※以下の研究室紹介は、2007年7月22日(日)に開催された山口県立大学オープンキャンパス資料に掲載されたものです。

■研究室名 池田研究室(※日本語)(4号館2階)■教員名 池田史子


■日本語研究室について
<どんな研究をしているの?>
 私は,日本語のアクセントの歴史について研究しています。「アクセント」に「歴史」があるの?と疑問に思われるかもしれませんが,日本語のアクセントは歴史的に変遷してきましたし,地域的にも大きな違いがあって,ある規則によって分布しています。
 「ハシ」の「ハ」を高く発音すると「箸」の意味になるとか,「シ」を高く発音すると「端」又は「橋」の意味になる(現代共通語の場合)とかは,現代語でしたら実際に発音してみればよいことですが,昔の発音はどうやって調べるのでしょうか?テープレコーダーもMDレコーダーもなかったのに???

ikeda01

 上の写真は,1100年頃(平安末期)に成立した『図書寮本類聚名義抄』と呼ばれるものです。漢語・漢字の和訓を集成した漢和辞典のようなものです。当時のお坊さんが作りました。6冊セットのうちの1冊が残っています。その和訓にアクセント記号が付いているのでした。院政期に写され,院政期のアクセント資料として最も信頼のおけるものです。
 こういう資料を集めると,日本の院政期の2拍名詞アクセントはなんと5種類もの言い分けがなされていたことがわかっています。現代共通語(偶然に山口方言も同じですが)では3種類の言い分けしかできませんので,私たちの先祖はなんと器用なのでしょう。
ところが,現在でもその5種類の言い分けが出来る方言が日本にはありますし,反対にまったく言い分けが出来ずに5種類をすべて同じアクセントでしか発音出来ない方言もあります。
 私は,そのようなアクセントの歴史と,方言のアクセントやその規則について興味があって,その調査・研究をしていると言うわけです。アクセントの研究は,人文科学の中でもっとも自然科学に近いと言った人がいました。美しい規則を見つけたり例外の理由を考えることは,パズルを解いているみたいでとっても楽しいですし,調査に行ってたくさんの方と知り合うことが出来るのもありがたいことです。

ikeda02

■授業内容の紹介
○日本語音声学
 日本語の語・文節における音素・音節について,音声器官の働きとの関わりで解説します。「調音音声学」の立場で,「国際音声字母(IPA)」に基づいて日本語の共通語の音声(母音・子音)の概説をします。その際に,自らの方言音声や場合によっては外国語との相違点を考えます。また,共通語のアクセントやイントネーションの規則,及びその地域差についても学習したいと思っています。

ikeda03
口腔図  『日本語音声学』(くろしお出版)より

○日本語Ⅱ(語彙論)
 古代から現代に及ぶ日本語のいわゆる「語」という単位のことばを対象として考えます。
(1)語種の面から ― 語の出自,漢語の用法,外来語の受け入れ方。
(2)語の位相面から ― 日本語(和語)の中の位相語など。
(3)語構成の面から ― 語の複合形態における変音現象(連濁・母音転換・子音転換・音便),及び派生語の構成法など。