※以下の研究室紹介は、2007年7月22日(日)に開催された山口県立大学オープンキャンパス資料に掲載されたものです。
■日本語教育研究室について
日本語教員は、国際文化学科と文化創造学科双方の学生が取得できる資格免許の一つです。日本語教育と言っても、現場を見なければなかなかピンと来ないところがあります。それで、紙面で少しでもご理解いただくために、日本語教育と日本語教員養成についてQ&A形式で解説します。
1)日本語教育と国語教育はどう違うのですか?
国語教育が日本語を母語としている人に日本語を教えるのに対し、日本語教育は日本語を母語としない人に、外国語としての日本語を教えることになります。国語教育は既に日本語を解する人々が、知識を深め、表現技術を磨くためになされるわけですが、日本語教育の場合、日本語のわからない人々に、日本語を理解し、使用できるようにすることが主目的です。それは、小中学校で初めて英語を外国語として学ぶ日本人学習者と同じで、日本語教育は外国語教育にあたります。
2)日本語教育では日本語をどのように教えるのですか。
日本語を外国人に教える日本語教師は、いろいろな外国語が話せると思われがちです。もちろん相手の母語を知っている方がいいのですが、必ずしも必要条件ではありません。日本語教授法には日本語で日本語を教える直接法というやり方があります。既習の日本語と視覚教材を用いて状況を示し学習者に類推させつつ、新しい項目を教える方法です。直接法を試みれば、その限界もわかりますから、これに他のいろいろな外国語教授法の長所を組み合わせてやっていきます。もちろん、これには理論的背景、例えば、インプット仮説というものがあり、外国語によるインプットは、理解可能な情報より少しだけ多い時に習得が進むとされています。皆さんの英語学習に当てはめて考えてみれば、想像がつくと思います。
3)日本語学習者ならではの躓きにはどんなところがありますか。
幾つかの側面における学習者の誤用例や質問から見ていくことにします。
(音声)「先生、痴漢(?)が来ました。」 「わたしは、監獄(?)から来ました。」これは、韓国人学習者の誤用です。韓国語は、語頭が無声化し、語中が有声化する特徴があります。 恐らく、この学習者は、「先生、時間が来ました。」 「わたしは、韓国から来ました。」と言いたかったのでしょうが、ジカン→チカンに、カンコク→カンゴクと日本人の私たちには聞こえてしまったようです。学習者の母語が、学習言語に影響を与えることはよくあります。例えば、日本人の場合、英語のriceと liceの区別ができにくいと言われますが、これは、日本語にrとlの区別が無いことによります。学習者が誤解されやすい発音を指摘できるように、日本語教師は音声学と対照言語学の知識が必要です。
(文法)「は」と「が」はどう違うのですか。
「は」と「が」の違いは、既知(旧情報)と未知(新情報)という視点が妥当とされています。「桃太郎」の話を思い出してください。「むかしむかし、おじいさんとおばあさんがありました。おじいさんは、柴刈りに、おばあさんは、川へ洗濯に行きました。」初めて出てくる情報には「が」が用いられますが、再度、出てくる場合には、「は」になっていますね。
(語彙)「水を沸かします」ではなく、「お湯を沸かします」というのはどうしてですか。
学習者の質問ももっともだという気もしますが、日本語では、水を沸かして作り出されるもの、結果としてできあがるものを先に想定して、目的物として示すという表現があります。つまり、水を沸かしてできたものがお湯なので、「お湯を沸かす」 と言います。「ご飯を炊く」(米を炊いてできたものがご飯)という言い方も同様です。
(敬語)「かさを貸して差し上げましょうか」は敬語なのに、どうして使わない方が良いのですか。
それは、「あげる」には、相手に恩恵を押しつけるところがあるからです。社会では、相手を尊重する関係作りが重要です。自分が優位に立っていることをあからさまに示すことは、相手に対する気配りをしていないことになります。ですから、「差し上げる」が敬語であろうとも、相手に~してあげているという表現を使って、相手に引け目を感じさせるようなことはすべきではありません。ですから、「かさをお貸ししましょうか」の方を用いるべきです。
以上、日本語教育学は、学習者の誤りや疑問を通して、つまり、日本語ネイティブでは気づかなかった外からの視点より、体系化された学問なのです。
4)山口県立大学国際文化学部日本語教員養成ではどんなことが学べるのでしょうか。
この学部では主専攻相当単位数の授業が展開されており、修了時には、大学発行の認定書が出ます。カリキュラムの中で、特に力を入れているのは「日本語教育実習」です。これには、国内実習と海外実習があります。国内実習では、大学間交流協定を結ぶ中国の曲阜師範大学と韓国の慶南大学の留学生を対象に行います。海外実習は、ニュージーランドの中高校にて行います。尚、「日本語教育実習」の単位を取得した学生は、日本語アシスタントとして、カナダや中国の大学またはニュージーランドの中高校に半年から1年行くプログラムに応募できます。詳しくは、日本語教員養成のHPをご覧ください。→http://furubepu.ypu.jp/
これからは、日本にさまざまな形態で外国人が定住するにつれ、いろいろな問題も出てきます。外国人児童の日本語教育、母語継承の問題、外国人花嫁の疎外感や難民政策等、これらの国際的課題に日本語は必ず関わってきます。日本語教師になってもならなくても、日本語教育を通し、積極的に国際社会に関わろうとする姿勢を養うことが日本語教員養成の大きな目標です。
■研究室名 日本語教育研究室(3号館2階)■教員名 古別府ひづる
■日本語教育研究室について
日本語教員は、国際文化学科と文化創造学科双方の学生が取得できる資格免許の一つです。日本語教育と言っても、現場を見なければなかなかピンと来ないところがあります。それで、紙面で少しでもご理解いただくために、日本語教育と日本語教員養成についてQ&A形式で解説します。
1)日本語教育と国語教育はどう違うのですか?
国語教育が日本語を母語としている人に日本語を教えるのに対し、日本語教育は日本語を母語としない人に、外国語としての日本語を教えることになります。国語教育は既に日本語を解する人々が、知識を深め、表現技術を磨くためになされるわけですが、日本語教育の場合、日本語のわからない人々に、日本語を理解し、使用できるようにすることが主目的です。それは、小中学校で初めて英語を外国語として学ぶ日本人学習者と同じで、日本語教育は外国語教育にあたります。
2)日本語教育では日本語をどのように教えるのですか。
日本語を外国人に教える日本語教師は、いろいろな外国語が話せると思われがちです。もちろん相手の母語を知っている方がいいのですが、必ずしも必要条件ではありません。日本語教授法には日本語で日本語を教える直接法というやり方があります。既習の日本語と視覚教材を用いて状況を示し学習者に類推させつつ、新しい項目を教える方法です。直接法を試みれば、その限界もわかりますから、これに他のいろいろな外国語教授法の長所を組み合わせてやっていきます。もちろん、これには理論的背景、例えば、インプット仮説というものがあり、外国語によるインプットは、理解可能な情報より少しだけ多い時に習得が進むとされています。皆さんの英語学習に当てはめて考えてみれば、想像がつくと思います。
3)日本語学習者ならではの躓きにはどんなところがありますか。
幾つかの側面における学習者の誤用例や質問から見ていくことにします。
(音声)「先生、痴漢(?)が来ました。」 「わたしは、監獄(?)から来ました。」これは、韓国人学習者の誤用です。韓国語は、語頭が無声化し、語中が有声化する特徴があります。 恐らく、この学習者は、「先生、時間が来ました。」 「わたしは、韓国から来ました。」と言いたかったのでしょうが、ジカン→チカンに、カンコク→カンゴクと日本人の私たちには聞こえてしまったようです。学習者の母語が、学習言語に影響を与えることはよくあります。例えば、日本人の場合、英語のriceと liceの区別ができにくいと言われますが、これは、日本語にrとlの区別が無いことによります。学習者が誤解されやすい発音を指摘できるように、日本語教師は音声学と対照言語学の知識が必要です。
(文法)「は」と「が」はどう違うのですか。
「は」と「が」の違いは、既知(旧情報)と未知(新情報)という視点が妥当とされています。「桃太郎」の話を思い出してください。「むかしむかし、おじいさんとおばあさんがありました。おじいさんは、柴刈りに、おばあさんは、川へ洗濯に行きました。」初めて出てくる情報には「が」が用いられますが、再度、出てくる場合には、「は」になっていますね。
(語彙)「水を沸かします」ではなく、「お湯を沸かします」というのはどうしてですか。
学習者の質問ももっともだという気もしますが、日本語では、水を沸かして作り出されるもの、結果としてできあがるものを先に想定して、目的物として示すという表現があります。つまり、水を沸かしてできたものがお湯なので、「お湯を沸かす」 と言います。「ご飯を炊く」(米を炊いてできたものがご飯)という言い方も同様です。
(敬語)「かさを貸して差し上げましょうか」は敬語なのに、どうして使わない方が良いのですか。
それは、「あげる」には、相手に恩恵を押しつけるところがあるからです。社会では、相手を尊重する関係作りが重要です。自分が優位に立っていることをあからさまに示すことは、相手に対する気配りをしていないことになります。ですから、「差し上げる」が敬語であろうとも、相手に~してあげているという表現を使って、相手に引け目を感じさせるようなことはすべきではありません。ですから、「かさをお貸ししましょうか」の方を用いるべきです。
以上、日本語教育学は、学習者の誤りや疑問を通して、つまり、日本語ネイティブでは気づかなかった外からの視点より、体系化された学問なのです。
4)山口県立大学国際文化学部日本語教員養成ではどんなことが学べるのでしょうか。
この学部では主専攻相当単位数の授業が展開されており、修了時には、大学発行の認定書が出ます。カリキュラムの中で、特に力を入れているのは「日本語教育実習」です。これには、国内実習と海外実習があります。国内実習では、大学間交流協定を結ぶ中国の曲阜師範大学と韓国の慶南大学の留学生を対象に行います。海外実習は、ニュージーランドの中高校にて行います。尚、「日本語教育実習」の単位を取得した学生は、日本語アシスタントとして、カナダや中国の大学またはニュージーランドの中高校に半年から1年行くプログラムに応募できます。詳しくは、日本語教員養成のHPをご覧ください。→http://furubepu.ypu.jp/
これからは、日本にさまざまな形態で外国人が定住するにつれ、いろいろな問題も出てきます。外国人児童の日本語教育、母語継承の問題、外国人花嫁の疎外感や難民政策等、これらの国際的課題に日本語は必ず関わってきます。日本語教師になってもならなくても、日本語教育を通し、積極的に国際社会に関わろうとする姿勢を養うことが日本語教員養成の大きな目標です。
![]() | ![]() |
| 学生達と作成した教科書 | 「日本語教育実習」の光景 |

