共同研究の事例


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学校におけるいじめ防止等に向けた教育プログラムに係る指導資料及び教材の作成

受託研究委託者山口県教育委員会
受託研究研究者社会福祉学科 准教授 大石 由起子
研究期間 平成30年度

研究背景

 学校教育においていじめ問題は、2013年に「いじめ防止対策推進法」が施行される等、重要な取り組み課題となっている。2010年神奈川、2012年兵庫、2016年山口のいじめによる自死事例においては、周囲が「いじり」という認識でいじめを行なっていたことが指摘されている。

研究内容

 「いじり」と表現される行為を行う側の認識と受ける側の体験の齟齬を明らかにし、自死事例にまで追いつめられる心理構造を分析した。また、これからのいじめ未然防止教育には、「いじり」についての認識を問い直す教育が必要であり、この視点に立った教員の研修資料及び児童・生徒の教育教材を作成した。

研究結果

 子どもたちは、「いじり」のイメージをテレビ番組から取り入れたと推察され、映像上の虚構の行為を現実の学校現場で再現しようとすることが分かった。また、「いじり」を親しみや愛情表現と認識しているが、「いじり」と称して悪意のこもったいじめが行われたり、次第にエスカレートしていじめに変容したりする事例もあった。 大人も子どもも「いじり」と呼ぶことでいじめがカムフラージュされるということを認識する必要がある。

成果物

・論文「いじめ問題における「いじり」概念に関する考察―いじめ未然防止教育の視点から―」(平成30年度山口県立大学学術情報第12号・社会福祉学部紀要)
「いじり」という概念といじめの問題について、文献をもとに、「いじり」という表現使用の発端、子どもたちのいじりについての認識、自死事例との関連、「いじり」に着目したいじめ未然防止教育のあり方について論じた。

・教員研修資料(2018年実施)
教員の「いじり」に対する認識を改め、児童・生徒への適切な介入と指導を促すことで、いじめを未然防止することを目的とした教員研修資料を作成した。

・「STOP!!いじめ 実践事例集」の作成
県内の小・中・高等学校で実践されたいじめ未然防止教育を取り上げ、補足やコメントを加えた実践事例集を作成した。

・「いじり」について考える話し合い学習の提案と教材作成
「いじり」に対する子どもたちの認識に一石を投じ、いじめとのつながりを考えさせる話し合い学習の理念と方法の提案を行った。

応用・展開

・高等学校・中学校・小学校の道徳教育での展開
・人権教育への応用
・用意された結論に安易に導くのではなく、参加した児童・生徒の心に問いかけ、認識の変容を促すような話し合い学習の提案
・学校における「オープンダイアローグ」の応用