ラップランド大学(2017年度交換留学生)国際文化学科4年 山根沙千<4号 2018年3~4月>


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Noniin.(ノニーン。)

 「さて!」といった感じの話を始める時や次の行動に移る前の掛け声のニュアンスで、また電話を切る前の「それじゃ!」といった時など、あらゆる場面でフィンランド人はこの言葉を使います。これといった定まった意味がない割に使用頻度が高いので、私の知っているフィンランド語の中で、一番Usefulな単語だと思っています。またno(ノッ)や、niin(ニーン)だけで使うことも多く、こちらも感嘆を表す時や相槌などフィンランド人の会話には欠かせません。あくまで私の解釈なので、多少の意味のずれがあるかもしれませんが、おおかたそんな感じです。

仲のいいフィンランド人の友達の家で寿司パーティー

カフェリンガという言語学習の日本語グループのメンバーと

 Noniin、いよいよラストピリオドです。何もかもがあっという間でしたが、振り返ってみると後半は本当に人との出会いに恵まれていたと感じています。それは偶然なのか、そういう運命だったのか、はたまた私の英語力などがちょっとましになってコミュニケーションがよりしやすくなったからなのか...。私の地元の隣町は縁結びの神様が祀られていている出雲大社があって、年に一度旧暦の神無月には日本中の神様たち、いわゆる八百万の神がこの場所に集まるので神有月と呼ばれています。今までは正直なところ、胡散臭いなーと心の中でボソッと思っていましたが、やっと良縁を結んでくれたと、感謝している今日この頃です。そしてこのように宗教観が薄いながらも、こういった話をその良縁で出会った友達にしています。わりと私の周りは、代々家系はキリスト教信仰だけど、今はまだ自分の考えはぼんやりしていてこれからゆっくり決めていこうと思っている、という友達が多いです。だからなのか、神仏混合の私の薄っぺらい宗教観の話も面白いと言って聞いてくれます。そういえば、一度そういった関連の話で白熱した議論を交わしたことが前セメスターにもありました。残念ながら日本人の友達とそういった話をした記憶はないので、これも留学したからこそできたことなのかと思っています。

MAMMIというフィンランド発祥の食べ物。味は黒糖の麩菓子みたい。

Juusutoleipä=直訳でチーズブレッド。クラウドベリーのジャムと一緒に食べる。


県立大学に留学生としてこの前まで日本にいたSalliちゃんとソリで遊ぶ。

 前セメスターに遊びに行ったことがあるHautajärvi(東ラップランドにある)という、私のチューターのマイヤの地元の小さな村にまた行ってきました。前回は、ちらほら雪が積もり始めるころで、今回は真冬ということで景色はガラリと違って銀世界!そんなわけで沢山のウィンターアクティビティを楽しみました。ロヴァニエミなどの観光地でスノーモービルに乗ろうと思うと結構な値段がかかるので諦めていましたが、そこでは「森に出向くならスノーモービルじゃなきゃ!」といった感じでどうやら一家に一台ある模様です。だいたいは2人乗りで、私たちは4人+犬1匹だったので後ろにソリをカスタムしていざ出発。さすが雪の上でのバイク、かなりスピードが出ました。一度マイヤのお父さんとスノーモービルで森の中をドライブしましたが、あまりの雪の多さにスタックしてしまうなどプチハプニングもありました。一度バイクから降りてみると、何と雪が太ももの真ん中あたりまであって、しかもこちらの雪はサラサラしているので踏んでも踏んでも地が固まりません。ちょっとお得で楽しい経験でした。その後皆で湖へ出かけて、夢のアイスフィッシングをしました。どんな竿でやるのかと思いきや、出てきたのは子どもが使うおもちゃのような竿で、思わず「ちゃっちい!」と言ってしまいました。しかし、そんなおもちゃの竿(ではないですが)でもしっかり釣れました。手に直に伝わる、魚が餌に食らいついた時の振動が来た瞬間のワクワク、たまりません。日本だとワカサギ釣りがアイスフィッシングのイメージだったので、どんなものかと思っていましたが、こちらで釣れる魚はそこそこ大きいです。中でもAhven(アフベン)と呼ばれる魚は美味で、スーパーで買うとそこそこの値段がします。途中休憩に焚火をしながらソーセージを焼いたり、コーヒーを飲んだりして釣り再開。魚が来るまではただただ待つだけなので暇なのですが、それでも楽しいので時間はあっという間に過ぎますが、湖上はやはり寒く足が凍りつくのもまた早いので、ぼちぼちな時間で退散しました。それでも収穫は十分でこれが私と川口さんの釣り魂に火が付いたきっかけになりました。また、帰る日の前の晩にマイヤのお父さんが「明日、村でクロスカントリースキーの大会があるんだ。出てみたい?」と聞いてくれました。実はマイヤのお父さんはクロスカントリースキーの大ベテランの選手で、メダルやトロフィーをいくつも獲得しているすごい人です。チャレンジ精神旺盛な私は"WHY NOT!"という感じで出場を決意しました。翌日会場に向かい、どんな人たちが来るのだろう...大会だからな...と緊張していると、何と参加者は、私と川口さんと村の小学生の男の子の合わせてたった3人で拍子抜けしました。小さな村の大会とはいえ、何人もの大人が準備やタイムキーパーをし、まだ数回しかクロスカントリースキーをやったことがない私たちを応援してくれました。日本の小さな島や村のコミュニティーでは、'よそ者'を良く思わないことがしばしばありますが、この村の人たちは違います。初めて会ったのに、言葉も上手く伝わらないのに、急に参加したいと言い出して迷惑かもしれないのに...それでも村の人たちは温かく私たちを迎え入れてくれました。日本のおもてなし文化に誇りを持っていましたが、最近は言葉だけが先走り、本当に心からもてなすということを日本人ができているのかと疑問に思うほど、フィンランド人のおもてなし精神は素晴らしいです。村の人たちはもちろん、フィンランドで出会った友達はみんなそうです。親切の押しつけではなく、形式的なものでもなく、心からのおもてなしに感動しました。

趣味で設置している鳥用の餌かご。窓から小鳥を観賞できる。

散歩中に見つけた野うさぎの足跡


初めてのアイスフィッシング。この穴、開けるの意外と大変。

釣った魚たち。上3匹はAfven、下2匹はSärkiで小骨が多いから食べないらしい。


クロスカントリースキーの大会後、記念にマイヤのお父さんと。顔出しNGで。

 さて、実はこのピリオド、ラッキーなことが他にもありました。何と、ものすごく大きくて活発なオーロラを頭上で見ることができたのです。丁度その日の夜、フラットメイトのクララちゃんと家でたわいもない話をして過ごしていました。すると同じくフラットメイトの中国人のイーミンちゃんが携帯を持って慌てて、「見て!これ!今日オーロラが見れる可能性がすごく高いよ!!!!見に行こう!!!」と誘ってくれました。正直、前セメスターから何度もオーロラを見ようと丘に登り寒空の下で待ちましたが、見えても何となく遠くの方に薄っすらと見えるだけで毎度がっかりしていたものですから、最近はオーロラを見に-20度の外に出ることすら躊躇っていました。その日も実はあまり乗り気ではなくて、「どうせまた前回の感じだろう」と期待していませんでしたが、「久しぶりにフラットメイト全員で出かけるのも悪くない」と思い、重い腰を上げました。Ounasvaaraに登り、展望台でオーロラを待ちました。いつもよりはっきり見えていましたが、やはり遠く、こんなものかと長居せず家に帰ることにしました。その帰り道、途中でジムの大きな駐車場があるのですが、その周りは木がなく空が開けていてそこにも薄っすらですが大きなオーロラが出ていました。せっかくなので少しだけ見てから帰ろうということになり空を見上げていると、突然頭上一体に薄い白い靄がかかり始めました。何かおかしいぞと思い、目を離せないでいると次の瞬間、あれよあれよと緑のオーロラが靄がかかっていたところに現れました。その大きさは人間の目ではとらえきれないほどの規模で、しかもかなり活発で常に動いていました。私たちの今までに経験したことのない高揚感に反応するかのごとく、オーロラは動きながら緑からピンクへ、時々白へと変化し瞬く間に暗闇の中に消えていきました。一体どのくらいの間見ていたか分かりません。1分あったでしょうか。よくダンスしているようだという比喩がオーロラに対して使われますが、確かに踊っているように見えました。あまりの突然の出来事に私たちは現実を受け止めきれずにいました。そしてもう一度、もう一度だけでいいからさっきのが見たいと願っていると、またその気持ちに応えるかのように再び巨大なオーロラのダンスが始まりました。もう二度とこのような条件で見ることはできないと思います。サーミ族の人たちが、こういったオーロラはbad luckを表していると信じていたと聞きましたが、当時の科学では証明しきれない、得体のしれない自然現象に対してそう感じるのを、今なら理解できます。とにかく、誘ってくれたイーミンちゃんに感謝してもしきれないです。素敵な思い出をありがとう。

実際に見たオーロラ。この世のものとは思えないくらいの迫力

そんな天真爛漫なイーミンちゃんのバースデーパーティー

 アイスフィッシングの楽しさが忘れられない私と川口さんは、どうにかロヴァニエミでできないものかと色々な人に尋ねた結果、学生アパートを貸し出しているDASのオフィスでアイスフィッシングのスタッフを派遣してもらえると言われました。事務の人に聞くと、氷に穴を開けるためのドリルと竿(かなりいっぱいある)の貸し出しが可能とのことでした。期間は1週間で、次の週からアイスフィッシング週間が始まりました。寒いので朝早起きするのが苦手だった私ですが、アイスフィッシングのこととなると話が違うといったように、午後の授業の前に川へ行くために早起きし、また授業後に再び釣りに出かけました。このようなことをほぼ1週間毎日、晴れの日も吹雪の日も行っていたので、Finnishの授業の先生や他の友達に「今日調子はどう?」とすっかりアイスフィッシングのイメージがついてしまいました。時々見知らぬ老夫婦も釣りに来ていて、拙いフィンランド語ながら会話するのが一つの楽しみでした。釣った魚たちはさばいて、煮つけにしたり、フライにしたり、卵を持つものであればパスタにして食べました。改めて日本に生まれて、昔から母やバイト先の店長が魚をさばくのを見よう見真似で試したりして、魚の美味しい食べ方を知っていて良かったと思いました。

 今ピリオドは、今セメスターやってきてできた新しい友達と沢山のホームパーティーをしました。留学生は皆同じ建物内に住んでいるので、基本夕食会はご飯を持ち寄りで集まってすることが多いです。アジアメンバーで集まって、韓国から取り寄せてくれたマッコリと焼酎を簡単なゲームをしながら飲むなど、楽しいひと時を過ごしました。改めてアジア料理は美味しいと感じさせられ、日本の料理が更に恋しくなりました。また、特に仲良くなったギリシャからの留学生のアリスを始めとする友達ともパーティーをしました。アリスとはナイトクラブに行く前のプレパーティーで出会って、それ以来一緒に出掛けたりご飯を食べたり、大学でもよく話をします。今は地元の授業の一環で、私のドキュメンタリーを作ってくれていて、とてもしっかり者の可愛い自慢の友達です。

夕食パーティーで。左奥がアリス、真ん中がトルコ人のキム、男性がアリスのボーイフレンドのサノス、韓国人のシニョン。シニョンには韓国語を教えてもらっていた。

 4月の終わりから5月にかけて"Vappu"というメーデーを祝う期間がありました。日本でいうメーデーは、労働者たちのデモがあるといったようなイメージが私の中にありますが、こちらでは学生たちの大イベントで白い帽子をかぶって町を行進します。それがフィンランド国内の各都市で行われるようです。かつて学生だった大人たちもその白い帽子を持参しかぶっている様子は伝統を感じる感慨深いものでした。とはいってもやはりフィンランド、行進中も皆お酒を飲みながら練り歩き、和気あいあいとしていました。

授業紹介

Art in Public Spaces and Exhibitions (UKUV0915) 2 ECTS cr_
-Ouluにある美術館や歴史的建造物を見学する授業。


見学した展示の中で一番おもしろいと思った、Sexalなメッセージ性の強い作品。

1日のスケジュールが全て終わった後は皆でお疲れ様の乾杯。冬でも外で飲む。


History of Design and Architecture in Finland (UART1114) 4 ECTS cr.
-ロヴァニエミにある建築物の中から一つ選び、それぞれ調べたことについてプレゼンテーションし情報共有する。私のグループはAlaruokasen Taloという戦後ロヴァニエミに残った数少ない建造物のうちの一つを選んで発表した。

担当したAlaruokasen Taloの前で。昔は農家の家で、今はパーティー会場などに使われているらしい。

Printing Workshop (FTEK5005) 3 ECTS cr.
-自分の経験をもとに、一からテキスタイルを作成し、ハンドプリントを行う授業。シルクスクリーンの作製から、色作り、布選び、そしてプリント全て自分で行います。

私のオリジナルのテキスタイル。版には記念にサインも。

 前セメスターから仲良くしているフィンランド人の友達が「1年経ってすごく変わった。ずっと一緒にいるわけではないから、全部を分かったつもりではいないけれど、フィンランド語の上達だけでなく、様々な面で努力しているのがうかがえた」と言っていました。フィンランドにいる友達、先生、そしてフィンランドという環境が私を成長させてくれたのだと思います。こういった留学の機会をくれた大学関係者の方々、金銭面や精神面でずっと頑張れと応援してくれた家族、一緒に1年間過ごして切磋琢磨し合えた川口さん、そしてフィンランドで出会った人たち、皆に感謝を伝えたいです。ありがとうございました。留学先としても、旅行先としても、生涯住む場所としても一番におススメできる国、それがフィンランドです。一体どれくらいの人がこの報告書に目を通してくださったのか見当もつきませんが、最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。どうか、少しでもフィンランドの素敵さが呼んでくださった方々に届きますように。