限られているため、その場で内容を再確認するのは困難です。あらかじめ、主張をまとめたノートを作っておくなりして、当日簡単におさらいをしておくように準備しておいてください。

授業を通して感じたこと

上述の通り、この交換留学生活で一番重要なことは、コミュニケーションを積極的に取るということです。教授やクラスメイトなど、人とのつながりを多く保持しておけば、困ったときに多くの人に頼ることが出来ます。生活面や学習面で抱える問題は一人では簡単に解決できません。また、あなたがセンター大学の一年生であるように、同級生も同じようにセンター大学初心者です。悩みを共有することで、不安が和らいだり、解決策を一緒に見つけることが出来るかもしれません。学習面では教授に積極的にアドバイスをもらうと良いでしょう。テストの内容やどのような準備をすればよいのかなど、できるだけ詳しいアドバイスをもらうことで、効率的にテストの準備が出来ます。教授も親身になって話を聞いてくれるはずです。あなたが悩んでいるとき、周りの学生も同じように悩んでいます。自分が学習面で上手くいかない、分からないことを当然と思って、同級生とそれらの悩みを共有したり、教授にぶつけたりして、悩みを一人で抱え込まないようにしてください。交換留学生活を楽しむためにも、悩みをため込まず、吐き出すようにしてください。


施設のところどころにホワイトボードがあります。学生は、テストが近くなると夜遅くまで、勉強に励んでいます。

Thanksgiving Breakについて

 アメリカでは、11月の第4木曜日がThanksgiving dayという祝日に制定されており、多くの家族や親戚が一堂に会し、一緒に食事を楽しんだりします。もともとは、収穫を祝い、感謝をささげる目的で始まったとされていますが、その宗教的な意味合いは薄れているようです。この日とその後の金曜日、そして土・日曜日は多くの学校や会社がお休みになるようです。今年は24日~28日がThanksgiving Breakとして、その期間は大学の授業がありませんでした。私は、友人の家に招待され、友人の家族と一緒に食事をしたり、映画を見たり、Lexingtonの観光をしたりして過ごしました。とても有意義な時間であり、アメリカの一家族の暮らしぶりを体験するいい機会になりました。私はこの期間は勉強のことを忘れて、友人との時間を楽しく過ごしました。この期間は、授業がお休みなので、今まで手が回らなかった授業の復習や休み明けの授業の準備をするいい期間でもあります。人によって価値観は違うので、この期間をひたすらに勉強に当てるというのも一つの選択肢として有りだと思います。この交換留学に挑戦する人の目的はそれぞれですので、自分に合った休日の過ごし方を探してみてください。私が言及している休日というのは普段の土・日曜日もそうですし、このような中長期的な休日のことも指しています。普段の休日は、先週の授業の復習や来週の授業の予習、その他の行事の日程確認や必要な物品の買い出しなどやることが山積みです。恐らく、ゆっくりと時間を過ごす余裕などないでしょう。Thanksgiving Breakのような中期間の休みは、英気を養う良いタイミングだと思います。個人的には、ここで上手くエネルギーを補給して、最後のテストに臨むというのも一つの選択肢として考えてほしいと思います。また、この期間友人と一緒に過ごすことで、アメリカの生活文化や暮らしを学べる良い機会だとも思います。それぞれに合った休日の過ごし方を見つけて、上手く勉強と折り合いをつけていってください。


観光に訪れたホースパークでの一枚です。正直、訪れる時期を間違えましたが、それでも、博物館や厩舎の馬の見学など、十分見応えがありました。