ビショップス大学 国際文化学科4年 松尾彩花 <4号 2019年3~4月>

最近の授業について

 3月の上旬にはReading week という名の春休みが一週間あり、4月11日が期末試験前の最後の授業だったので、この二か月は授業をする時間が特に少なく、一日一日をより大切にしようという気持ちで授業に臨みました。

 文型を使った簡単な日本語で学生たちと話しているとき、「あ、授業で教えたことがちゃんと伝わっている!」と気づくことがありました。その瞬間がとても嬉しくて、私ももっとわかりやすく教えられるようにがんばろう!という気持ちになりました。また、教えるだけでなく学生から教わることも多かったように感じます。例えば、「今度」という単語には「今」という漢字が使われているけれど意味的には「this time」ではなく「next time」になったり、アリアナ・グランデが「7rings」という新曲のリリースに伴い「七輪」とタトゥーを入れたことが授業でも話題になると、なぜ七輪にこの漢字が使われているのかと尋ねられました。

授業で工夫したこと

 ペアワークをした後にクラス全体で確認のために一人ずつ当てていきます。その時、できる学生から当てていくことは以前から行っていましたが、最近ユニークな問題があった時に、想像力のある学生から当てていくことでクラスが笑いに包まれ、雰囲気が変わることに気づきました。
 そして最近気を配るようになったことが、自分の表情です。ある日、学生の発表中「どんな回答がくるのか、その時どう対応しようか」ということに囚われすぎで、自分がとても深刻な顔で答えを聞いていることにふと気が付きました。発表している本人が私の顔に目を向けていなくても、周りの学生は見ているかもしれません。私がそんな顔をしていては、学生が自信をなくしたり、失敗することが怖くなってしまうと思いました。それからはたとえゆっくりでも、変な間違いをしていても、まずは「頑張って発表してくれてありがとう!」という気持ちで回答に耳を傾けるようにしました。
 そして最後にもう一つ意識したことは、よくできる学生、そうでない学生関係なく全員、少なくとも一人一回は必ず話すということです。クラス内を見て回っている中で、課題が早く終わった学生がいたら(だいたいいつも同じメンバーです)既存の問題やそれに関した5W1Hを聞くようにしました。あまり授業についていけていない学生には、どこで躓いているのかを瞬時に把握し、必要な情報だけを与え、本題の練習に時間が取れるようにしました。学生にとってネイティブとの会話は生きた教材になると信じて、慎重に言葉を選びながらも、私自身が学生との会話を一番楽しんでいました。

 時間配分や教材の良し悪しなど、予想していたより上手くいく日もあって、授業は毎回どうなるかわからないからおもしろいです。今は日沢先生に頼りっきりですが、学生からの質問に即座に答えられるよう私自身相当努力をしないといけないと感じました。何事も経験を重ねることで成長していくものですが、先生という立場は一度間違えたことを教えると信用問題に関わってくるということも授業を通して感じました。たくさん失敗をしながら成長することが私のモットーの一つですが、教える内容に関しては絶対に失敗してはいけないという緊張感や責任感を持つようになりました。


JSE202最後の授業

3月でも雪景色です

私の大好きなシュガーシャック

 皆さんはシュガーシャックという文化をご存じですか。私はケベックに来て、日沢先生に教えていただくまで知りませんでした。シュガーシャックについて簡単に説明します。カナダのお土産といえばメープルシロップやメープルクッキーが人気ですが、そのメープルはなんと約80%がケベックで生産されているそうです。シュガーシャックは「カナダの春の定番」ではなく、「ケベックの春の定番」だとあちこちで耳にしました。メープルは一年を通して収穫できるわけではなく、3月から4月にかけて約1か月の間にしかとることができません。そこでその1か月間だけメープルを使った料理を楽しむことができるのがシュガーシャックです。そこはただのレストランではなく、完全予約制で基本的には大人数で行くことがスタンダードだそうです。私は3月の間に3か所のシュガーシャックに訪れましたが、ビュッフェスタイルのところもあれば、まるで家で親戚家族と食卓を囲んでいる気分になるようなところもありました。出てくる料理やデザートの種類とテーブルの上に置いてある大きい瓶に入ったメープルシロップを好きなだけ料理にかけていいという点は、どこのシュガーシャックでも共通していました。友人やそこで知り合った人たちとわいわい話しながら、好きなだけメープルシロップをかけて食べる食事は、「この日のために長くて厳しい冬をしのいで来ました!」と言っても過言ではないほど素敵な時間でした。


ここのシュガーシャックはベジタリアン!

この上にメープルをかけて食べました

余暇が充実!

 先ほどReading weekという春休みがあると書きましたが、私は日本語合唱クラブの毎年恒例、Saint-Eugeneに合宿に行きました。そこはSherbrookeから車で片道4時間ほどの場所にある小さな村です。私は長期間ゆっくりするためだけにどこかへ行くというのが初めてだったので、最初は自分がそこで楽しめるのか疑問に思っていました。しかし、約1週間合唱クラブのメンバーと食事を作ったり、天気が良かったらスキーホックをしに出掛けたり、朝はみんなで歌の練習をしたりしていると、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
 合宿の最終日、日沢先生と奥様のポリンさんのおかげで今年も日本語合唱のコンサートを開くことができました。通常ビショップス大学のチャペルで行うコンサートでは、曲やメンバーの紹介は英語で行われますが、この日はもちろんフランス語!コンサート後みんなでご飯を持ち寄ったり、作ったりして、食事会も行われましたが、そこでの会話もほとんどがフランス語でした。大学の中にいると麻痺してしまいがちですが、フランス語ができないとそこで出会った人たちとコミュニケーションが取れないのです。私は自分がフランス語を勉強していないことを心から悔やみました。中には英語が少しできる方もいらっしゃったので、その方とはつたない英語同士でお話をすることができました。
 その他にも、3・4月は日本語をとっているクラスの学生や私の友人たちと一緒に料理を作ったり、映画を観たり、散歩に行ったりして、仕事以外も充実していた月でもありました。TAと学生は年齢が近いこともあり、教室では先生という立場上友人のようになってしまうのは良くありません。かといって距離を置きすぎてもいけないですし、距離感が少し難しい面もあります。しかし学校の勉強とそうではない時と自分がしっかりメリハリをつけることで、教室の外でもクラスの学生と一緒に過ごす時間を楽しめました。改めてここで出会った色々な人たちのおかげで、自分が今まで見たことのないような景色や、言葉で表せないような感情をたくさん味わうことができたと思っています。


クラスの学生のお宅でパーティー

シャーブルックにも春が来た?

 4月に入っても雪が降り続け、積もった雪も一向に解ける気配がしないなと思っていましたが、4月下旬になってようやく地面が見えるようになりました。私は4月30日に帰国したので、帰国までの10日間余りは外で少しでも暖かいケベックを楽しもうと必死でした。日本語TAのビザは一年間有効で、無料でフランス語の講習も受けられるため、時間やお金に余裕がある人は、夏までここに残っているともっと楽しみの幅が広がると思います。


雪が解けると公園も湖に...!

トルティーヤを作ってピクニック

友人と最後の持ち寄りパーティー

MontrealのMount-Royal にも登りました