ラップランド大学 国際文化学科4年 内藤海<3号 2024年1月~2月>

●はじめに

どうも北欧からこんにちは。

ついに1月、フィンランドが本気を出してきました。さすがに寒すぎてお話になりません。ダウンジャケットを2着重ねて雪だるまみたいなシルエットで登校しています。

さて、私は今、定期報告書をまさに書き始めたところですが、おそらく書き終えるまでにものすごく時間がかかることでしょう。なぜなら1, 2月は、私にとって苦悩の時間だったからです。そしてそれは、今も続いています。定期報告書の初号でお伝えしたように、私の留学体験をできるだけリアルにここに書き残していけたらと思います。

15分外を歩いただけで凍ったまつ毛
15分外を歩いただけで凍ったまつ毛
多分凍っている木
多分凍っている木

●金髪坊主

急ですが、金髪坊主にしました。理由は何となくしたくなったからです。

フィンランドに来て一番変わった事といえば、大抵の事は気にしなくなった事です。私は小さい頃から周りの様子を気にする癖がありました。自分の服や持ち物、周りからどう思われているのか、またはどう思われたいのか。今でもそういう風に考える事自体は悪い事だとは思っていません。ただ一点、他人はさほど自分に興味がない事に気づいたのです。ヨーロッパ出身の友達の多くが、他人と比較する事を嫌がります。正確には、自然にそれをしません。だから次第に私も、周りを気にしすぎることをしなくなっていきました。

そんな経緯もあり、まずはシャワー後のドライヤーが面倒くさいと感じていたため、坊主にしようと決めました。美容院に行くと担当のお姉さんから「アジア人の髪を切るのは初めて」と興奮気味に言われたので、「じゃあついでにアジア人の髪染めてみる?」という事になり金髪坊主が生まれました。日本にいた頃の私なら、「僕に坊主が似合うだろうか?」「金髪なんて派手すぎやしないか?」と選ばなかった選択肢だったでしょう。鏡に映った自分がかなり新鮮で面白かったです。

金髪にされる僕
金髪にされる僕
金髪にされる僕
新鮮な僕
金髪も飽きた僕
金髪も飽きた僕

●ベッドが増えた

ドイツからフィンランドに帰って数日後、新しいルームメイトがやって来ました。まずは瓶ビールで乾杯をして出会いをお祝いしました。数分話して分かったのですが、彼は俗にいう陽キャというやつで、非常にヤンチャな性格でした。彼の部屋にはディスコライトが置かれ、窓からはその輝きを1日中確認することができました。そのカラフルな部屋には家具は必要ないようで、備え付けのベッドと机をくれました。彼がどこでどのように寝ているのかは今もわかりません。

出会いに感謝、ビールで乾杯
出会いに感謝、ビールで乾杯
なぜ?
なぜ?

●本格的な講義

1月中旬から始まった講義では、実際にチームを組んで映像を制作したり、写真でコラージュ作品を制作したりするなどかなり本格的で意欲を掻き立てられるものが多かったです。下の写真は、大学内のスタジオにてライティング(映像制作においての光の使い方)に関する講義を受けている様子です。ちょうど日本にいる時から、独学でライティングの勉強をしていたため、理解を深める良い機会となりました。

また、映像表現の講義内で黒澤明の映画が出てきて驚きました。彼の映像表現が世界規模で扱われている事にももちろん驚いたのですが、それ以上にハッとさせられたことがあります。それは約3年前、私が大学1年生の時にも山口県立大学の日本文化論という必修講義の中で黒澤明について勉強していた事です。当時の私は、国際的な何かが学びたくて大学に入学したのにも関わらず、なぜ日本の文化を学ばなくてはいけないのだ、とすごく消極的な考えを持っていました。ですがその3年後、フィンランドでその講義が役に立つ日が来たのです。これには衝撃を覚えました。人生何があるかわからないし、多分意味のない事なんてないのだろうなと感じました。

一方で、今学期は受け入れている留学生が比較的に少ないようで、講義内容が変更されたりフィンランド語のみの開講になったりし、単位を取るのが難しくなった印象です。既に、いくつかの講義に関しては受けるのを諦めざるを得なくなったのですが、現在も続いている講義に関してはなんとかついていければと思っています。

大学のスタジオでの講義
大学のスタジオでの講義
ライティングの講義
ライティングの講義
黒澤明の講義
黒澤明の講義

●使い捨てカメラの現像

昨年の8月末にフィンランドに着いて以来、常に行動を共にしているドイツ人の友達はどこに行くにも使い捨てカメラを持っていくのですが、先日、そのカメラで撮り溜めていた写真を現像してきたようで見せてくれました。そこには必死に生きる半年前の私がちょこちょこ写っていて、それがなんだか滑稽で面白かったです。どこかでお話ししたような気もしますが、ヨーロッパ(?)には毎週金曜日と土曜日にパーティーをする習慣があります。そこではみんなでお酒を飲みながら、夜中の3時くらいまでダンスをしたりします。もちろん私はダンスなんてできません。しかし幸運なことに日本にいた頃、大学で知り合った親友が徳島出身だったため、たまに彼が披露していた阿波踊りをなんとなく覚えていました。そのため、当時は無意識だったのですが、現像された写真には世界の北端でエセ阿波踊りを踊っている日本人が写っていました。

面白おかしく綴ってみましたが、この頃の私は本当に不安で挫折続きで、正直なところ、よく眠れない日が続いていました。我ながら、よく頑張っていたなと思います。きっと留学を経験した多くの人にこの挫折の時間はあるのだと思います。しかし、もがき続けていればいつの間にか順応して慣れていくものだなと感じました。

必死に生きる僕(黄色)
必死に生きる僕(黄色)

●現在と未来

さて、1、2月と色々あったわけですが、来月は3月です。私の同期の多くは大学を卒業して社会人になります。私は、現在交換留学をしているわけですから、卒業が遅れることになります。しかし、それ自体に危機感や不安感はありません。ただし、将来の方向性が定まっていない現状には不安を感じています。

将来の方向性をまだ決めかねていた大学3年生の私は、海外に行けば「何か」が見つかるかもしれないと、フィンランドへの交換留学を決意しました。実際に約半年間、北欧で過ごしている間に、その「何か」はことあるごとに見つかっているような気がします。ただし、それと同時にわかったことは、その「何か」は私の不安を払拭してくれるようなものではなかったという事です。つまり、海外に行けばその「何か」は見つかるかもしれませんが、見つけたその「何か」から、将来を決めるのはやはり自分だったのです。認めたくない事実ですが、大学3年生の頃の私も薄々これに気づいていたような気がします。私はずっと選択する事から逃げていたのです。私が冒頭にお話した苦悩とはまさにこの事です。私は今、これまでしてこなかった溜まりに溜まった選択を迫られてしまったのです。自分の将来について考える事をしてこなかった私にはすごく大変な時間ですが、大切な時間だと思います。残された時間を大切にしつつ、一生懸命考えていけたらと思います。

●今後の目標

最後に、今後の目標ですが、まずは考え続ける事をしていきたいと思います。過去の自分がそうしてきたように考えているふりをしない事。考え続ける事。その中で、残り少ない留学期間を楽しめたらと思います。来月も何かワクワクするようなお話ができるように、何事も全力で頑張っていきたいです。では、また来月お会いしましょう。