センター大学 国際文化学科3年 井上由梨香 <1号 2019年9~10月>

はじめに

 この報告書を書いている今は11月上旬、日本からアメリカに来て、早くも2か月が過ぎました。今回の報告書では、アメリカ出発前、到着後、Fall Term期間について紹介します。


キャンパスは広く、緑いっぱいです。

リスもたくさんいます。

出発するまで

 私がアメリカに留学することが決まったのは、2年生の7月頃でした。それから出発まで、約1年の期間がありますが、3年生になるまで特に手続きなどもなく、なかなか実感が湧きませんでした。パスポートをまだ取っていない場合は、この期間に取っておくことをお勧めします。私はパスポートを既に持っていたため、この手続きは省略することができました。
 本格的に準備を始めたのは、I-20というセンター大学への入学許可証が届いた3年生の5月です。アメリカに行くためにはパスポートの他に、VISAが必要で、I-20はVISAを取得するために欠かせない書類の内の1つです。VISAの手続きは、簡単に済ませられるものではありません。まずオンライン上でのDS-160(申請書類)の作成、SEVIS費用の支払い(200ドル)、面接の予約をします。それから面接までに、VISA費用の支払いや財政証明書の作成(英語)など、必要書類を準備しなければなりません。面接は、地元から近い福岡領事館を選びました。福岡領事館は予約できる人数が少ないため、早めの予約が必要です。私は6月8日頃に予約をしましたが、空いていたのは6月28日、その次は更に1か月先でした。
 次に取り掛かったのは、航空券の予約です。センター大学から「8月21日にレキシントンに到着するように」という指示があったので、その日に着く飛行機をインターネットで予約しました。飛行機の予約は早くしておいた方が安く済みます。私は一人でアメリカまで行くのがとても不安だったので、他の留学するメンバーと同じ便を予約しました。
 6月頃から、センター大学からメールが届き始め、寮や授業、ミールプランなどの決定、健康に関する資料の作成などアメリカでの学校生活に関する様々な手続きを行いました。ここで必要なのが予防接種です。センター大学へ行くためには、破傷風、おたふくかぜ、麻疹・風疹の予防接種を受けているか、または免疫を持っていることを証明しなければなりません。中には2回の予防接種が求められるものもありますが、1か月以上の間隔を空けなければ2回目を打てないということもあるので、母子手帳や山口県立大学の保健室に保管してある抗体価検査などの記録を見て、早めに自分に必要な予防接種の確認をしておくことが必要です。

アメリカ到着後

 Fall Term(秋学期)期間のおおまかなスケジュールは以下の表のとおりです。 (センター大学ではFall Term・Centre Term・Spring Termと1年が3つに分けられています。)

レキシントン到着8/21
International Students Orientation8/22~8/27
新入生オリエンテーション8/28~9/1
授業開始(Fall Term)9/2
Fall Break10/17~10/20
Thanksgiving Break11/27~12/1
期末テスト12/8~12/13
冬休み12/14~1/6

 8月21日にレキシントンにあるブルーグラス空港に到着しました。福岡空港→羽田空港→成田空港→デトロイト空港→ブルーグラス空港と乗り換えが多く、デトロイト空港で3時間ほどの遅延が発生したため、合計で約24時間の移動になりました。空港に着くとISOL(International Student Orientation Leader)の人たちが迎えに来てくれていて、車でキャンパスに向かいました。
 アメリカに着いた次の日から、留学生向けのオリエンテーションが始まります。ISOLの人たちが主体となってキャンパスを案内してくれたり、手続きを手伝ってくれたり、様々な場所に連れて行ってくれたりしました。この期間にISOLや他の留学生と親交を深めることができます。映画やサッカーを見に行ったり、ショッピングをしたり、ゲームをしたりと、時差ボケと戦いながらも朝から晩まで充実した毎日を送りました。昼間は日差しが強く暑いですが、夜はとても寒くなるため、上着を持って行っておいた方がいいと思います。
 授業は9月2日から始まり、最初の2週間は履修内容の変更が可能です。毎日課題と勉強尽くしで、日本にいた時とは比べ物にならないほど机に向かっています。授業によって時期は違いますが、Fall Breakという4日間の休みの前後に中間テストがあり、その期間は今までにないほど必死で勉強しました。


キャンパス内の道に、数式や化学式などが書いてありました。名言やイラストの時もあります。

以前山口県立大学で働かれていたシャルコフ先生のお宅で、日本食会がありました。
中間テスト前で心が弱っていたので、日本を感じる雰囲気に思わず涙が出ました。

秋学期の授業について

 同じタイトルの授業でも、2つ以上開講しているものがあり、教授によって授業のスタイルが違ったり、授業の時間が違ったりするので注意が必要です。私は5つの授業を履修しており、時間割は以下の通りです。

9:40~11:10ARS 110ARS 110
12:40~13:40CHI 110CHI 110CHI 110CHI 110
13:50~14:50PHI 140PHI 140PHI 140
14:20~15:50MUS 110MUS 110
19:00~21:00MUS 183

ARS 110 Introduction to Drawing
 絵を描く授業です。スケッチブック、鉛筆、消しゴム、木炭など、授業には必要なものが多いです。道具は全てBook Storeで揃えることができます。毎回絵を描く課題が出され、次の授業の時間に提出します。授業は毎回「レビュー→先生の説明→実践」という流れです。まずはやって来た課題を前に張り出し、それを見ながら自分が意識した点、難しかった点、他の作品の良い点などを発表します。次に先生のデモンストレーションがあり、次の課題のやり方を学びます。これが終わり次第、各自次の課題に取り掛かります。課題はだいたい3時間ぐらいで終わるように設定されていますが、難しいものだと5時間ほどかかる時もあります。授業が行われている建物は、夜でも休日でも暗証番号を打てばいつでも入ることができるので、みんな自分の空いている時間に課題をしに行きます。私はいつもイヤフォンで音楽を聴きながら、楽しく課題に取り組んでいます。もともと絵は上手ではありませんでしたが、時間をかけて先生のアドバイス通りに描くと、完成度が高くなり、いつもみんなが私の絵を褒めてくれるので、とても達成感があります。


松ぼっくりです。細かい所が多くて大変でした。

授業も後半に入り、影を付け始めました。

CHI 110 Fundamental of Chinese
 中国語の初級レベルの授業です。少人数で和気あいあいとした雰囲気です。毎週金曜日はワークブックを解く課題の提出日で、単語テストもあります。クラスメイトと実際に声に出して練習することが多い、アクティブな授業です。山口県立大学では第二外国語として韓国語を取っていたので、中国語に関しては全くの初心者でしたが、他の学生も初心者ばかりなので、自分だけ後れを取るというようなことはありません。センター大学には留学生向けの授業がなく、留学生もアメリカ人の学生と同じ授業を受けます。そのため劣等感を感じてしまうこともしばしばありますが、語学の初級クラスは、スタートラインのレベルがほぼ同じなので、他の授業より気楽に学ぶことができます。特に中国語は、漢字が書け、意味を推測することができる日本人には少し有利です。


単語テストの前日、夜遅くに勉強しながらポテトを食べてしまいました...。

PHI 140 Intro to Ethical Thinking
 哲学の授業で、今学期私が一番苦戦している授業です。1学期を通して2つのパートに分かれており、前半は倫理・道徳についてアリストテレス、孟子、カントなどの哲学者の文章を読みながら功利主義、徳倫理、ケア倫理、義務論の4つの立場について学んでいきます。各4回ずつ授業があって、最後の回はそれぞれディスカッションを行います。自分の担当のテーマの時はディスカッションのリードとレポート提出がありました。「モラルとは何か、善いこととは何か」という簡単には説明できない深いテーマであるため、とても難しいです。毎回リーディングの課題があります。量は宗教などの授業に比べれば少ない方だと思いますが、内容が難しく、古い英語が使われているものもあって、読むのにいつも5~6時間かかります。ディスカッションになると、英語を聞き取るのも自分の意見を言うのも難しくて、いつももどかしい思いでいっぱいですが、オフィスアワーに先生のところに行くと親身になって相談に乗って下さいます。後半は前半に習ったことの応用編で、ヘイトスピーチ、薬物乱用、安楽死、貧困などの社会問題について取り上げていきます。まだ後半に入って間もないですが、前半よりもテーマが面白く理解しやすいので、ディスカッションにも参加しやすくなりました。

MUS 110 Fundamentals of Music
 音楽の基本を学ぶ授業です。ト音記号、ヘ音記号などの超基本から始まり、今はコード(和音)やリズムなどを学んでいます。私は元々ピアノと吹奏楽をしていたので、あまり苦戦することなく授業が受けられています。習うのは音楽の基本的なものですが、今まで意識せずに頭の中にあったものの理論を知ることができ、新しい発見があって面白いです。先生はピアノやギターを弾きながら、私たちも歌いながら授業が進んでいくのでとても和やかな雰囲気です。

MUS 183 Centre College Choir
 コーラスの授業です。コーラスの授業はいくつかありますが、この授業はオーディション無しのアマチュア向けのものです。女性4部合唱で、ソプラノ1、ソプラノ2、アルト1、アルト2の構成です。私はアルト1を担当しています。この授業は週に1回だけですが、1回の授業が2時間あり、授業中はずっと歌っています。寮生活をしていると大声で歌えることもなかなかないので、思いっきり歌うことができてストレス発散になっています。アメリカの学生は、歌も少し変な発声練習も恥ずかしがることなくこなすので、日本人との違いを感じました。11月の中旬にコンサートを控えているので、今はそれに向けて4曲ほど練習しています。

終わりに

 課題が多く、授業中もアクティブさが求められるアメリカでの授業は正直とても大変で、心が折れそうになったことが何度もありましたが、今は「私は母国語ではない言語で、ネイティブの学生と同じ授業を取って頑張っているんだ」と自分を元気づけながら生活することにしました。まだまだ英語が聞き取れなかったり、自分が言いたいことを英語にできなかったりと、もどかしい思いをすることは多々ありますが、日々の頑張りが実になることを信じて、これからも頑張っていきたいと思います。