センター大学 国際文化学科4年 山下璃帆 <4号 2019年3~4月>

 センター大学の授業も終わりに近付き、帰国まで残り半月ほどになりました。交換留学生としての1年間と合わせて、長かったようで短い2年間をアメリカで過ごしてきましたが、思い返してみればこの2ヶ月は色々なことがありました。何気ない日々の中で「これが最後」だと感じることが多くなり、帰国後について考える機会が増えました。
 暖かくなったかと思えば、3~4月でも気温が一桁になったこともあり、体調管理をしっかりしなければなりませんでした。学期末試験に向けてやるべきことも多い中、帰国の準備もしなければならないため忙しい日々を過ごしていますが、何事も妥協せずに最後まで全力で取り組んでいます。春休みは家族がアメリカに来たのでニューヨーク旅行をしたり、友人と遊んだり、最後の思い出を作るため最も充実した2ヶ月でした。今回の報告では日本語教育において気が付いた事、3月と4月の生活の様子について触れたいと思います。

 アメリカで約1年半日本語教育の現場を経験して、日本語教育の課題について考えさせられました。
 まず初めに日本語教員の専門性についてです。センター大学の日本語の先生はアメリカ人ですが、アクセントや発音、言葉の選択などやはり日本人とは違う部分があります。その点、英語での説明がわかりやすいのですが、教科書を使用しない300番台の開講にあたって、日本語教員として、言語に関する知識能力、日本の文化などについての知識理解が必要であると感じました。日本と他国の違いや文化的背景、歴史に関する理解などがある、「専門性」を持っている日本語教員の育成並びにそういった教員の活躍の場が増えていくことが大事だと思います。
 アメリカのみならず、様々な国で日本語学習者が増えつつあると思います。今はTA(ティーチングアシスタント)や日本語教員が海外の日本語教育機関に派遣されることで日本語教育に関わり、日本文化を広める活動などが行われています。
 また、教員数や教材の不足、教科書に頼り切った授業内容、日本の文化・社会に関する情報の不足、担当教員の日本語能力不足などが問題であると考えました。センター大学に学生は1,500人ほどいますが、交換留学生の5人を含めて日本人は7人しかいません。学習者にとってキャンパス内で教科書以外の実践的な日本語を学ぶ機会がないのが現状です。
 ケンタッキー州の高校・大学に目を向けても、日本語の授業を履修している学習者は、様々な国の人がいてとても幅広いです。日本語を学ぶ理由も人それぞれで、第2言語を履修しなければならないから、留学や仕事で必要になる、単純にアニメなどの日本文化に興味があるから、などといったような理由が挙げられます。このような点から幅広い学習者のニーズに合わせた日本語学習を展開しなければなりません。

 センター大学と山口県立大学は学術交流協定校で交換留学が行われていますが、山口県立大学に留学している学生は今まで日本語を勉強したことのない人が多いです。来年度派遣される学生は8人中3人しか日本語学習者がいません。センター大学の選考基準がどのようになっているか詳しくは分からないのですが、日本語の授業を受けている人で今年交換留学に落選した人は5人ほどいます。せっかく日本語を学んでいるのにプログラムに参加できないことに納得がいかない学生も多く、抗議も行われましたが来年また応募する以外ないようです。
 このような交流活動を通じて日本語学習への関心が高まればいいのですが、来年は300番代が開講しないことになったり、どのみち専攻・副専攻に選ぶことができなかったりと、ごく一部の人しか真剣に取り組んでいないのが現状です。スペイン語やフランス語に比べ、日本語や中国語は学習者も少なく、予算も少ないため、他言語の授業では文化体験で教授の家で食事会が開かれたりしますが、日本語の授業ではおにぎりを握ることぐらいしかできませんでした。これも立派な文化体験ではあると思いますが、予算があればもっと別のことができたのにと、まだまだやりたかったことが多くあり、残念でした。
 300番代の開講など積極的に日本語教育に関わってきましたが、やはりセンター大学の方針を変えるには学習者が日本語に興味を持ち、学習を続けていきたいと思うことしかないと思います。山口県立大学との交流プログラムを通して、日本や日本語学習への関心が高まることを願っています!


日本語の授業でおにぎりを握っているところ

 3月上旬にルイビルにて日本語スピーチコンテストが行われました。センター大学からは去年、山口県立大学に留学していたキンヤさんが留学の思い出について話し、賞をもらいました。原稿作成や練習の手伝いをし、当日は会場に足を運びスピーチを見守りました。大会には高校生、他大学の学生が参加していました。レベル別のスピーチを聞くことができたのですが、どの参加者も日本の好きなところ、学校等での様子、勉強していることなどについて話し、とても良いスピーチでした。

 そして日本語クラブ最大のイベント、桜祭りがありました!
 メインの茶道体験を始め、和菓子を味わう、折り紙をするなどの文化体験がありました。多くのアメリカ人にとって綺麗に端を揃えて折り紙を折ることや、正座をして茶道を経験するのはとてもストレスだったそうですが、活気のある素敵な会になりました。
 私は茶道道具を揃えたり、レキシントンへお菓子の買い出しに行ったり、当日準備も行いました。大きなイベントなので、クラブの予算も多く割り振られています。多忙な大学生活の中で時間を見つけて準備をしなければならないため、イベント前はミーティングなどでピリピリした空気が漂っていましたが、当日は問題なく終えることができました。日本語クラブの活動を通して日本文化について知ってもらえる良い機会になったと思います。


桜祭りの茶道体験

 3月16日~24日は春休みでした。私はニューヨークで家族と合流し、こちらでの最後の旅行を楽しみました。春休み中、寮に残る場合には大学に事前申請をしなければなりません。


ニューヨークといえば自由の女神!

 4月になると帰国まで残り2ヶ月もない!という焦りが芽生えましたが、特に生活が変わるわけではありませんでした。私の場合、友人との時間を大切にしようと決めていたため、週末は一緒に出かけたりして友人たちと過ごす時間が増えました。

 4月26日~30日の間、授業を休みシカゴへ行きました。留学中は授業・課題と他の何かを天秤に掛けなければならない時があります。授業・課題のみが学習の場ではありません。私は昔から課題を提出して、返って来たものをもとに復習しても、あまり学習内容に興味がわきませんでした。それよりも自主的な発展が必要だと考えるので、課題をするだけで終わるのではなく、そこから学習を発展させていく必要があると思います!日本語教育でも課題の存在について考えさせられました。交換日記のようなものをクラスで回したのですがクラスのみんなが日本語で意見を書いてくれていたので、課題をやるより実践的でやりがいがあると思いました。
 留学中は何度か選択しなければならない場面が出てくると思いますが、自分が正しいと思う方を選択して欲しいと思います。私は授業を休んででもシカゴに行くことを決め、観光も兼ねて、シカゴに4泊しました。他の大学の教授に声をかけていただいたことがきっかけで、日本語の授業を見学するのが主な目的でした。当たり前ですが先生によって教え方や使う教材も違うので、色々な先生の授業を見学することで自分なりのスタイルを見つけ出すことができると思います。今後は日本国内やアメリカ以外の国での日本語の教育現場を見てみたいです。

 あっという間に5月になり、気がつけば帰国まで残り半月になりました。日本語TAの私は他の交換留学生とは違い、休学しているので帰国後すぐは授業に出ることもなく、一足早い夏休みです。TAとして派遣される場合には、帰国後の予定について考えておく必要があります。私は夏休みに台湾の日本語学学校での短期インターンシップに参加することが決まっています。次回の最終報告書では、TAとしての一年を振り返りたいと思います。