入学式


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このたび、学部生・大学院生・別科生合わせて346人が、本学に入学しました。

学長式辞

令和5年4月4日
山口県立大学学長
田中マキ子   

式辞

 満開の桜から新緑へ変わるここ宮野は、新しい時を告げています。本日、山口県立大学及び大学院、別科助産専攻に入学されました346名のみなさん、ご入学、誠におめでとうございます。全教職員と共に、みなさんのご入学を心よりお祝い申し上げます。
 入学式を挙行するにあたり、山口県知事 村岡 嗣政 様、教育後援会長 境谷 典之 様、山口県立大学同窓会桜圃会長 相本 艶子 様のご臨席を賜りましたこと、本学にとり、この上ない喜びでございます。
 また、これまでみなさんの成長をいつくしみ、育んでこられましたご家族、ご関係者の皆様におかれましても、さぞお喜びのことと、お祝い申し上げます。

 さて、本日入学されましたみなさんは、長い受験生活を乗り越え、今、ここに居られます。受験生活は、学ぶ楽しみや変化する自分を再認識させてくれることとは少し異なり、孤独なあるいはスタンドアローンな学習であったと思います。しかし、これから始まる大学での学修は、"つながりの中で学び成長する"へ変化します。友人や教員や地域の方々、あるいは海外の人とつながりながら、学びの範囲を広げ、深さを掘り下げることができます。そこで大切になってくるのが、開かれた自身であることだと思います。開かれた自身となるためには、ルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィらが提唱した一般システム理論にそのヒントがあるのではないでしょうか。

 一般システム理論は、現象のマクロの挙動を直接的にモデル化して扱おうとする手法の体系の一つとして示され、オープンシステムとクローズドシステムについてふれています。オープンシステムは開放系とも言われ、外部の環境と継続的に相互作用するシステムです。反対にクローズドシステムは、閉鎖系と言われ、環境との間においていかなる物質も交換されないというものです。このシステムを、みなさんの学修の過程に照らしてみると、オープンシステムをとり、様々な人と出会い、いろいろな情報に刺激され、学習し吸収することで、限りのない成長・発達に誘われます。しかし、反対のクローズドシステムをとれば、他からの刺激もなければ、必要なもの・重要なものを入手することができないので、これまでの蓄えの中から対応していかなくてはならず、新たな出来事への対応困難、蓄えの減少からの枯渇となります。つまり、オープンシステムとしての開かれた自身を創り上げられれば、変化目まぐるしい状況に対しても、困難な事柄であっても、柔軟で思慮深い対応や対策を導きだせることになります。オープンシステム、イコール開かれた自身を構えることは、自分で自分を磨きながら、自らが自身を超えていけるようになるという、大学での学びの意義を具現するものでもあります。大学で学ぶという事は、知識を蓄え、スキルを磨く以外に、こうした構え=自分自身をつくり、社会で・世界で活躍するためのゆるぎない基盤づくりでもあります。大学での多様な学びに期待をかけ、もどることのできない今・この時を大切にし、多くの人・物・事と相互作用し、変化していく自分を実感し、豊かで楽しく、意義深い生活を、あなたらしい丁寧な生活を送ってほしいと願います。

 時代は、Web3.0と言われ、次世代分散型インターネット時代と言われます。バーチャル・リアリティの世界から、Augment Realityと言われる現実世界にデジタル情報を重ね合わせて表示するなど、メタバースをうまく使って人間の能力を引き出そうとする動きなどが、至るところで展開される時代になりました。このような時代に生き、さらに進化させるためには、みなさんの発想が、みなさんの多様な経験がとても大切になります。みなさんがみなさんの限界をどんどん超えていく事は、次なる社会を・時代を切り開くことに繋がります。

 「勉強するとは、つらくても、おもしろくなくても、やり抜くことで形成される人格、人柄、品性がある」と近代日本の扉を開いた吉田松陰は述べます注)。山口県立大学において、やり抜く中から、変化し、品性を備え、地域に・社会に、そして世界から求められる存在になりましょう。山口県立大学での生活が、豊かなものとなるよう、教職員一丸となって、みなさんを見守り、応援していくことをお約束いたします。
 山口県立大学にようこそ。ご入学、誠におめでとうございます。

註記) 室謙司他著「松陰先生に学ぶ―未来にはばたく若人のために―」財)山口県教育会、2007